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弁天橋(千葉・千葉市)

 
挿絵



金山ダムを後にした一同は次に向かう心霊スポットの次回予告を行うために斧落が移動中の車内で公式TikTokのライブ配信で紹介をし始めた。

「明るい肝試しをご覧の皆さん!こんにちは!斧落です!次のライブ配信は13時55分から配信予定、14時から本格的に肝試しを行う予定になるんですけども、千葉県でも非常に有名な心霊スポットの一つである弁天橋での明るい肝試しを行いたいと思います。ここで伝わる怖い話としては、今から44年前の1982年6月6日に発生した当時中学生だった少女二人が新宿のディスコで遊んだ帰り際に「一緒にドライブに行こう!」と男性に誘われ、赤いスポーツカーで弁天橋近くの遊歩道に連れてこられたんです。そのときに、花見川サイクリングロード脇の笹薮の中に少女が首とアキレス腱を切られ失血死した状態で見つかり、もう一人の少女は後ろから首を絞められ失神したが打撲などの軽傷で済んだという痛ましい事件が発生しました。また、この事件に関しては見つからぬまま時効の25年を過ぎ公訴時効を迎えて未解決事件の一つになったことも、殺された少女が今もなお幽霊として現れるという噂で非常に有名な場所です。ただ弁天橋ではなく、サイクリングロードで主に心霊現象に遭遇されている方が多く見受けられますので、我々は弁天橋と合わせてサイクリングロードでの肝試しを行いたいと思いますので、皆さん14時からのライブ配信を心待ちにして下さい!」

斧落が笑顔になりながら生配信を終えると、その様子を見た村田は「それにしても、どうして犯人は見つからなかったんだろうね。だって赤いスポーツカーって犯人が乗ってきている乗用車だって特定できているのに、それだけではどこのメーカーの車種なのかが特定しないと、分からなかったってことなのだろうか。」と疑問に思ったことを語ると、杉沢村は「どうだろうね。幸い生存者がいるだけでも犯人を捕まえるための情報を得ることは出来たけども、赤いスポーツカーに乗っていましただけではナンバープレートの数字は覚えているかとか、どうしてもその断片的な情報だけでは犯人を特定することはできないからね。(スマホの情報をネットサーフィンしながら)でも一方で元々この弁天橋って事件が起きる前からもうすでに心霊スポットの一つだったみたいで、噂されている内容としては子供の霊が目撃されたというのがある。川が近いから子供が川遊びした際に誤って深いところに入り溺れてしまった可能性も背景としては有り得る。色々な悲劇が起き、そこに殺人事件も起きてしまったために霊が集まりやすい環境が非常に多く揃ってしまったのかもしれない。」と話すと、それを聞いた油井はうーんと頷きながら杉沢村に「監督。せっかくだから現役警察官の饗庭さんに見てもらおうよ。俺達の肝試しをメインにするよりも現役の警察官がどう見るかを今回の議題のテーマにしたいんだけどどうかな?勿論烏藤さんの意見も貴重なものを得られると思うから俺達は霊能者の意見を聞いて、生配信を見てくれている方達に分かりやすく説明を行うスタンスで行こうか?」と提案すると、杉沢村は油井のアイディアを聞いて「そうだね。現役の警察官に見てもらってどうジャッジを下すのかYouTubeとニコニコ動画の視聴者も絶対気になるところだろうからね。饗庭さんにはその旨を伝え、警察官と霊能者がどう判断するのか?で肝試しというより心霊スポットとしてどうジャッジを下すのかという内容のほうが、見てくれる人が増えるかもしれないね。」といって返事をすると、油井と杉沢村の間で軽く打ち合わせを行った結果を星弥の携帯に連絡をした。

