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中之院軍人墓地(愛知・知多郡南知多町)

 
挿絵



ここは心霊スポットというよりも寧ろミステリーの要素のほうが強い。

そう思う理由については後にストーリーの中で取り上げることにしたい。

軍人墓地である以上、戦地へ赴き旅立った軍人達の英霊を弔う施設であることは間違いないが、ネットやYouTubeの動画では取り上げられることはないだろう新たな視点で8月15日の終戦記念日を前に改めて取り上げたいと思いました。

2026年6月14日 PM23時
中之院軍人墓地での肝試しライブ配信を到着と同時に行った明るい肝試しの一同は中之院の門の前をバックに進行役の油井がカメラを前に挨拶を交えながら中之院軍人墓地がどうして心霊スポットになったのかの経緯について語り始めた。

「明るい肝試しを御覧の皆さん、こんばんわ。明るい肝試し主宰の油井です。今回あえて愛知県の心霊ではなくミステリースポットもたまにはどうかという事で今回お邪魔させていただいたのが、知多郡南知多町にある中之院軍人墓地というところです。来ているのが墓地なんだからそりゃ霊が出るでしょと思われても致し方が無いかと思いますが、中之院さんでは水子供養のほかにも、境内の至る所にタヌキの置物が置かれていることから通称タヌキ寺としても知られているところですが、その中でもひときわ異彩を放っているのがこれから先にある中之院軍人墓地というところです。この軍人墓地、何がミステリーかと話すと軍人像の墓地なんです、そしてデジタルカメラの顔認証が反応するのとしない像があるという七不思議があるんです。それだけだと具体的な心霊現象になるのかとなると疑問に思われると思いますので、怪異蒐集家の村田にですね、この地に纏わる怪異譚について説明して貰いましょうか。」

油井が一通りの挨拶と説明をし終えたところで村田が怪異譚について説明を始めた。

「中之院軍人墓地で伝わる怪異譚としては、夜中に兵隊さんが歩いている姿を目撃する、兵隊さんの表情がリアルすぎて怖いというのもありますけども、やはり祀られている兵隊さんの心霊現象や幽霊の目撃情報などがありますね。またタヌキの置物が置かれている場所でも幽霊の目撃談がある、薄暗い時間帯に伺うととにかく怖いという話がネットにあげられていましたが、これだけでは怖くないので具体的な例としてあげていくと、軍服を着た人影がいくつも現れたという目撃談から、軍人さんの石像を青白い光が彷徨っているのを遠くから見て発見したが近付けることは出来ずに逃げ帰ってきたという話がある。そのほかは言われているように一体一体の表情がリアルに作られているために不気味で変なことをしてしまうと呪われてしまいそう、絶対に落書きなどしてはいけないと思った、肝試し目的で夜中に伺ったが不気味で怖いところではあるものの、でも何も起こらずに心霊現象と言えるものは何もなかったという話など、火の玉を見たという目撃談以外は見た目のイメージから彷彿させるものぐらいしかないですね。また像の制作者、コンクリート像作家の浅野祥雲氏による作品は多数にも及び、中でも祥雲三大聖地とされる関ケ原ウォーランド(岐阜県・不破郡関ケ原町)、五色園(愛知県・日進市)、桃太郎神社(愛知県・犬山市)と紹介されていて、展示されてあるどの像も個性的かつ精巧に作られていることでも有名である。」

