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二 極秘政策

「かって、トランプが口を滑らせぬか冷や冷やしたが、危機は乗り越えた。
 これからは、我々の生物科学が世界を支配する・・・」
 合衆国大統領ジョージ・ジャクソンは、執務室に呼んだ副大統領トーマス・ファイマンにそう言い、話をつづける。

「中国に端を発したウィルスは全世界に広まり、皆が、ウィルスの起源を自然発生的だと思っているため、あらゆる国でウィルスに対する取り組みがなおざりになっている。
 先進諸国の政府にも国民にも、ウィルスが危険な代物で国家の存続を左右すると考える者は非常に少ない。
 このことが何を意味しているか、君はわかるかね?」
 大統領は副大統領に返答を促すように見つめている。

「・・・・」
 副大統領は大統領が言わんとすることは分ったが、答えなかった。

「なあ、トム。気楽に話していいんだ。ここには私と君しかいない。
 今日の仕事は終りにして、一杯飲みながら、話そう」
 大統領はみずから隣室のバーカウンターへ行って、ウィスキーグラス二つと年代物のスコッチウィスキーを持ってきて、副大統領がいるソファーテーブルにおいた。

 ソファーに座った大統領は、グラスにウィスキーを注ぎなからつぶやいた。
「ウィルスは感染するたびに変異する。
 ワクチンや薬を作っているあいだに変異する。
 感染が拡大すれば、医療体制は対応できなくなる。
 ウィルスの発生源が自然界だと思って、人々は免疫ができるのを期待する。
 しかし、ある人種の遺伝子でウィルスは爆発的に変異し、急速に感染する。
 その結果、ある人種の国家が滅ぶ。
 ウィルスの発生源が自然界なら、国家の滅亡は疑われない・・・」
 大統領は、ウィスキーを満たしたグラスをソファーテーブルの副大統領の前に置いた。

「私は君に、時期の副大統領にもなってもらいたいのだよ・・・」
 大統領は、私の意を理解するならグラスを空けてほしいと思いながら、副大統領を見ている・・・。

 副大統領はグラスを取った。
 ウィスキーを飲めば、十数億の人間の殺戮を承諾したことになる・・・。
 飲まなければ、極秘政策保持のために、私は抹殺される・・・。

(了) 


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