バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

135話 ドラ肉をバレずに食べさせる。

「かなり練度も上がったし連携も良くなったね」
『にゃ』

 レジスタンス設立宣言から数日。帝国兵とエルフの混成パーティに、アインさん配下の騎士団や迷宮攻略組のパーティも数組加わっての合同訓練の最中。
 元々軍人なので帝国組の戦闘の技量は問題無いように思える。そこに後衛主体のエルフが加わって、とてもバランスが良くなっている。エルフの中には治癒魔法を使える人も結構いて、多少の無理が効くためか強くなるスピードが速い気もするわね。

「マギ・ガンは弓矢程風の影響を受けないから、もっと素直に狙っていいっすよ! ああ、そんなに山なりに撃っちゃダメだって!!」

 レン君はマギ・ガンの射撃訓練の教官をやってる。
 気の遠くなる程長い間、弓矢での戦闘に慣れ親しんできたエルフには銃の特性が今一つ馴染みにくいみたいね。でも慣れてしまえば圧倒的なアドバンテージを得られるから、どうあっても使いこなしてもらうって意気込んでたよ、レン君。

 あたしもタンク役として訓練に参加してたんだ。前衛のアタッカーを三人相手にして、完封しちゃったのを見たタンク職の人達が集まって来て質問攻め。

「タンクっていうと、どうしても重装備で敵の攻撃に耐えるってイメージじゃないですか? でもあたしはレザー素材で敢えて軽装備、攻撃を受けるだけじゃなくて躱す技術も磨いて来たんです。あたしは『ドッジ・タンク』って呼んでますけど」
 
 ただ攻撃を受けるだけじゃ、そのうちタンクとしての耐久力に限界がきちゃう。でも攻撃を受けずに躱すことで経戦能力が上がるのよね。そのための軽装備。
 でもあたしは、軽装備にするなら迷宮中層ボス以上の素材を使う事をオススメする。最低ラインが第三階層のオークキング素材ね。普通のレザー装備じゃやっぱり防御力に不安があるもんね。

「この辺境伯領の騎士団や軍の標準装備も、徐々に重いプレートアーマーからオークキングのレザーアーマーに切り替わってます。『なんだ、革装備かよ。下っ端じゃん』って事ではないので注意してくださいね?」

 ほうほうとあたしの話を聞いて感心する人達。その中の一人がさらに突っ込んで聞いて来た。

「嬢ちゃんの装備は普通のレザージャケットにしか見えねえんだが、それもオークキングなのかい?」

 フフフ……よくぞ聞いてくれました!

「あ、これはドラゴンですっ! こう見えて、並みの攻撃は物理も魔法も通しません! 皆さんも迷宮最下層の邪龍をブッ倒して、素材をイングヴェイ工房に持ち込めば作って貰えますよ?」

(出来るかっ!)

 うん、今すごいみんなの心の声が聞こえた。

「やあ、シルト。どうだい?」
「相変わらず中年殺しだねぇ」

 メッサーさんは魔法の効果的な運用、お姉ちゃんはアタッカーの指導に行ってたんだけど、一段落したのかな? って言うかお姉ちゃんうるさいっ!

「大分良くなってますね。ただ、やっぱり金属装備は音が気になるので、革装備に変更したい所です」

 あたしのいう事を聞いたお姉ちゃんはちょっと困ったような顔をして言った。

「やっぱりかぁ。でも工房も銃関係で忙しい上に、レジスタンスの構成員の基本装備も用意しなくちゃいけないってんで、フル稼働らしいんだよね」
「領都の鍛冶師ギルドや錬金術ギルドにも応援してもらっているんだがね」

 そして、メッサーさんも製造側の負荷の高さを指摘する。ほえ~、やっぱりすぐっていう訳には行かなそうね。

「あ、レン君達も戻って来たみたいですよ」

 そこにレン君とヒメが連れ立ってこちらに向かって来た。

「おつかれーっす」
「お疲れ様です」

 ヒメはアインさんやセラフさん、それにコルセアさんと組織運営の打ち合わせだったみたいね。暫定でこの迷宮自治区の責任者はアインさんって事になってるらしいわ。

「ねえ、メッサーさん。レジスタンスのメンバーにドラ肉振舞っちゃダメっすかね?」

 レン君、あたしもそれ思ってたんだけど。

「それはちょっと……あれだけの恩恵がある肉を普通に食べさせるのはどうかと思うんだが……」
「ドラ肉だってバレなきゃどうです?」
「ん? それこそ無理じゃないか? あれだけの美味い肉を食べたら誰でも肉の正体を知りたがるだろう?」
「それについては考えがあるんです」

 へえ? 聞かせて貰おうじゃないのさ。レン君の秘策を!

*****

「これらの肉をミンチにしてくれるか? で、割合は3:3:4で」
「おいおい、こんなに上等な肉をミンチにって……一体どうすんだよ?」

 俺が準備したのはミノタウロスの肉。それからオーク肉。で、ドラ肉だ。
 何となくほら、ミノ肉とオーク肉って、牛豚の合挽肉になりそうじゃん? 
 俺がやろうとしてるのはハンバーグ。ほら、ドラ肉と悟られずに食わすには挽肉にして別な肉と混ぜちまえばいいかなって。
 もちろん、ミノ肉もオーク肉も味は特上だから、ハンバーグと言えどもとんでもなく美味いはずだ。しかもドラ肉四割配合だしな。

「……なるほど、ミンチした肉をステーキっぽい形にする訳か。こりゃあ面白いな。しかも何て言うか……肉が滅茶苦茶うめえ」
「だろ? こねる時にスパイスを混ぜたりするとより美味くなるし、中にチーズを入れたりとかもできる」
「おお、これは余計な調味料は逆に邪魔になるかも知れねえ」

 アレンジという点では、普通にステーキとして食うより面白みがあると思うんだよな。

「で、こいつを三百人前、頼むよ。晩飯までに」
「なんだとおお!?」

 ははは。悪いな、おっちゃん。これも帝国の野望を潰す為、そしてここの人達を守る為。戦いに赴く者達が少しでも生き残れるようにする為なんだ。

*****

《なんだこの食いモンは!? めちゃくちゃうめえぞ!》
《おい、こんな美味いモン食わせやがって! 俺達死ぬのか!? 明日死ぬのか!?》

 すっごい勢い。確かにこれは美味しい。ドラ肉混じってるのも上手くカモフラージュされてるね。

「これはレン君の世界ではポピュラーな食べ物なのかい?」
「そうですね。家庭によって頻度の差はありますけど、馴染み深い料理ではあるかな」

 ギルド支所、いや、迷宮自治区になってからは冒険者ギルド迷宮支部に格上げされたギルド施設の訓練場で、レジスタンス組織の関係者をメインに異世界レシピのご馳走を振舞っている。

「うふふ、明日のリアクションが楽しみですね」
「まあな。でもこの規模で振舞うのはコレっきりな。厨房で料理人のおっちゃん達燃えカスになってたから」
 
 三百人分の肉をミンチにしてコネコネしてぺったんぺったんして焼いたとか……料理人のおじさん達に合掌。

しおり