村田が怪異譚を語り終えると、頷きながら時折相槌を打ちながらもじっくりと聞いた油井が「せっかくだから、心霊現象を追求する俺達のここでの目標としては、軍服を着た人影や、石像を火の玉のようなぼんやりとした光が回っているところを是非とも見てみたい。一説ではタヌキの置物が無数に置かれているために動物霊が集まり、水子供養を行っているお寺でもあるので水子供養の石碑があるところでは子供の霊の目撃もあるらしい、念のために秩父が用意してきたセンサーライトと定点カメラであえて無人の状態で何が写し出されるのか、そして俺のWARASHIがどう判断するのかも踏まえながら軍人像の撮影をしてみようか。心霊の噂こそはないが、水子の地蔵尊のところも気になった。」と話した後に、「定点カメラって一体何台用意してきた?」と訊ね始めると、秩父が油井に「水子供養の石碑が無数に置かれている箇所で2台、軍人墓地のところで2台、タヌキの置物が置かれているところで2台、それぞれに誰かが通れば光るセンサーライトと油井のWARASHI6台を置いた状態で定点カメラを中心に撮影したほうが何か映るかもしれないな。一応定点カメラを置いての撮影は許可をもらっていることだし、人がいなくなってからのほうが出てくる可能性は大いにあるからね。肝試しライブ配信ではあるけども、定点で撮影を行っているその間に僕達は中之院さんの門のところまで戻ってそこで待機することにしようか。明るい肝試し初の定点カメラでのライブ配信になるな。」と話すと、二人のやり取りを聞いて居た杉沢村が「定点カメラを置いての撮影は良い。だけど同時にその場の状況が視聴者にも分かるように見張るためのモニターというのが常時必要になるけども、そこまで大掛かりなことはできない。」と否定的な意見を話すが、それを聞いた油井は「例えば車の中にいったん戻って待機している間に俺達が怖い話をしておいて、時間が来たときにカメラの回収をしよう。ばけたんの自動検知は10分おきに検知し、異常があればそのときに青か赤のランプが点滅して知らせてくれる。ここは住宅も近い事から近くでワイワイと騒いでしまうと近所迷惑にも繋がるから、境内での定点カメラの了承を得ていることなんだし、邪魔にならぬようにそっと、何かが撮れることを期待して待つことにしよう。そこは視聴者の皆だってリアルな心霊映像をまた心の底からきっと望んでいるに違いない。」と納得させるように説得を始めると、油井の意見を聞いた杉沢村はうーんと悩みながらも「こんな夜中だしね、寝ていて当然の時間帯に我々は撮影を行っているのだからワイワイと騒ぎ立てるのはご法度であるのは間違いない。定点カメラをセットして、後で何が撮れているのかを編集の際に確認する必要がある。」と理解を示したところで一同は境内の中にあるタヌキの置物が置かれているところを先ず案内してから、一度門の外に出て別の入り口から水子供養の石碑が無数に祀られているところを紹介した後に軍人像が並んで置かれているところへとやってくると、案内し終えてから油井が散策して気になったそれぞれの箇所に定点カメラとセンサーライトを1台ずつ置いたところにWARASHIを2台セットし終えたところで一同は車を停めておいた駐車場へと戻ってくることにした。

そして車の中に戻ってきたと同時に油井がある話を切り出した。

「ところであの関ケ原古戦場跡でコメントしてくれた幽霊警察24時さんってあれからコメントを残さなくなったけど、あの人絶対に霊能者だと思うんだけどなあ。そうじゃなかったらあれだけはっきりとしたことを言える人っていないと思うし、正体が何者なのか、怖い話じゃないけどもある意味で凄く気になった。」