星弥は杉沢村の連絡をすぐ取り、星弥は「ああ。聞いた。新宿歌舞伎町ディスコナンパ殺傷事件だね。時効が成立してしまった、被害者の少女の無念があって不思議ではない。」と話すと、杉沢村は「油井とさっきやり取りしていたんだけど、饗庭さんが警察官としての視点で、烏藤さんが霊能者としての視点で弁天橋付近をどう見るのかという事を重点的なメインテーマにしてライブ配信を行いたいと思っている。そこで饗庭さんと烏藤さんを先頭に検証してもらい、油井や村田たちは饗庭さんと烏藤さんの話をより分かりやすく動画を見てくれている方々のために質問したりするなどをするという流れで行いたいと思っている。今即行で油井と決めたんだけど、明るい肝試しのメンバーもそれで行こうと決めたんだ。饗庭さん、烏藤さんの意見も聞きたい。こうしたほうがいいというのならそれも取り入れたい。」と話すと、杉沢村の話を運転しながら聞いた烏藤は「俺は良いけど。それにあの地図を見ただけでも、殺害現場とされる場所を見ただけでもゾッとした。何かあることは間違いないと思った。」と答えると、星弥は「うーん。どう答えるべきか。そもそも警察官としての意見を求められてもね。」と話すと、烏藤は「何だよ。せっかく刑事課にいるのに、今迄の仕事で培った経験から率直に思ったことを言えばいいだけじゃないか。」と星弥に語り掛けると星弥は烏藤に「そういうことじゃないんだよ。これは闇が深い。だから未解決なんだろう。」と話すと、自分なりの見解を説明し始めた。

「警察官的に言わせてもらえば、赤いスポーツカーに乗っていました。それだけでは捕まらないのはわかるよね。俺達としては個人が特定できるナンバープレートの数字から登録された情報を割り出し、そこから少女が見たとされる車種の持ち主を炙りだすことが出来るのだが、どんな車に乗っていたかだけ覚えているだけでは捜査に時間がかかってしまう。中学生の少女だったから、車の知識が皆無に等しかったのはしょうがない事だろうが、目撃情報の25歳前後で身長は大よそ170cmで白地に赤い線の入ったシャツに紺色のズボン姿で丸顔でサングラスをかけていました、って話がネットサーフィンには載っているが、たとえこの目撃情報を頼りにイラストなどを作って捜査手配を掛けることは出来たとしても、まあぶっちゃけた話この情報ではあまりにも抽象的過ぎる。丸顔でサングラスをしていました、サングラスを外した素顔が分からないじゃん。結局外した状態で町の中を歩き回っていたら、丸顔だけで疑われることになるよ。しかも170cmだなんて、俺は188cmで、烏藤は178cmでどっちものっぽさんだからまあいいや。日本人ならよくいる身長でもあるから、だからこそ迷宮入りをしてしまったのかもしれない。犯人の顔の画像が判別できる防犯カメラが男と遭遇したディスコに設置さえしてあればまた違ったのだろうけど、当時はそこまで普及していなかったから尚更犯人の特定が難しかったと思う。」

