バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

お花見

 時間がたつのは早いもので、あっという間に四月になった。バレンタインのお返しに、ハート型のネックレスをもらった。
 シルバーかと思ったらプラチナで、ハートの中にピンク色の石が付いているもの。
 すっごく可愛いデザインで、可愛い可愛いって言ってたら和樹さんがそれを付けてくれた。のはいいんだけど、それを付けたまま抱かれたし、ちゃんと避妊してくれた。
 大丈夫だとわかっててもちゃんと来るべきものがこなかったら……ってちょっと怖かったけど、ちゃんと来たので安心した。まあ、がっかりした部分もあったけどね。
 お休みがかち合うのがだいたい二週間に一回くらいだから、デートはいつもその時にしてる。まだお泊りデートはしていない。

 そんな生活をしてたんだけど、今日はお花見に行くのです……駐屯地の隣にある昭和記念公園で、だけど。夜はライトアップしててそれもいいと言っていたけど、ずっと中にはいられないというので、昼間だけにした。
 待ち合わせはゲートのところで、十時。それまでにお弁当を作ろうと頑張った。
 まあ、料理はあまり得意じゃないけど、父や姉に教わったりしながら作ったので、味は大丈夫だと思う。

「今日こそは先に待ってるんだから!」

 と張り切って行ったんだけど……。

「うう……また負けた……」
「紫音……なんでそんなに張り切ってるの」

 ゲートのところに行くともう和樹さんがいて、入場チケットまで買ってくれて待っていたのだ!
 ガックリと項垂れつつ、いつか待っててやるー! と思ったところで気を取り直し、一緒に中へと入り、手を繋いで歩く。
 冬に来た時は葉っぱなんてなかったけど、春になったからなのか、電飾が巻かれていた木には葉がついていた。そして噴水も時々高く上がったりして、夜とは違う雰囲気だ。
 日差しも暖かいし、時々吹く風が気持ちいい。
 ところどころ桜の木が植わっていて、中を歩いている人が写真を撮ったりしていた。平日だからもっと人が少ないと思ってたんだけど、結構子ども連れが多いことに驚く。

「思ったよりも人がいるな」
「私もそう思いました」
「春休みだからかな」
「かもしれないですね」

 桜の木が多く植わっているという広場に行くと、あたり一面が黄色かった。そしてその周囲は、ピンク色。

「わ~! 菜の花がいっぱい!」
「ああ、すっごく綺麗だな。紫音、写真撮ろうか」
「はい!」

 桜と菜の花をバックに写真の撮り合いっこをする。近くにスタッフの人らしき人がいて、二人一緒の写真を撮ってくれるようお願いしたら、快く応じてくれた。
 それを撮ってもらい、お礼を言って菜の花の中を歩く。
 歩きやすいように道ができていて、花にはミツバチや花アブ、蝶が止まっている。それを横目にぐるっと広場を一周し、桜の木の下で空いているところがあったので、そこにレジャーシートを敷いた。

「用意がいいな、紫音」
「えへへ。だって頑張ってお弁当作ってきましたし」
「へー! それは楽しみ!」

 お昼にはまだ早いからとそこで少し休憩する。遠くにはチューリップや青い色の花も見えるので、あとで見に行ってみようということに。
 日差しが少し暑いくらいだったから、木陰に来てほっとする。交代でトイレに行ったりして休憩すると、お弁当を出した。
 一応保冷剤も入れて来たから、悪くなってないと思う。
 お箸と取り皿を用意して、お弁当の蓋を開ける。今の私にはこれがせいいっぱい。

「お、美味そう! 散らし寿司か?」
「はい。あと、ポテトサラダと、からあげと、アスパラベーコン巻きです」
「おお~!」

 和樹さんは料理が苦手なのを知っているからか、頑張ったなって褒めてくれた。それがとても嬉しくて、頑張ってよかった。
 最初は散らし寿司だけのつもりだったんだけど、姉に写真を送ってこれで大丈夫か聞いたら大丈夫って言ってくれたうえで、他にもおかずがあるのか聞かれたのだ。ないと言うと、せめてサラダなどの野菜を使ったものとからあげくらいは入れなさいと言ってくれたので、それも作った。
 そこは教えてくれた姉に感謝だ。
 他にはプチトマトとブロッコリー、玉子焼きが入っているから、大丈夫だと思う。
 散らし寿司をお皿に入れ、食べる前に、別に持って来た針海苔を散らす。おかずはご自由にということで、蓋を取っただけにしてある。