油井が語りだすと、杉沢村が「ああ、あの幽霊警察24時さん。でもあの人、あれからコメントを投稿しなくなったね。警察って言っていることなんだし、多忙とは聞いたけども饗庭のお兄さんのほうかもしれない。心霊写真をLINEのメッセージで送っても既読すらつかないからその可能性は無いとしても、いずれにしろあんなことが言える人って相当霊感強いはずだから、正体は気になるけどでもそれは謎のままのほうがいいんじゃないの?警察とは言っているけど藤村さんの可能性もあり得るからね。そうじゃなければあのときライブ中継をたまたま見てくれていた霊能関係者の誰かが俺達の問いかけに対して偶然にも応えてくれた可能性も大いにある。」と返事をすると、斧落が油井と杉沢村に「誰にも知られることなくひっそりと活動している霊能者だったら、是非とも我が番組の心霊解説者としてこれからもコメント投稿をお願いしたいところだよね。わたしたちには霊感を感じる能力はあっても、説明が出来る能力はないからね。聞いた話をそのままお伝えするのが限界だしね。」と提案すると、杉沢村は「仮にもしそうだとしたら、こちらからお願いしますといっても応えてくれるものだろうか、日頃からそんなに恐怖系の動画を見ているような人でなければ何かあったと感じたときにコメントをしただけに過ぎないのかもしれないね。仮にもしお願いするとなると解説料とか取られそうな感じはするんだよなあ。ボランティアじゃなしに仕事でやっている人なら、そもそも霊が見えるということをなかなか商売にしにくい世の中だからそんな人がもしいたとしたらかなり少数派になってくると思うけどね。殆どの霊能者が本業の傍ら霊能者としてボランティアをしている人の割合が多いしね。」と話すと、後藤は「それはそれでまあいいんじゃないの。又気になることがあったら出てくるだろうし、それよりも定点カメラを設置した際に、タヌキの置物が置かれてあった箇所よりも、水子供養の石碑が無数に祀られている箇所よりも圧倒的に軍人像のところのほうがコンクリートでできた像だとわかっていてもじっと誰かに見つめられている感じが半端なく凄かった。」と話すと、それを聞いた油井は「仮にもしいたとしても、墓地というよりも故人を称えるために作られたような気はするけどね。お墓はそれぞれ別にあるようだし、仮にもしあそこに”何か”がもしいたとしたらそれは自分の石像がここに移動しているのを分かってここにきて安らかに眠っているということはお墓の意味がなくなってしまう。」と自分なりの見解を展開すると後藤は「霊は物には憑依はしないとはいうけどね、でもあれは憑依じゃなかったら何になる?悪意ある霊だとしたら憑いていると見せかけて注目させたところで憑依するために人の心を徐々に弱らせるために攻撃を仕掛けていくじゃん。でもそういう要素は視線を感じた以外に何も感じなかった。それはすなわちあの軍人像は生前の故人のために作られたものであって、いたとしたら故人が自分の像を見て戻るべき場所を見つけたからここで安らかに眠っているとかそういうことになる。」と語ると、油井は後藤に「俺もそうだと思う。歴史は詳しくないけども、ざっと調べた限りでは1937年(昭和12年)に起きた上海上陸作戦で戦死した名古屋第3師団歩兵第6連隊の兵士達を弔うために遺族が一時金などを使用して生前の写真をもとに浅野祥雲氏に忠実に作成をお願いしたものだから、名古屋第3師団歩兵第6連隊の隊員の像の集合体があるこの場所を帰るべき場所だと思っているのだろうか。因みに上海上陸作戦では、名古屋港から出発し6時間後に揚子江河口へ上陸する作戦だったみたいだけどこの作戦に参加した兵士の大方が全滅してしまったらしいから、どうなんだろうね。出てきそうな条件は大いに揃っているとはいえ、果たして現れる理由は何だろうか。そこだけが謎なんだよね。」と話すと、村田は「帰るべき場所がお墓だと考えるのが普通じゃないか。だって自分自身をモチーフにした像があるということは生前には全く知る由もなかった事実なわけだし、考えられるとしたら亡くなってからそれぞれの兵士が帰るべき我が家に帰ってきてそこで初めて自分の家族が自分をモチーフにした銅像の作成を依頼していることを知り、銅像が完成したときも実は陰で見守っていたんじゃないかな。名古屋第3師団歩兵第6連隊の一員として隊が一丸となって安らかに眠れるのはここぐらいしかないだろうから、死んだ後も仲間のことを思って一緒に居たいと考えてもおかしくないかな。何かそんな気がしてきた。」と語ると、油井は「お寺ということもあるからね。魂をうつす作業をしていなかったにしても、帰るべき場所に帰ってゆっくりと休まれているだろうというのは同感。一先ず1時間が経過したら設置した定点カメラの回収に行こうか。何だかんだ、あれこれと議論しているうちに1時間があっという間だったな。」と話すと、スマホの時計が24時を回ったのだった。

車から出て設置した定点カメラを回収してから、最期に軍人墓地へとやって来た一同は最期に油井がお供えの花が手向けられている像の前に立ち、「大きな声でお話しすることはできませんが、こんな安らかに眠っているだろうこんな時間帯に撮影して大変失礼しました。撮影に協力して下さりありがとうございました。」と一言お礼を伝えてから、油井が持参していたデジタルカメラの顔認証が作動するのかどうかを検証してみる事にした。すると、顔認証する像としない像があることが判明。その様子はライブ中継でも分かりやすいようにカメラの前にデジタルカメラの顔認証が作動する様子を分かりやすく説明した後、油井が「像に魂が宿っているのか、いやそれとも魂が眠るべき場所がここだからここで眠っているのか、いずれにしろ生前の故人の功績を称えるためにこの像は作られたのだとしたら、ここに現れた霊は英霊かもしれないね。禍を齎すとかそういう要素は一切ない。寧ろそんなことを言ってしまえば失礼にあたる。”お国のために”戦いたくもない戦争のために軍隊の一員として戦い散った方達ばかりだからね。大切にこれからもずっとずっと永代的に供養されるべき場所だろうね。この像が訴えていることは、何も自分がここにいることの主張ではなく、戦争の虚しさ、人と人は武器を持ち争い合ってはいけない、命の尊さや儚さを何より物語っていると思う。」と自分なりの解釈をした後、一同はその場を後にして、中之院の門の前のところにまで戻ってくるとそこでライブ配信を終了させることにした。

