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広場の完成

9月8日にかつて潤一郎の御霊を封じ込めていたあの地下の隠れ部屋だった場所を瓦礫で埋めた後に、到着したミキサー車の生コンクリートを流し始める作業が順調に進んでいく。コンクリートを埋める作業が終わったときは、チーム一丸になって何事もなく工事の作業を達成できたことに安堵感でいっぱいだった。

木藤が「大嶌社長!地下室だった部分をコンクリートで埋める作業が成功しましたよ!あとはこのコンクリートが固まるのを待つのみですね。」と嬉しそうに大嶌の耳元で囁くと、大嶌は満足げにこう語った。

「工事の達成を祈願してFmlybndのCome Aliveを聞こう!!!!」

そう話すとタブレットを手にSpotifyのアプリを開いて大音量で流そうとしている大嶌の姿があった。

山嵜はそんな大嶌の姿を見て、後で苦笑いばかりしていた。

「篠原と桑田は社長奇想天外についていけているか?」

山嵜にそう聞かれた篠原は、「うーん、僕は何とかついていけてますよ。社長ぐらいの年齢なら演歌ばっかり聞いているイメージがあったんですけど違うんですね。」と話すと、続く桑田は「お孫さんの趣味なんじゃないんですか?」と笑いながら話すと3人の話を聞いていた大嶌は大きな声で怒り始める。

「わしはまだ58歳だぞ!まだ演歌ばかり聞くような年齢じゃない!!」

山嵜と篠原、そして桑田は「たっ、大変・・・失礼しました!」と聞かれていたことに対して恥ずかしくなりながら謝罪をするのだった。

ミキサー車で流し終えたコンクリートが固まるには一日以上は経過しなければいけない。旧染澤邸での本日しなければならない作業を終えた一行は少し早めに現場を退散することにしたが、時間はまだ15時だった。帰るにも早すぎる時間だったため、会社に戻り事務的な業務を行い、定時の18時になれば各自で帰ることにした。

明くる日の朝、9月9日の出来事である。

一足早く朝8時には現場に到着をした山嵜がコンクリートがしっかりと固まっているのかどうかを確認にやってきた。

かつて地下室だった場所はしっかりとコンクリートで固められており、部屋だった面影は一切なくなった。その様子を見て、「この状態ならば上から土砂を覆いかぶせても問題はないだろう。」と確認した。

朝9時の作業開始と同時に、緑あふれる天然芝で覆い茂られたフィールドへと少しずつ変化をしていく。この日の作業のために予めトラックいっぱいには用意されてあった天然芝を、地下室だった場所に土砂をかぶせた後、平らに地面を均しておいてから天然芝を植える作業に入っていく。

12時にいったんお昼休憩に入った後、13時から再び作業を開始した。
時計の針が18時30分を回ったころには、何もなかったこの土地に天然芝の緑いっぱい溢れるフィールドへと変わっていった。

その様子を見て木藤は「あと少しですよ、社長。」と話すと、大嶌は「そうだな。明日の作業で行わなければいけない作業がすべて完成する。」といって語りだした。

明くる日、9月10日の事だった。敷地内一体を天然芝で覆った後は、敷地内へ入るための階段の整備に追われた。元々はコンクリートの階段だけだったのだが、それだけでは味気ないと判断をして、階段だった箇所を壊し新たに石造りの階段にしていく工程へと入っていく。

少しずつだが、反町が理想とする広場へと変わっていく。

そして階段を上がってすぐの場所に予め嶌田石材工務店に敷地内に設置をするための石碑と地蔵を発注をしておいたのが届くと、早速その届いたばかりの石碑を設ける。同時進行で前もって用意をしておいたオリーブとレモンヴァーヴェナの苗を敷地内を交互に囲むようにして植えていく。

