バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第97話

「うそ……」

 06が声を漏らす。

 人の手によって造られし、七人の天使から発せられるプレッシャーと、すでに示されている圧倒的戦闘能力は、ナオ達の頭に絶望の二文字を浮かび上がらせた。

「さて、一時的に島内の妨害電波を解除してあげましょうか。そうしないと、あなたは指揮ができないでしょうからね」
「……いいのですか? 私達のうちの誰かが、通信をして援軍を呼ぶかもしれませんよ」
「ふふ。あなたはそのようなことはしません。私がわざわざ口頭で言ったということは、あなた達が援軍を呼ぼうとしても、問題ない対策をしているから。それはわかっているのでしょう?」
「…………」

 ルシーナの言う通り、ナオはわかっていた。

 東側で戦った剛鮫(ガンジャオ)からわかるように、敵は海に潜み、島の周りを囲っている。それに、ルシーナが妨害電波を解除するのは島内と言った。島の周囲には、まだ妨害電波が発生しており、その外へ出なければ援軍は呼べないだろう。加えて……

「それに、そのようなことをすれば、私達はすぐにヤナギハラスミヒトを狙いますよ。それでも良いというのであれば、構いませんが……ふふふ」

 そう。今のこの状況は、澄人が人質に取られているようなものだ。

「(どうしますか、ナオ)」
「(……戦うしかないでしょう。敵の装備は六翼以外全員同じようですが、性能はそうとは限りません。まずはレフトサークル・フォーメーションで攻撃しながら、敵の分析を行います)」

 04達にナオが伝えたレフトサークル・フォーメーションは、文字通り左円を描くような形で、敵を中心にして三次元的に動く。

 基本右手で武器を持つアーティナル・レイスに対して、左側を取ることは右腕の可動範囲に制限をつけることになり、左手に持ち変えるにしても、その際にスキを作らせる。

「それでは、そろそろ始めましょうか」

 ルシーナが言うと、双方武器を構える。そして一〇秒ほどの静寂の後、戦闘で破壊された建物の一部が、崩れ落ちた音を合図に戦闘が始まった。

「「――!!」」

 ナオ達はスラスターを一気に吹かし、レフトサークル・フォーメーションをとって、銃撃を開始。

 対してルシーナ達は、その天使のような装翼を動かし、ふわりとした挙動で回避行動を行い、飛翔する。

「(なんて動き――!?)」

 驚きの声をあげる11。

 それは、ナオ達が今まで見たこともない、生物的な飛び方だった。しかも、一見遅いように思えて、速い。まるで幻を見せられているかのような――錯覚を感じてしまう。

「――ふふ。遅いですよ」

 ルシーナ達の動きに翻弄され、いつの間にか逆にレフトサークル・フォーメーションを取られていた。

「全員、回避!」

 ナオ達はルシーナ達の攻撃を避けながら、再び攻撃する側に転じようとするが、敵はそれを許さない。

 地上から援護射撃をする、25と32も敵の射撃によって、まるで操られるかのように動きを制限されてしまう。

 このままでは密集状態となり、敵から集中攻撃を受けてしまいかねない。

「(スピア・フォーメーションへチェンジ!)」

 ナオの指示で、04達はフォーメーションを変えた。

 スピア・フォーメーションは、槍の如く一点突破を行うことに優れたフォーメーションだ。

 それによって、ナオ達は六人いる二翼のうち、二人の態勢を崩し、敵のレフトサークル・フォーメーションから逃れる。

「ふふ……さすが、やりますね」

 笑みを浮かべるルシーナを横目に、ナオは次の指示を出す。

「(バーティカル・フォーメーション!)」

 ナオ達は上下に大きく分かれ、猛獣が一気に噛み付くが如く、ルシーナ達に全員で一斉射撃を行った。

しおり