星弥の話を聞いた烏藤は「確かにそうかもしれないね。今だったら仮に車のナンバープレートが特定できなかったとしても防犯カメラから割り出すことはできるからね。そう考えたら殺された女の子が今も犯人に対して捕まって欲しいという気持ちで彷徨っていても不思議ではない。」と話すと、星弥は「今さちらっとタブレットのアプリにインストールしているGoogleマップのストリートビューを見たんだけど、赤いオーブが2体確認できた。太陽の日差しから見て明らかにフラッシュの焚かれる方向とは全く異なるところにある。恐らくオーブとみて間違いないが、一つは少年のオーブと、もう一つは川に向かってだが丸顔の少女らしきオーブが確認取れた。殺害された女の子の写真を見てみたが、オーブで映し出された女の子とみて間違いない。少年は恐らくだが事故死だろう。俺も遊歩道は見ていて嫌な気配がじんじんと伝わってきた。殺害現場だから、俺も正直に言って思い出したくもないが、あれを思い出させるよ。(烏藤の顔を見て)活魚。」と切り出し、烏藤は「ああ。活魚ね。あれは俺もいろんな心霊廃墟見てきたけど、断トツでもう洒落にならないぐらいの、気持ち悪い体験をしたのは今でも忘れられない。警察に拘留されたのも、俺達いい経験をさせてもらったな。仕事で来ているのにな、トホホだったよ。でも星弥の父さんがすぐに掛けつけてくれたおかげで俺達拘留期間も何より刑罰も軽いもので済んで本当に今も星弥の父さんには感謝しかない。」と星弥に語ると、星弥は「あそこは異様すぎる。今でも俺はあそこにリーダー格として存在する恐らく殺された女の子の霊に訴えられ続けている。内容は殆ど恨み節だよ。俺は神でも仏でもない、命をもう一度蘇らせる、過去にタイムスリップをして女の子を助ける、できっこない事を約束してはどうしようもないからね。」と話すと、同じことを烏藤も体験していたのか「実は言うと俺もなんだよ。あれからずっと。ずっと。ずっと忘れたことなんてなかった。いつも悲しい表情で訴えてきた。こんな思わぬ形で命奪われ犯人を憎む気持ちがあって当然だと思う。でも憎んでばかりではどうしようもないからね。霊能者の俺達に御霊になった今でもあの建物内を彷徨う女の子の願望を叶えることはできないが、いつかあの女の子の御霊を鎮魂するための施設に、俺は土地の管理者と交渉できるのならいっそのごとあの建物を解体して、女の子の御霊を供養するための施設にしてあげたい。女の子の命を元通りにすることはできないが、俺達には俺たちなりのできることを殺された女の子にやってあげたい。」と思ったことを口にすると星弥は「本当だね。そうしてあげたいよ。でも管理者と連絡がつかぬ現状を考えると願望を口ずさむのが俺達の精一杯だな。」と烏藤を見ながら話すと、烏藤は「致し方ない。出来る限りの供養を行う。それが命ある俺達の職務だから。」と強い口調で言い切ると、星弥は「連絡がつけば買い取りたい。それしか言えない。」と言葉少なげに話すのだった。

そして、弁天橋の付近に一同が乗る車が到着すると、車を唯一駐車することが出来るスペースとして、横戸元池辨天宮のところまで到着すると、歩いて弁天橋へと向かおうとした時だった。撮影する前だったが秩父の様子が段々とおかしくなっていくのを隣で歩いていた後藤が気付き始めると、星弥と烏藤に対して「饗庭さん!烏藤さん!さっきから秩父の様子が変だ!車に乗っていた時は元気だったのに、俺達がここに辿り着いたと同時に急に声が聞こえてきたんだ。女の子の笑い声で”アハハ”って声が聞こえて、誰かいるのかと思って振り返ってみたけどでもむっちゃんやメイサちゃんは俺達より先に歩いているし背後に聞こえてきたらおかしいなと思ったら、今度は噂にない男の呻き声が聞こえてきて”ううううう”という声が聞こえてきたので、やはりどうしても何かがあるなと思って確かめるためにも俺がいったん立ち止まると、秩父も立ち止まった。そのときに、秩父の様子がおかしくなった。”過呼吸になったかもしれない。しんどい。呼吸がしづらくなった。”といって座り込んでしまった。」と大きな声で叫ぶと、たまらず撮影どころではないと判断した烏藤が秩父の側に寄り添うと、秩父に「大丈夫か。何か話せることはあるか?」と聞き始めると、秩父は烏藤のほうを見て「大丈夫、大丈夫。」と返答をするも目の下にはクマのようなものが生じており、また血の気がなく青白い表情になっていた。

烏藤がすぐさま霊視を行うと同時に、心配になって駆け付けた星弥がすぐさま秩父の御祓いを行い始めた。烏藤が星弥に「どうしてだ。事故死だけにしては霊の数があまりにも多すぎる。」と語ると、それを聞いた油井は「霊が多すぎるって、殺された女の子の霊以外にもいるってことだよな。じゃなかったら男の呻き声の説明の示しがつかない。女の子の笑い声がもしその殺された女の子なら、女の子は一体何を訴えていたのか。そしてどうして霊が集まりだすのか、水場の近くだから集結しやすい環境が揃っているとでもいうのか?」と訊ねると、星弥はある可能性を示唆した。