「いただきます! ……うん、美味い!」
「……本当ですか?」
「ああ。料理が苦手には感じられないよ」
「わ~! ありがとうございます!」

 和樹さんに褒められて、すっごく嬉しい!
 ポテトサラダも甘くなくていいって言われて嬉しくなる。

「ポテトサラダは姉に教わったんです。ジャガイモを茹でる時に塩を入れて茹でると、そんなにマヨネーズを使わなくていいからって教わって」
「へえ。他には何が入ってるんだ?」
「玉ねぎスライスを塩もみしたのとハム、ミックスベジタブルだけですよ」
「なるほどな」

 今度俺の家でも作ってくれって言われたので、素直に頷く。
 二人でご飯を食べていると、あっという間に無くなった。ちょっと足りなかったかな……と思ったんだけど、どうやら和樹さんが結構食べていたようで、お腹が苦しいって寝転がる。

「もう……」
「さすがに食いすぎた……」

 うー、と唸りながらお腹をさする和樹さんに、思わず笑ってしまう。風は穏やかだし、周囲もご飯を食べてお腹がいっぱいになったのか、寝ている人もいた。

「お腹が落ち着いたら、チューリップのほうに行ってみようか」
「寝ててもいいんですよ?」
「せっかくの花見だけど、寝るのも勿体ないだろ? たまにしかこうやって一緒に歩けないんだから、できるだけ紫苑と一緒にいたいんだよ、俺は。寝るのは家に帰ってからでもできるし」

 和樹さんがそう言ってくれたことが嬉しい。
 お腹が落ち着いたころ、水分を取ってから荷物を片付けると、手を繋いでチューリップがあるほうへと歩き出す。
 チューリップにもいろいろな種類と色があってすごかった。さすがに名前は覚えられなかったから、名前の書いてある看板と一緒に撮る。
 そして青いのは花で、ネモフィラというお花だった。青の他に、ピンクもある。

「綺麗な青ですよね、このお花」
「ああ。紫音、写真に撮るから、そのまま座ってて」

 座ってネモフィラを見ていたらそういわれたので、そのままじっとする。
 それが終わったら、またゆっくりと歩きだす。他にもいろんな花があるし、桜もソメイヨシノだけじゃなくて他の種類もある。こんなにたくさんの種類があるとは思っていなかったから、二人して「新しい発見だね」って笑顔を向けた。
 多摩川へと続く川沿いにあったベンチにはキジトラと黒い猫がいて、ゆったり座っていた。野良みたいなんだけど、ご飯をもらっているのか、躰が大きい。
 それに「にゃ~ん」って鳴いて近寄って来て、足をすりすりしてくれた。

「ずいぶん人懐っこいんだな」
「ですよね~」

 頭や喉を撫でてあげると、ゴロゴロと喉を鳴らす猫二匹。和樹さんと二人で少し戯れ、その場をあとにしてまた歩き出す。
 しばらく歩いていると、バス停を見かけた。

「バス停?」
「公園内を走ってるやつみたいだな」
「へ~」
「乗ってみるか?」
「はい!」

 時間を見るともうじき来る時間だったので、そこでしばらく待っていると、汽車の形をした、三両編成のバスが来た。バスというよりも、路面を走る汽車に見える。
 お金を払ってそれに乗り、周囲を見渡す。案内によると公園内をぐるっと一周しているようで、乗っていた人は見たい場所のバス停で降りている。
 途中で野鳥が見れるというところで降り、そこで野鳥の観察をする。そのまま立川口のゲート方向に向かって歩いた。

「結構歩いたな」
「そうですね。ちょっと疲れました……」
「俺は仕事柄そうでもなかったが、紫音にはきつかったか」
「ですね。でも、とっても楽しかったですよ!」
「そうか……それはよかった」

 ゲートが見えて来たのでそのまま出ることにし、夜桜は期間内に仕事の帰りにでも寄って見ようという話に。
 そのまま和樹さんの家まで行って夕飯までお昼寝したあと、キスをしてから夕飯を食べに出かけた。今日は私の事情でエッチはなし。
 夕飯を食べたあとは駅まで戻り、そこでおやすみなさいと挨拶をして家に帰って来た。

「紫音、桜はどうだった?」
「綺麗だったよ! 一部満開な木もあったから、見に行くなら早いほうがいいかも」
「じゃあ、今度は俺と一緒に行ってくれるか?」
「うん!」

 明後日は休みだし、父も休みだというので頷いた。お弁当は父が作ってくれるというので、楽しみにしている。

 次の日に和樹さんと夜桜を見に行って、ライトアップされていた桜の写真を撮った。そしてその翌日はみんなお休みだったようで、家族揃ってお花見をできたのは嬉しかった。

しおり