車に再度戻ってきた一同は改めて定点カメラで撮影した映像を持ってきたノートパソコンにつないで確認することにした。

タヌキの置物が無数にも置かれているところでは特にこれといった変化も無かったのだが、水子供養の石碑が無数に祀られているところでは白い発光体のようなものがスーッと通り過ぎていく瞬間をとらえ、それを見た杉沢村が「中之院軍人墓地まとめの一部として使えそうだね。WARASHIの発言が”エンジェル君じゃん”と言って青点滅するのが突っ込まれない要素の一つかとは思うけども。」と語ると、それを聞いた油井は「WARASHIは恐らくだけど、子供の霊を見てエンジェルだと解釈したのかもしれない。青点滅なので、悪い霊ではないことは間違いない。」と解説すると、最後に軍人墓地で撮影した映像を確認すると明らかに青白い淡い光のようなものが像の周りを行き来しているのが映っていた。変化はそれぐらいで、設置してあったセンサーライトも目の前に”何か”が通り過ぎたのかパッと一瞬センサーが反応して光ったぐらいのもので、WARASHIはというと青点滅して”エンジェルがいっぱいいるよ”と言うだけだからね。」と苦笑いをしながら話すと、それを聞いた油井は「つまりWARASHIもあの場にいる霊は悪い霊ではないというジャッジなのだろう。大切に供養されているのだからね。それがわかったところで、名古屋のミステリースポット、中之院軍人墓地でのまとめ動画として編集しようか。」と言って東京に戻ることにした。

そして2日間にわたる編集作業を終え、定点カメラでとらえた映像をまとめた”中之院軍人墓地 定点カメラでとらえた怪奇現象”と題し配信を行ったところ、視聴率は少しずつだが伸びていき、一週間たって1万回を超えたのだった。

寄せられたコメント欄には期待していた幽霊警察24時さんの投稿はなかったもののタヌキの置物が無数に点在している箇所で何かがポツンと光っていたという声や、水子供養の石碑が祀られているところでの白いオーブのようなものがスッと通り過ぎていく様子から、軍人墓地の青白い光の玉は鬼火じゃないかなどと憶測に憶測を呼びながらも、大反響とまではいかなかったが明るい肝試しにとっては良い収穫になった。

反響がじわりじわりと出てきたことに怪異蒐集家としてリモートワーク中の村田は油井にLINE電話で「少しずつだけど投稿した映像が反響しているな。定点カメラでしかも無人で行ったのも大きい。やらせの要素が一切ないという事は、ライブ中継時にも報告したあの”今からこの道具を使って定点カメラで撮影します”と説明した後に、境内には誰もいないはずなのに不可解な現象が起きた。俺達は車の中で待機していて、やらせの要素はそもそも出来るわけがないからね。車中の様子も全員が映るようにしていたからね。次の兵庫県のミステリースポット探索も楽しみだな!」と話すと油井は依頼されていたミュージックビデオの映像を作成しながら村田の電話を取ると村田に「そうだね。でもまだそれでもやらせと疑われている。でもこういう声には決して耳を貸さないほうが良い。それを言えばUFOだってUMA(=未確認生物)だって本当に見つけて撮影したものでも、ありえないという解釈から”やらせ”って思われちゃうじゃん。今のありのままの俺達のスタンスを受け入れてくれる人の声だけに限ろうよ。批判は尽きない。特にああいう映像を撮ってしまっては、近隣住民の方々がこれから受ける影響も計り知れない。そういったところにもこれからはより一層配慮しなければいけないからね。」というと、電話の最後に油井は村田に「樋之池公園の手っちゃんと弁天池の牛女の怪異譚、今度こそは必ず怪異蒐集家として背筋も凍り憑くような怖い話を必ず集めて来いよ。今回の中之院軍人墓地は俺が色々とネットサーフィンをしまくって集めに集めてやっと心霊スポットと言われる経緯に辿り着いたのだから、期待しているよ。」と言って電話を切ると、それを聞いた村田は「あのね、俺だって一応ネットサーフィンしまくって探しているんだからね!」と苦言を呈しながらも、6月27日から28日に行う樋之池公園の手っちゃんから、弁天池の牛女に纏わる怪異譚について仕事のオファーのついでに念入りに調べるのだった。