「烏藤。俺達は活魚でも同じことを体験したのを覚えているよな?」

星弥が烏藤に質問すると、烏藤は勘づいたのか「そうか!ここがひょっとすると実際の殺害現場だった可能性があるってことなのか!?」と切り出すと、星弥は「移動中の車内でずっと当時に報道されたニュースを見ていたけど、新宿歌舞伎町を後にして恐らくここが犯人の地元だったのだろう。そうじゃなければ、こんな人気のない漆黒の闇が包んでいるこの場所をあえて選んだのかもしれない。犯人は赤いスポーツカーで車で入っていくことができる場所であるここにまでやってくると、ここで恐らく凶器となる果物ナイフを使って女の子を殺害したのだろう。一緒にいた女の子が殺されることなくゴムホースのようなもので首を絞められたが打撲だけで済んだというのも不自然だ。しっくりこない、報道されている内容と、これはおかしい。」と話すと星弥は秩父の顔を見て「秩父さん、落ち着いた?一先ず車の中まで戻ってゆっくりしよう。マイクは杉沢村監督にお願いしよう。」と話すと、御祓いを受け正気を取り戻した秩父が「饗庭さん、ここはただの心霊スポットじゃない。ここはおかしい。」と話すと、饗庭は杉沢村に対して「秩父さんの体調を見てもこれ以上の撮影の続行は不可能とみて間違いない。マイクは監督にお願いしたい。」とお願いしたところで、弁天橋のところまで辿り着いた一同はスマホの時計が13時58分になったのを見てニコニコ動画とYouTubeのライブ配信を行い始めた。

リポーターを務める饗庭が「明るい肝試しをご覧の皆さん、こんにちは。霊能者の饗庭です。55分からライブ配信予定でしたが、少し遅れてしまいすみませんでした。明るい肝試しでマイク担当の秩父さんが急に体調を崩し”しんどい”と訴えて急遽御祓いをすることになりました。秩父さんについた禍を取り祓うことは出来ましたが、僕達と同行して肝試しを行うのは困難と判断し秩父さんを除く僕達9人で弁天橋とサイクリングロートでの心霊検証を行いたいと思います。では利き腕が不自由な僕の補助として引き続き烏藤さん、そして明るい肝試しのリポーターとしてお馴染みの油井さんとそして村田さんと検証を行いたいと思いますので宜しくお願いします。」と事の経緯を説明したところで、一同は右側の歩道から先に弁天橋を歩き始めることにした。

後ろを歩いていた斧落が「今のところ、赤い橋ってだけで気味が悪いって感じはあるけどでもそれだけだね。特に霊がいそうな気配は感じない。」と語ると、星弥は斧落の意見を聞いて「弁天橋が怖いわけではない。自殺の名所と言われているわけでもないしね。たださっきから、遊歩道がおかしい。そしてどうして秩父さんに取り憑いたのかも、ここは花見川サイクリングコースが近くにある目印にしか過ぎない。」と話すと、一同は弁天橋を渡り切ると今度は反対側の歩道を歩こうということになり車道を渡って逆の歩道でも霊の存在を確認するために再び弁天橋を渡ることにした。

そのときだった。

甲州が先を歩く星弥・烏藤・油井・村田の4人に”気持ちが悪い”と訴え始めた。

甲州の悲痛な訴えに烏藤は駆け寄って近付くと、「どうした!?しゃがみ込んでどうした!?しんどいのか!?どうしんどくなったのか教えて!」と話すと、甲州は「わたしもさっき、秩父君と同じことが起きた。耳元で誰かが訴えてきている。女の子の笑い声と男の人の呻き声。それが段々と近付いてきて最終的に男の人の声がわあああと叫ぶような声になって、はあ呼吸がきつい。」と話すと、一生懸命になって喋れることを話したのだろうか顔は青白く呼吸は荒くなっていく。その表情から察してとても甲州がこれ以上の弁天橋での同行ができる状態ではないと判断して、星弥がその場で烏藤と共に御祓いを行った。