「オリーブとレモンヴァーヴェナのいい香りと共に潤一郎の心の傷も癒やせられたらいいですね。」

篠原が何気なく言うと、木藤は近づきこう語った。

「残念ながら潤一郎の心の傷ばかりは、これから先何年かけても癒えるものでもないだろう。社会を怨みながら死んでいる人と、後悔の念を抱きながら死んだのとでは意味が違うからね。最も、死ぬと分からなかった場合であっても、予め自分が病気だと分かっていたら死ぬ覚悟がいつかは来ると思いながら人は死を迎えるんだと思う。でも潤一郎は明らかに特異なパターンだろうと個人的には考える。潤一郎はきっと良い人だったに違いない、でもその反面で思い悩んだり苦しんだり決してそれは社会に対して捌け口を出さなかったという面もあったのかもしれない。それは俺達にイタコとしての才能はないから憶測の域にしか過ぎない。でもこの広場が正式にオープンをして子供達がサッカーなどをして遊ぶ広場として変わっていけばきっと潤一郎の心の持ちようも変わってくる。そう願いたい。」と話した。

それを聞いていた桑田は「どうでしょうね。そうやってまたゾンビランドサガ以外の佐賀の名物となったら嫌ですよ。犬鳴峠に次ぐ第2の”九州の行ってはいけない所”として大々的に取り上げられてもおかしくないですから。」と話すと、その話を聞いていた山嵜が後から声をかけてきた。

「行ってはいけない!で特集されるぐらいなら、ほら、あの映画化された”事故物件に住みまーす芸人”が旧染澤邸に住んでいてもおかしくなかったんじゃないのか?」

周りは爆笑に包まれた。

木藤、山嵜、篠原、桑田の話をにこやかに聞いていた大嶌だったが、彼らの話にはさすがに何が何だかが良く理解できずにいた。

「ゾンビランドサガ?犬鳴峠のどこが怖い?はあ?」

作業を開始して18時45分になろうとしていた。

一行は明日の作業のことも考えて、現地で解散をすることにした。

明日9月11日には太陽光で発電をすることが出来るソーラーパネルの設置と同時に、広場内を明るくすることが出来る証明の設置や水道栓の設置などの工事を行うことで予定が決まり、明日の工事が終われば旧染澤邸を緑あふれる広場にするという、広場の工事日程が終わる。これまで何事もトラブルが無く順調に進んでいくのを見て安心をした大嶌は「明日で全ての作業を終わらせよう!!!」と力強く発言をすると、木藤や山嵜、篠原と桑田が大きな声で「はいっ!」と大きな声で返事をした。

明くる日、9月11日の朝。

朝9時になったと同時に、届いたばかりのソーラーパネルを設置したいか所に設置をしたのと同時に、予め呼んでおいた電気工事業者に該当を立てた後のケーブルをつなぐ工事をお願いをした。その間に水道栓並びに水飲み場の設置個所に一つ一つ煉瓦で組み上げていくと、洋風のお洒落な感じに仕上がった。大嶌がその間にトラックに積んできたベンチを取り出す作業を行っていた。

入り口から入って一番端っこの右の真ん中あたりに水道栓、入り口から入って奥の真ん中あたりに水飲み場、階段を上がって左側に2つのベンチ、そして左側の奥の場所にソーラーパネルにソーラーパネルで貯めた電気をエネルギーとする照明塔、かつて地下室があった場所に白色の煉瓦造りの壁で赤い屋根板をつけた小屋の中に地蔵を設置した。全ての作業が設置したところで広場の工事が滞りなく18時には終わった。

工事が終了したことを告げるために、大嶌は反町の携帯の連絡先に連絡する。
しかし、流れたアナウンスは衝撃的なものだった。

「ピー、この番号は現在使われていません。番号をお確かめになりもう一度お繋ぎください。」

大嶌は「えっ、まさか!?」と思い電話がつながるであろう、反町の所属先の湊法律相談事務所へと連絡をするが、女性の事務員から想定外の答えが返ってきた。

「3日前から無断欠勤をしています。こちらからも何度か反町には連絡はしていますが、反町の携帯の番号が使われていないのアナウンスだけで、どこにいるのかが分からなくなってしまっている状態です。LINE電話もしましたが結果は同じでした。自宅にも行ってきましたが鍵は施錠されており、また車はありませんでした。」


その言葉を聞いた大嶌は「それじゃ、反町さんはどこに行ってしまったのかがわからない、行方不明状態ということですよね?」と再度確認をすると、その女性事務員は「反町の母親からも連絡をしてもらいましたが、結果は同じでした。別れた奥様にも聞きましたが結果は同じでした。連絡先が変わる報告は一切受けておらず、LINE電話も繋がらない状態だったため、”行方不明”と断定して、警察に捜索願を提出したところです。現在も分かっていません。」と単調な口調で語りだした。

