最終話こと第78話 裁きとそれから
私、マギヤ・ストノストは、弁護士と相談のもと、ウリッツァとヴィーシニャさん二人への示談金を支払ったら、私とウリッツァ及びヴィーシニャさんが二人きり、ないし、第三者不在の三人になることへの禁止令及び保護観察処分を言い渡されました。
死刑は無論、少年院だか刑務所だかの類へ送られるのも無い……聖女親衛隊に籍を置きながら更生可能と判断されたそうです。
それから何日かしてトロイノイの誕生日が来ました。
私の経済状況を鑑みて、誕生日プレゼントは夏休みにモンス島パークであげたチョーカーで許してくれたトロイノイが、モンス島パークといえば……、と話を切り出します。
「観覧車を降りて、マギヤからヴィーシニャのこと聞いて……マギヤが死刑になるんじゃ、って……結構心配したんだからね」
「……ありがとうございます、いや、お騒がせしてすみませんでした……。そうですね……もし私が死刑等になっていたら、こうして貴方の誕生日を祝えなかったので……避けられてよかったです」
「ほんとにね……それにしてもマギヤ、ヴィーシニャへのペンダントと言い、あたしのチョーカーと言い、女子に首飾り贈る発想多くない?」
「……今後そういうのは貴方にしか贈りませんよ」
むしろ贈れないと言ってもいいですが……言うのはよしましょう。
秋のある日、私は学園にある格闘術の教室へ向かっていました。
私の所属する格闘術特進クラスは一学年ごとの格闘術基礎クラス・標準クラスと違って、七年生〜十二年生が合同で授業をしていて、男子の人数は私を入れてもたった四人。
そんな特進クラスへの挑戦権を与えられるのは、標準クラスの担当教師に実力や執念などの精神力を見込まれた者。
そしてその挑戦者は、格闘術特進クラスで最弱の生徒に挑み、その勝敗や伸びしろの有無などを元に、特進クラス担当の先生に認められた者が特進クラスの所属を許されます。
現在、格闘術特進クラス最弱とされているのは、なんとこの私。
そんな私への挑戦者が二人――夏休み明けすぐに一人。私が引きこもったり、いろいろあったりしてる間にもう一人――現れたと言うので、現在に至っています。
教室のドアを開けて私を待っていたのは、特進クラスの担当教師と生徒ら、そして
「え……?」「つまり……」「「マギヤが最弱?!」」
私がドアを開けて早々に声をあげた日常警護班の格闘男子
「ちょっと、マギヤ、マギヤが最弱ってどういうこと?! 直接当てないパンチの力加減できるって言ってたのになんで!?」
そう至近距離で私に問い詰めるプリストラ。
「私が来るまでに先生に聞いたはずでしょう? ここでは格闘術単体の実力と精神力で強い弱いが決まるんです。
私の魔法なしの格闘術等の練度は、他の三人に比べればまだまだその程度なんですよ、恥ずかしながらね」
「格闘術単体の実力と精神力……なら俺にもチャンスあるか……?」
「……昔魔法なしで私と格闘して一度でも私に勝てましたっけ、アーサー? まあ私、私が入る前の最弱に負けましたがここに在籍できていますし……せいぜい昔のあれのような、ひどい負け方はしないでくださいよ?」
夢に出こそしませんが、アーサーの血が顔や服に飛ぶわ、拳が血まみれだわで、かなり不快でしたもの。
あの人以外にあそこまで汚い勝ち方をしたくない、もっと綺麗に勝ちたいと当時の担当だった先生に話したらここを紹介されて……え、私対あの二人で戦えって乱暴な!
特進クラスの先生の構えの合図に従い「せいぜい私の罪状を増やさないように頼みますよ、二人とも」という念のための祈りを胸に抱いて、始めの合図と共に殴りかかる二人に軽くカウンターを食らわせた。