バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第十五話 孫策からの使者 上

 江南の虎と呼ばれ名高い孫策は心ならずも二度、関平を助ける結果となっており、自らは中華統一の野心を隠さず、過去に孫家の本拠地であった南荊州を取り戻すべく、劉表と戦っていた。

 だが、南荊州を支配下に治めれば次の標的は三つに絞られる。

 一つ目は、最近、劉備から曹操が奪った徐州(じょしゅう)

 二つ目は、西の劉璋(りゅうしょう)益州(えきしゅう)

 そして、三つ目の関平の北荊州と寿春。

 三カ国とも大国ではあるが、一番の強敵である曹操と戦う方針に決めていた。

 曹操の庇護?(軟禁)している皇帝を得れば、大義名分を得て中華統一の一番の早道である。

 その為、関平と同盟すれば曹操を挟撃できる可能性があり、ましてや、手元には玉璽もある。

 まず、軍師であり義兄弟の周瑜に相談してみた。




 すると。

「孫策よ。確かに良い策だが、関平の勢力が増大するのは好ましく無い。どうだろう? あの妹君を使者と送り、関平の品定めをしてみるのが良いと思うぞ」

「まさか! 孫尚香(そんしょうか)を使者にするのか? 確かにあのままでは行き遅れだが面白い。気に入らねば殺せと命じ、試してみるか?」


 二人は笑みを浮かべ、関平に同情した。





 そうして、関平は孫策からの使者が来たと聞き、嫡男、関龍(かんりゅう)を出産し、安心しきった呂乱華をゆっくり休めて向かうと。

 身の丈程の槍を持ち、赤き鎧と白き肌、山の様な乳、絹の様な黒髪を一本に結んだ十代後半の美女の武人? と五十代後半で赤き鎧と身の丈程の戟を持った白髪の老武将がいた。

 すると老武将が発言した。

「関平殿。奥方の出産、誠にめでたい。我が主君、孫策様より祝の品をお持ちした黄蓋(こうがい)と申す。このお方は主君の妹君、孫尚香様にございます」

 孫尚香はじろじろ見ながら。

「この方が呂布の娘を娶り、七カ国を支配している牧の関平殿? 鬼神の様に強いと聞いてましたが、鬼とは無縁の優男ですわね。兄が気になる男か? 私が試す! 試合して下さいませぬか?」

 と、挑戦的な発言をした。

 関平は大いに困った。

 相手が孫策の妹で、武勇も呂乱華に匹敵する武人の気を放っていて、とても手加減出来ず、また、わざと負けられない。

 かと言って勝てば機嫌を損ねる。

 今は迂闊に試合出来ない地位でもある。

 場を濁そうと他の家臣に命じようとした時、

「逃げるのか! 関平殿! 姫様で不足ならば、儂が代わりに試合を致す!」

 どうやら、姫を侮辱されたと思い黄蓋が名乗りを挙げた。

 黄蓋を見て試合を受ける事にした。

 黄蓋は長年戦場で戦い抜いたのであろう。

 まるで父、関羽や張飛に匹敵する覇気を放っていた。

 むしろ俺自身がどれほど強くなり、通用するか? 試したくなる。

 獰猛な虎と龍を思わせる試合が始まろうとしていた。










 

 





しおり