バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第88話

 澄人とナオ達は、次の襲撃に備えて、自分達の身体と武装を、限界性能が引き出せるように調整した。

 岩崎や傭兵達は、戦うことよりも三ツ山島から脱出することを相談していたようだが、この基地には、全員を乗せることができるヘリや船の類はない。あるのはせいぜい、武装がついていない小型のヘリが一機くらいだ。アーティナル・レイスに運ばせるにしても、ニホン国の本州までは数百キロある。万が一海の上で敵に狙われたら、人間を運んでいるアーティナル・レイスは、戦うことができない。

 結局、この島にいる者達が生き残るためには、ここで戦う以外の選択肢がないのだ。

「……これでよし」

 ナオも、自分の武装を万全の状態にしていた。

 試作型高出力エネルギーカノンと、試作型エネルギーブレードの他に、他のアーティナル・レイスも標準装備している、エネルギーライフルとマイクロミサイルポッド、高周波ブレードも追加した。

 時間はすでに早朝で、窓からわずかに朝日が見える。夜の間に敵がこず、武装の調整に時間をかけることができたのは幸いだが、それは敵も同じように準備をしているということでもある。だから、どうしても不安になってしまう。澄人を守ることができるのかと。

 窓の外を眺めつつ、そんなことを考えてはダメだと首を横に振りかけた時、澄人が声をかけてきた。

「ナオ」
「澄人……どうかしましたか? 仮眠をとると言ってから、まだ二時間も経っていませんよ?」
「そうなんだけど、なんか眠れなくてね」
「何か飲み物でも飲みますか?」
「大丈夫。それよりも、ナオ。こんな時に言うのも何なんだけど……一緒に外へ出てくれないかな?」
「外へ?」
「倉庫の外に出るだけでいいんだ。ナオと二人きりで、ちょっと話がしたくて」
「はい。いいですよ」

 澄人に二人きりと言われ、ナオが断れるわけがなかった。

 陰気気味になっていた気分が一気になくなったナオは、澄人と一緒に外へ出ると、小さめのコンテナをイス代わりにして座った。

「なんだか、ナオと二人きりになるのが、久しぶりな気がするよ」
「私もです。澄人と二人でいた日々が、もうだいぶ前のことのように感じます」

 いまだ基地は警戒態勢が続いているが、基地内は比較的静かで、二人がいる場所まで波の音が聞こえてくる。

 このまま、次の襲撃なんてこなければいいのに――いや、もしかしたらこないのではないか? そんなことすら、ナオは思ってしまう。

「ナオ。君は、戻ったら何かしたいことはある?」
「できれば、また澄人と出かけたいですね」
「他には?」
「他に?」
「したいことだけじゃなくて、何か夢とか……僕にお願いしたいこととかない?」
「夢……願い……」

 ナオは少し考える。

 正直に言えば、いくらでもある。しかし、その中で言えるのは……。

「……やっぱり、澄人と姉さん、二人の子供達と一緒に暮らすことでしょうか」
「それ以外にはないの?」
「あるにはあります。けど……それは秘密です」
「そっか……。でも、ないわけじゃないんだね。それなら、よかった」
「すみません。しかし、どうして急にそんな話を?」
「いや……ちょっと不安だったから」
「不安?」

 こんな状況だ。澄人は、いろんな不安を抱えてしまっているだろう。だからナオは、彼がどんな不安を抱いているのかが気になったわけではなかった。彼女が疑問に思ったのは、なぜ不安だったから、したいことを聞いてきたのかだった。

 すると澄人は、視線を地面に移し、重そうに口を開いた。

「……ナオ。こんなことを聞くのは、変かもしれないけど……まさか死ぬ覚悟なんて、していないよね?」

しおり