相次いで、メンバーに説明のし難い出来事が次々と起こってしまったことで、杉沢村は「今までいろんな心霊スポットに行ってきたけど、こんな秩父や甲州がダウンしてしまうなんてことはなかった。どういうことだ。何が起きているんだ!?」と何とか落ち着こうとして考え始めるも答えが出てこない。杉沢村は饗庭と烏藤に対して「非常に悩ましいところだ。このまま続行すべきなのか。どうしてだ?一体何が起きているのだ?教えてくれ。」と二人に対して懇願するも、烏藤は杉沢村に「霊と直接話をしてみる。これしかない。御祓い能力のない明るい肝試しの皆さんは車に戻るべきだろう。ここからは俺と星弥の二人でこの地を彷徨う御霊達と接触してみる。」と話すとそれを聞いた油井は「待って!それだったら俺も真実をこの目で確かめたい。俺だって霊と話すことはできないが、霊視ならできる。俺だって秩父とむっちゃんの辛そうな表情を見てここに何があるのか。真相を知りたい。」と話すと続いて村田、そして杉沢村が同行の意思を示すと、斧落は「わたしはむっちゃんのことが心配だからむっちゃんと一緒に車に戻る。」と話すと、それを聞いた畑は「俺も、一人で待機している秩父のことも勿論むっちゃんのことも心配だ。後藤はどうする?」と切り出すと後藤は「俺はこのまま残る。だから秩父のこととむっちゃんのことを宜しく頼む。」と返事して、それを聞いた畑が「わかった。あとの肝試しは任せたよ。」と返事して斧落は今にも倒れそうな甲州を二人で支えるような形で車に戻ることにした。

星弥、烏藤、油井、村田、杉沢村の5人体制で引き続き弁天橋での肝試しを行うことになったのを見て早速動画を見ていた視聴者の方からは「中止するべきじゃ!?」という書きこみが相次いでいるのを油井が持っていたスマートフォンで確認すると、油井は星弥と烏藤に対して「さっきのむっちゃんの体調不良の事、秩父の事もあったから皆心配になって”中止するべきだよ!!”って書き込みが続いているんだけど、霊能者としての立場としてどうなんだよ。」と恐る恐る語る油井の表情は冷や汗が止まらず、声には出してはいなかったが、星弥はそんな油井の顔を見て「無理なら無理って言ったほうがすっきりすると思うよ。ここは霊感の強い、敏感な人にとっては酷な場所なのかもしれない。ただ理由が分からないと俺達も説明しようがない。」と話すと村田は「動画では霊感が鈍感な人であっても取り憑かれてしまった映像があったりして、霊感が敏感も鈍感も関係はないんじゃないのか?」と言い方を変えて聞き出すと烏藤は「霊感は全ての人が持っているもの。霊感のない人なんていない。ただそれには個人差があって鈍感であってもこういった心霊スポットに足げなく通い続けることによって過敏に反応を示す傾向もあったりして、鈍感だろうが敏感だろうが関係はない。ただここで彷徨う御霊達は俺達の存在を見て明らかに強く強く何かを訴えているような気がする。取り憑こうとしたのは間違いないだろうが、それは恐らく禍を齎そうとしたのではなく、何かを訴えたい一心で一時的に取り憑いたのかもしれない。」と話すと、背後で烏藤の話を聞いた後藤は「一時的に取り憑くことで一体何を訴えたかったのか。教えてくれよ。」と質問すると、星弥が「遊歩道となっている花見川サイクリングコースに行けば答えが分かる。」と語った後に弁天橋を渡り切ったと同時に星弥は明るい肝試しのメンバーに聞こえるような口調で後ろを振り返ると、こう告げたのだった。

”霊は嘘をつかない。”

