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第10話 わらわは♂これで魔王をやめました(10)

「…………」


 う~ん、でも? たぬきの御老体から声をかけられた一樹なのだが。相変わらず沈黙と無言……。



 特に今は、先程とは違い。一樹はもう麗しい魔王さまと物々しく争う必要はないのだ。口論もね。

 だから一樹は、完全に気が抜けた状態……。



 己の顔を緩ませ、目尻、鼻の下、唇の端もみな下げた状態で魔王さまを凝視──。彼女の妖艶、官能的な美しさに惹かれ魅入り虜になっているようだから。

 たぬきの御老体が軽い口調で声をかけたくらいでは我に返ることはできない。

 またそれに気がついたたぬきの御老体もね?


(本当にこやつは、致し方がない奴だのぅ~)と。

 自身の心の中で思い苦笑するのだ。

 だからたぬきの御老体は、致し方がない奴だと一樹のことを思いながら。

「おい! 一樹! しっかりせぬかぁ~!」と、一喝するのだ。


 ……だけでは終わらない。と、言うか? 収まりつかないようだね。たぬきの御老体は?


 だってさ、また自身の口を開いて。

「家のルシファーに魅入り、見惚れているようだが。お主には大事な話しがあるから。ルシファーの事を見詰め続ける行為をやめて、一樹は儂の方へと視線を変えて。儂が今から話す事をちゃんと聞け! いいな、一樹? 分かったか?」

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