そして、一方佐賀では侑斗が市民課の職員として奔走していた。

それは一本のある匿名の電話からだった。

「隣の人、随分と前から外に出なくなった。昨日から隣の部屋から異臭がする。とにかく臭い。何とかしてほしいので見に来てほしい。」

市営住宅に住む住民のAから市民課に入った連絡で、早速侑斗は異臭がするという部屋のところへ足を運ぶと、すぐさまインターホンを鳴らした。しかし応答がないために仕方なくドアをノックして呼びかけてみることにした。

「白石さん!聞こえていますか!小城市役所の市民課の饗庭です!中にいますよね。いたら返事をして下さい!」

幾ら呼び掛けても反応がないまま時が過ぎてゆく。

一緒に同行していた上司の尾形課長は侑斗に「ひょっとすると中で倒れているかもしれない。一先ず合鍵は饗庭君持ってきたよね?中に入って本人の無事を確認しよう。ずっと外に出ていなかったからきっと何かがある筈だ。」と語ると、侑斗は「課長、何だか嫌な予感がします。このまま開けて良いんでしょうかね。警察を呼んだほうが良いと思います。」と話しながらも、尾形は「何かが見つからないと警察も動かないでしょ。まずは本人の安否確認のほうが優先だ。」と言い切り、侑斗は渋々ドアの鍵を持ってきた管理用の合鍵を使って開けることにした。

”ガチャリ”

鍵が開く音を聞き、中に入ろうとしたその瞬間だった。

鼻が折れ曲がってしまいそうなぐらいの強烈な悪臭が二人を襲ったのだった。

尾形が思わず「何なんだ!?何なんだこの臭いは!?」と言った後にあまりにも臭さに耐えられずに外で思わず吐いてしまった。侑斗は持っていたタオルで臭いをかがないように口や鼻を覆うような形で慎重に中に入っていくと、リビングにある異変を見つけてしまうのだった。

”これは一体何なのだろうか?ロープか?しかし一体ここで何が?”

そう思った瞬間に、侑斗がロープを掬い上げたその下で大量の蛆虫が湧いていて、よくよく見るとそれは人の形になっていたのだった。

それを見た侑斗はすぐさま玄関の外で気分を悪くして尾形に「白石さんはここで何カ月も前にリビングで首を吊り、他界されています。すぐ警察に通報しましょう。遺体が原形をとどめていない、辛うじて人の形をしていたから”これだ”とわかりました。蛆虫もあんなにわいて居たらそりゃあ死臭もするでしょうね。」と話し、尾形はすぐさま持っていたスマホで警察へ110番通報したのだった。

警察が到着したのを確認してから二人はすぐさま事情聴取を受け状況をしっかりと説明したところで、市役所へと戻ってきた。

尾形は侑斗に「はあ。あの異臭の正体はまさかの腐敗臭だったとは、しかし隣の人ももっと早くに気が付いてほしかったなあ。だって饗庭君が見た段階で人の原形をとどめていないという事は特殊清掃に莫大な費用が掛かることになる。」と大きなため息を漏らしながらも、侑斗は尾形に「白石さん、何かありそうな気がしてなりません。今まさに警察の捜査が入っていると思いますが見てしまったんです。机の上には怪しげな呪術系の本がズラッと置かれていて、ちょっと怪しい、いや怪しいどころではないかもしれませんね。危険な予感がします。捜査される警察の方の身の安全が心配です。」と口にすると、それを聞いた尾形は「まあ所詮、誰にも看取られることなく天国へと旅立った天涯孤独な人ってわけだから、変わっていて当然かもしれん。腐乱状態が進んでいるから遺骨云々の話はないにしても、事故物件になるのは間違いないなあ。はあ。」とまたしても深いため息をつくと、侑斗は「仕方がないです。特殊清掃も費用は掛かりますが次に住まれる方のためにも綺麗に清掃しないといけないですからね。」と話しながら、警察の捜査の結果を待つことにした。

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