星弥の思いがけない答えに明るい肝試しのメンバーがポカンとする中で、唯一烏藤だけが分かったのか「わかった。そういうことか。」と首を振ってうんうんと頷き始めると、何を言っているのか分からない油井は呆れた口調で「嘘をつかない?今更何を言っているんだ。でもサイクリングコースに行けば答えがあるってことだよな。」と理解を示したところで車両の通行止めの柵が設置されてあるところから遊歩道へと入っていく。星弥が「当時の報道されたニュースの写真などから見て遺体は横戸緑地で発見されたものだろうと推測される。今も当時のまま車両の通行止めの柵がもしあったとしたら車での侵入は不可能だ。考えられるとしたら秩父が最初に異変を起こしたあの俺達が車を停めた場所で殺害後、遺体を処分するためにも横戸緑地で遺棄したと考えられるのが自然だ。だが疑問はある。強盗目的で殺すのなら何もお金を持っていないのは明らかな中学生はターゲットにしないでしょ。それに女の子たちを連れまわすのが目的ならわざわざ千葉まで行く必要がない。明らかに土地勘があって、ここの地元をよく知る人でなければこんな場所を選んだりしない。」と不自然な点を説明し始めるとそれを聞いた後藤はスマートフォンを片手に「そうだね。奪った金額も2万円だったとあるし、犯行に使われた車両は恐らく日産のグロリアだろうという話も浮上している、犯人のイラストだってある、それにも関わらず特定に至らないのはその犯人が上流階級の人間だったからとか色んな説があるね。でも果たしてそうなのか、言われた通りに不自然なところが多い。」と話すと、星弥は「生き残った女の子だって不自然だ。首を絞められたのなら、それが後遺症になる可能性がある。にも関わらず男の手で仮にもし絞められたとしたら、打撲の軽傷だけでは済まないと思う。」と続けて説明すると、最後に烏藤が「この事件は闇が根深いね。犯人のイラストを見ても果たしていたのか、実在する人間はいくらでも探せば出てきたはずなのに上流階級の人間だからというのが理由ではない。そしてこの今も彷徨う御霊の数を考えると、これは明らかに訴えたいことがあって霊障を引き起こしている以外ないんだ。ひょっとするとここにいる御霊達は事件の一部始終を目撃しているのかもしれない。」と話すと、歩き進んでゆくにつれ左手のほうに見えてきた笹薮のところでいったん何かの気配を感じ取ったのか星弥と烏藤は立ち止り、徐に気配を感じた方向を直視すると、星弥が数珠を持ちながら気配を感じた方向に声を掛け始めた。

「〇〇〇(被害者の名前)さんですか?僕達にはしっかりとあなたの姿を確認することが出来ます。教えてください。何があったんですか。」

星弥の思わぬ呼びかけに、油井も「見えた。あそこにいる。間違いない、写真に遭った殺された女の子に違いない。」と村田と杉沢村に対して説明すると、烏藤は明るい肝試しのメンバーに対してこう告げた。

「一応確認するけど、油井さんも、村田さんも、杉沢村さんも憑依体質ではないよね?今から星弥が行うことは本当に洒落にならないぐらいに危険になる。ライブ配信は中止だ。ここで彷徨う御霊は何かを訴えたくて霊障を起こしていることは間違いない。防衛する術を持たないと取り憑かれて発狂してからでは遅すぎる。」

烏藤の問いかけに油井、村田が絶句してどう答えたらいいのか迷っているうちに、杉沢村が「いや、今まで取り憑かれたなってのは、後ろの気配はあるけども、よくある体調不良でってのはない。だから油井も村田も憑依体質ではない。でも見ている人に霊障による症状が起きては大変なことが起きるから、油井、村田、ライブ配信を中止するよ。」と言い放つと、油井と村田は口を揃え「わかった。」と返事したが、油井の様子が段々とおかしくなっていく。汗が止まらず、足がガタガタと震わせると力が抜けたかのように座り込んでしまった。

後ろの物音に気付いた星弥は「烏藤!油井さんの対処を頼む!俺は女の子の霊と説得にあたる。」と指示し烏藤が「わかった!」とすぐ駆けつけると、村田も杉沢村も出来る限りの油井の介抱を行い始め、烏藤が即座に御祓いを行った。

