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11 逆鱗

「マリア・ダ・ネークの捜索依頼、受けるぜ」

 そう言ったのは、俺の知らない男だった。身なりの良さからすると、貴族のお抱え冒険者か?

「は……? 本当か!」

 来た。

 その笑みは薄汚い物だったので俺はこいつがマリアを攫ったんだとすぐに悟った。

 そいつは俺の耳元で、「マリアを返して欲しければ付いて来い」と囁いた。チラつかせているギルドカードは金色、つまりA級だ。マリアに関する手がかりを得るため、俺はそれに従った。

 辿りついたのは、まさにマリアの失踪した森、先まで俺達がいた森だった。さらについて行くと貴族の別荘のようなものが現れた。なんだこの建物は?!

「ここは国家反逆罪で処刑された貴族の別荘だったんだがな、その貴族の帳簿には明らかに脱税(だつぜい)の痕跡が有るわけよ。結局その脱税分は半分も回収出来なかった」

「その一部、もしかしたら全部がこの屋敷の中に隠されているってか?」

「正解だ。隠し財産を見つけることが出来たら、マリアの場所を教えてやるよ」

「……マリアは無事なんだろうな?」

「生きてはいるぜ」

「なら良かった」


 あの依頼。森の調査依頼は常時依頼だったが、俺がマシューらと共に受けたあの時は、通常の二割ほど高報酬だった。あれは、報酬に釣られた冒険者に遺産を見つけさせる為だったのか。

 そうなると、その遺産を見つけるのは誰でも良かったと言う事になる。それならば、何故今回俺は選ばれた? 消されても誰も何も言わないような価値のない人間なら、俺以外にもいるはずだ。

 そもそも、貴族の遺産の隠し場所なんか、それこそ山のように考えられるだろうに、何故俺をこの森に連れてきた?

 答えは簡単、(きょうはんしゃ)が選ばれたのでははなくマリア(ひとじち)が選ばれたのだ。こう考えれば、全ての矛盾を説明することができる。

 つまり、シナリオはこうだ。

 すでにマリアは無事では無い。貴族の奴隷やらなんやらにされている。そこで俺に騒がれるのは面倒だから、俺をここに連れてきた。それを知らない俺は、あるかどうかも分からない遺産の隠し場所を探し続ける。適当なところで俺は殺されて、不幸な事故として処理される。

 こんなところか。

 マリアについては、まず間違いなく生きているから、慌てずに俺の身の安全を第一に考えることが最善だろう。

 ああ、誰も彼も許してやらない。この一件が解決してマリアを取り戻したら、まずこの街の冒険者ギルドを潰そう。

 それから黒幕の貴族を脅して、もっと綺麗な孤児院を建てさせるんだ。もちろん俺が孤児院の主だ。

 マリアは二度と危険な奴の手に渡らないように監視すれば良い。


 何にせよ、全ての目的の障害が、たった今俺の目の前にいるこの男だ。なら、やる事は決まっている。


 さあ、報復(ぎゃくぎれ)制裁(やつあたり)の時間だ。

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