大嶌は「あの、我々は反町さんから工事の受注を請け負っていまして、反町さんから工事が終了すればお金の支払い方法などについても改めて連絡をすると伺いました。行方不明になられてはこちらも困ります。何か反町さんが行きそうな場所など心当たりはないんですか?」と訊ねてみるも、女性の事務員は「申し訳ありません。これ以上のことはお答えをすることが出来ません。失礼します。」といって電話を切った。

大嶌は反町がお金を払うのを嫌がって逃げたのではないかと思った。

しかしそれならば何故電話番号までも変える必要性があったのかが疑問であり、また新しい連絡先を家族に知られたくない内情があるとしたらそれが何なのか。

地主である染澤セツさんの話を聞いたぐらいで、反町自身のことについては何も聞いては来なかった。それだけにどうすればいいのかと頭を抱え込んだ。

そんな様子を見た山嵜が大嶌に話しかけた。

「期待は薄いですが、あの弁護士って年齢37か38ぐらいの見た目でしたから、案外Facebookとかやっているかもしれませんよ。アプリで位置情報の許可をしていたら追跡が出来ますよ。」

思わぬ話に、大嶌が食いついた。

「そんなことができるのか!?」

山嵜は大嶌の反応をみて、こう話した。

「出来るかもしれませんってだけの話ですよ。ウィルスバスターとかNortonのようなセキュリティのアプリをインストールをしていてキツめの設定をしていたら警察関係者じゃないと追跡が出来ないんですけど、そうでなければ出来ます。Facebookなんて名前すら分かれば検索出来ますからね。」

山嵜は大嶌に話すと、早速自分のスマートフォンを取り出し、Facebookで検索し始めた。

「社長、ありましたよ。反町淳史でしたね。多久市出身、多久市在住。最近の投稿履歴は、6日前の9月5日にTwitterからの投稿ですね。内容を見てみましょうか?」

そう話す山嵜に大嶌は「ありがとう!頼む!」といってお願いをした。

2人の様子を見ていた木藤がちらっと、山嵜の後ろからちらっと見ていた。

木藤は山嵜に「社長と二人で何しているの?」と話しかけたところ、山嵜は「あの反町って弁護士の行方が分からないかどうかと思ってね、SNSで追跡が出来ないかと思って調べているんだよ。」と話した。

大嶌、木藤、山嵜の3人で反町の細菌の投稿履歴から9月5日にアップロードをされたTwitterでの画像を見ることにした。

「今日は日曜日!仕事も休みだヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪蟻尾山に登山にやってきました!空気が気持ちよくって最高ですね!!最高です(*'ω'*) #蟻尾山 #登山」

山嵜が思わず「このツィートじゃ何もこれと言って変哲な物はないですね。」と言い放つと、木藤があることを感じた。「蟻尾山ってさ、自殺の名所でも知られているところじゃないか。まさかと思うがここにきている可能性って考えられないか?」と話し出した。その話を聞いた大嶌は「そんなもん、自分の死に場所を最初からツィートしてお知らせするぐらいなら、もっと違う場所を選ぶと思うけどな。」と話したその瞬間だった。大嶌組の事務所に警察から電話がかかってきた。

警察から電話がかかってきたとを大嶌に伝えるため、一報を受けた事務員の緑川千尋が大嶌の携帯に連絡をして大嶌が急いで現地へ向かうことにした。

大嶌の慌てる様子を見て木藤と山嵜が口を揃えて「どうしたんですか?」と訊ねた。

「反町さんが首を吊った状態で三瀬峠で見つかったそうだ。遺体の足元には”大嶌社長へ”と書かれたボストンバッグがあり警察が中身を開けたら大嶌社長に宛てた手紙と現金2000万円が入っていたそうだ。そのことについて警察がわしに聞きたいと連絡があったみたいだ。急いで警察に向かわなければいけない。」

大嶌がそう話すと足早に佐賀市内へと来るまで向かっていくのだった。

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