意識を取り戻したのか油井は烏藤に「何とも言えない。何か意識しようとしていたこととは思いもしない行動に出てしまった。」と答えると、烏藤は「ここは危険すぎるんだ。肝試しであっても、心霊検証であっても、こうして俺達の前に女の子の御霊が現れている以上、この女の子の御霊に同情するように関係のない御霊であれど集まりやすい環境になっているんだ。粗大ゴミが不法投棄され、人目がないからだと思うがそういった場所はこの世に未練を持つ浮遊霊が集まりやすい。事件当時も恐らく浮遊霊がいたと思うが、恐らくこの場にいる御霊達は殺害した状況を見ていたのは間違いない。霊として見た真実を伝えたくて必死なのだろう。だから誰だろうが憑きやすいと感じた人をターゲットに憑いて事件の真相について語りたいんだよ。」と説明すると、星弥が烏藤たちのところに戻ってきて「これ以上の心霊調査は無理。秩父さんのことも甲州さんのこともそして油井さん、皆のことが心配だ。今ライブ配信はしていないけど俺と烏藤のやった行動は、監督が動画配信用に撮影しているんだよね。それももうやめたほうがいい。」と話すと、一同は現地で解散を行う形で弁天橋を後にすることにした。車の中で意識を取り戻しつつある秩父、甲州の姿を見て安心した杉沢村が「よかった。本当に饗庭さんと烏藤さんがいてくれただけでも、でも見てくれた人は答えに納得しない。」と疑問に思ったことを率直に語ると星弥は答えた。

「仮にもしこれを実際の警察官として扱う事例になったらこれほどややこしいものはない。女の子の御霊と話して、説明があやふやだった。誰に殺されたのか、犯人は生きているのか、男にこの場所に連れてこられ命を奪われたのなら、生きていたらきっと色々とやりたかったことがあったはず、恨んで当然の感情があって当たり前だが、彼女は夢枕に立つようなことはしておらず時折橋から生前のことを思い出すようにふっと現れふっと消える。唯一の生存者だった友人の証言などを見ても、証拠が十分揃っているように思うが、車が品川ナンバーだった、どこの大学だったか覚えていないが大学生だった、顔の見た目をしっかりと覚えていてもこれだけでは特定はできないね。目撃証言があるから東京にいたことは間違いないだろうが、通り魔をするのが目的とも、むしろこれは顔見知りの可能性のほうが高い。犯人のモンタージュも実際にそうだったのか、極めて怪しい。嘘をついている可能性も捨てきれない。車もレンタカーの可能性は捨てきれない。何しろナンバープレートが品川だけでは犯行車両として特定できないからね。だからこれだけ言えばというのがあって、これ以上は机上の空論に過ぎないから深く掘り過ぎないほうが良い。ただ言えるのは警察関係者でも政治家の子息でもない。」と話すと、それを聞いた杉沢村が「一部の情報筋では生き残った女の子も共犯では?という話がある。顔面からの出血が激しい状態で救急搬送されたらしいけど、殺された女の子と同様にゴムホースのロープで首を絞められた上に顔面を叩きつける打撲で済んだってのも、最初に饗庭さんが言っていた犯行現場ってのも殺された女の子の遺体が発見された横戸緑地の茂みに抵抗痕が見受けられたことも恐らくそちらではという話もあり、また殺された女の子は暴走族の一員で遺体が発見された横戸緑地は暴走族のたまり場だったらしい。ただどこまで警察が踏み切ったのか、警察も警察で証言の内容に引っかかって前進することなく終わったのかもしれない。」と話すと、星弥は頷きながら「だろうね。証拠が揃い過ぎているから捕まるかとなるとそういうわけではない。生存者の少女の証言をもとにその時間に現場にいた人がいたかどうか聞き込みを行い、証言の内容に食い違いがあるかどうかも含め、見極めないといけないからね。少なくともあの女の子の御霊には何か引っかかる、隠していることがあるに違いない。そうじゃなければ怨霊と化しても不思議じゃないが彼女は浮遊霊の一種に過ぎなかった。」と語り、星弥と烏藤の明るい肝試しのメンバーで行う3日間の日程を終え帰路につくことにした。

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