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02 天敵

 橙の髪を肩まで伸ばした、エネルギッシュな同輩。名をナルコトのネーク村のマリア(マリア・ダ・ネーク)。俺の腐れ縁で教会兼孤児院兼学校で年長をやっていた奴だ。

 すらっとしていて足も長くて顔も良いがお節介過ぎるのと敬虔なアスティ教徒であるのが玉に瑕。あと貧乳。隠れている俺を見つけるのが特技。

 マリアは一ヶ月前に隣街の酒宿屋に雇われ、住み込みで働いている筈で、ようやく天敵から逃げ(おお)せたと安心したのに、なぜ戻ってきた?!

「なんなのよもー、ここはワタシの家でもあるんだから、そんな天敵(あらわ)るみたいな顔しなくても良いじゃない?」
「分かってて言ってんなお前……」

 聞くとマリアは高度な統計学を学ぶ為に帰省を兼ねてたまに帰ってくるという。

 というかなんなんだ、こいつの怪力は?! 鍛えている俺をこうも容易く引き摺るとは。一ヶ月前より力付いたんじゃね?

「お前の二の腕の筋肉、やばいな」

 瞬間、何を言ってもがっしりと首根っこを掴んで緩むことのなかったマリアの手がパッと離された。

「~?! ワタシが女の子らしく無いと言いたいのかな?!」
「確かにお前おっ……なんでもねえだから指鳴らすの止めろ! それじゃな」

 拘束が外れたチャンスを逃すはずもないので逃走を試みる。逃げ足だけはマリアに勝ってたからな。後ろを振り返る。恐らくマリアは既にバテてーー

「逃がさないよ、ビル君?」
「付いてきてる速っ?!」

 居酒屋の看板娘っていうのは、力が付いて足が速くなる仕事なのだろうか?!

「だとしたら俺も興味あるが!」

 実は俺はマリアの働いている宿で内定をもらって、いつでもおいでと言われているのだ。

 もちろん先生には言っていない。これがバレた日には、やりたくもない仕事をやらされるに違い無かったからだ。

 意外なことに、マリアも先生に告げ口しないでくれているようで、今のところそんな事態にはなっていない。

 とか考え事をしていたのが悪いのだろうか。いつのまにか前方に先生の姿が。Why?!

「せんせー、連れて来ました」

 そうか、行き先をマリアに誘導されたのか! 居酒屋の看板娘というのは力が強くなり足が速くなりさらに頭の回転すらも速くなる仕事だったらしい。

「そんな看板娘あるかっ!」

「ありがとう、マリア君。さて、今日こそはお祈りに参加してもらいますよ、ビルド君!」

 とまあこんな無事確保されてしまった俺だった。

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