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108話 レン、教官に?

「ああ、それならここをこうすればいいんじゃないっすかね? コルセアさん、出来ます?」
「はぁ、なるほどね! これなら行けそうね!」
「それじゃあここにマガジンをセットして、ここから魔力回路を分けてやればいいって事か?」
「そうです。単体のライフルを二つと考えると面倒ですけど二連装砲、つまり出口が二つある一体物と考えれば」

 少し遅めの夕食の時間、関係者がギルド支所の食堂に集まって食事をしながらの歓談タイムになっている。一応、領軍と騎士団、冒険者ギルドの銃の運用案の報告を聞き、イングおにいとコルセアさんから現状できる事、今後の発展の可能性などの報告がなされた。

 双方からの報告を終えて現状の把握が終わると、今手掛けている装備へと話題がシフトしていく。そんな中で、あたしのアブソーバー改に装着した二挺のライフルの話題になった途端にレン君が食いついて、冒頭の状態になっている。

「やっぱり男の子ってああいうの好きなんですね」

 熱の入った様子のレン君達を見て、なんとも柔らかい表情で微笑むヒメ。

「あたしも興味あるよ? 自分が強くなるための物だからね。新しい装備が出来る時なんて凄くワクワクするし!」

 ここで食事が始まる前に、ヒメとレン君にドラゴン装備が手渡された。あたし達とお揃いのジャケット、インナー、パンツにブーツ。それにレン君はマント、ヒメにはローブ。そしてマギ・ガン用のホルスター。ジャケットだけは色違い。メッサーさんの青、お姉ちゃんの赤、あたしの白。それと被らない色を選んでくれた。レン君は黄色。ヒメは若草色。

「みんなそれぞれ好きな色を選んだのに、偶然か必然か、親和性の高い魔力の色になったね」

 お姉ちゃんがそんな事を言うから、あたしに視線が集まる。
 白って何? どゆこと? そんな視線ね。ええ、分かるわ。あたしも自分の魔力が属性なしって言われた時にどゆこと? ってなった。

「あははは……あたし、どうも属性無しみたいなんですよ……」

 今日、工房であった事を掻い摘んで説明したわよ。属性調査の魔道具の色が一切変化しなかった事とか、魔道具を起動させるのに今までとんでもない魔力を注ぎ込んで力尽くでやってたとか。しかも無知ゆえの無意識で。

「なるほど。有り余る魔力を持ちながら、精霊との親和性が全く得られず魔法を使えないとは……しかし、そう悲観する事も無いのではないか? 世の中には魔法を使えない人間の方が多い。それでも強い人間はたくさんいる。現にシルトは現状でも努力と創意工夫で冒険者としては頂点に届こうとしているではないか」

 うう……ありがとう、アインさん。

「そこでね、我が可愛い妹が、無属性でもできる必殺技を考えているんだよ。ほら、レン君の不可視の刃(ステルス・エッジ)。あ、属性魔法になる前の段階のやつね。あれの、打撃版」
「うん。お姉ちゃんの言う通り。明日からは魔力を練る修行をするんだよ!」

 そう、アブソーバー改はもう少し時間が掛かりそうだし、モーニングスターもそうだ。だからあたしは訓練に時間を費やす事にしたんだ。

「あのさ、シルトは修行とか言ってるけど、誰に教えて貰うんだ?」

 そんなレン君の質問にふと考える。
 うん? そりゃお姉ちゃんかな。メッサーさんは工房の店番とかしてるし。そこで、お姉ちゃんがレン君に答えた。

「そりゃあボクが教えるさ! ボクって結構天才だし? 何よりお姉ちゃんだからね!」
「ちなみにラーヴァさん、どんな感じで教えるんです?」
「ん? そりゃ基礎からだよ? まずは精霊を感じるためにこう、ぐわーーって集中してどばーーっと……」

(天才の教え下手だこの人……)

 今、レン君のつぶやきが聞こえた!

「あのー、ラーヴァさん? シルトは無属性なんだから精霊とか感じるもなにも……」
「――はっ!?」

 お姉ちゃん……忘れてたわね? ほら、目を逸らさないで?

「シルト。良かったら俺が教えてやろうか?」
「え? レン君が?」
「ああ。異界人だからこそ、なのかな。気付いた事があるんだよ。指導自体は多分十分やそこらで終わる。あとはシルトの想像力次第で成長が決まる」

 そんなレン君の言葉に、食事や会話のを中断して、みんなの視線が集中した。

「ほう、興味深い。私も聞いてみたいな」
「それ、私達も見学させて貰ってもいいかな?」

 メッサーさんとアインさん達も興味をひかれたわね。もちろんあたしも気になるわよ。短期間で不可視の刃(ステルス・エッジ)を体得したレン君の言葉だもの。

「まあ、それは構いませんけど……この世界で魔法を学んだ方に、どれだけの刺激を与えられるかは分かりませんよ?」
「居合という剣技と雷撃魔法を融合させ、必殺技に昇華させたレンが言うのです。私にも学ばせて下さいな」
 
 ヒメも修行に付き合うことになりそうね。
 結局、魔法とは無縁のアインさん、リャンさん、ミィさん、セラフさん、イングおにいまで見学にくる運びに。つまり、ここで食事を共にしているメンバー全員という事ね。
 十分程度っていう時間だから、仮にレン君の指導で効果が出なくても、大したロスじゃないって事も理由なのかな。得られるものがあれば儲けもの、くらいの気持ちで。

「それじゃ、明朝ここに集合って事で」

 こうして、レン君の講義が開催される運びとなった。

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