バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

71話 仲間になりたそうに……

 ドラ肉の焼ける匂いに釣られてやってきた、哀れなオークの一団をサクッと片付けてみんなの所に戻ったあたしなんだけど……

「えっと……なんでしょ?」

 姫様とレン君の視線がアツいの。

「この二人がフォートレスを雇いたいらしくてね。シルトが戻るのを待っていたんだ」

 ニヤニヤした顔でメッサーさんが言った。雇う? 王国に脱出した後もって事かしら?

「あの~、とりあえず事情を……」
「……助けたいんだ」

 レン君が苦渋に満ちた表情で、絞り出すように話し始めた。

「俺の目的は逃げ出す事だった。姫さんの目的は、最終的には皇帝のおっさんを止める事だった。国のトップの悪巧みをぶっ潰そうってんだ。姫さんだけじゃ無理だから、俺の目的は姫さんを助ける事に変わった」

 うん、レン君って正義感強そうだし、困ってる人を見捨てられないっぽいよね。好ましい性質だと思うよ。

「けど、俺だけじゃ姫さんを助けらない。事実、俺達はあんた達に助けられてここにこうしている訳だ。それで、シルトさん。あんたのスキル、『リセット』なんだけど……姫さんを元に戻したあの力が必要なんだ」

 うん?

「皇帝をぶっ飛ばして勇者召喚を止めさせる事なら、どこかに潜んで力を蓄えればいつかは出来るかも知れない。姫さんの目的はそれだ。でもさ、それだけじゃあ解決出来ない問題が一つある。普通なら、どうしようもないと諦める様な問題なんだけど、シルトさん」

 えっと……? そんなにじっと見つめられると、ちょっとドキドキしちゃうんですけど!?

「あんたの力で救って欲しいんだ。俺と同じく召喚され、スキルを奪われ廃人同様になっちまった連中を。あんたの力なら出来ると思うんだ」

 あー、そゆことね。でもそれって、敵の本拠地に乗り込むって事じゃない? 
 って言うか、まだ生きてる人がいるのね!? なら助けたいよね。望まぬ召喚に巻き込まれて異界で廃人同様になって……可哀そうすぎるもの。そしてレン君! あたしのドキドキを返して!

「メッサーさん。お姉ちゃん。あたし、異界の人達を助けてあげたい。本当のお父さんが異世界人なら他人事じゃないもの」

「シルト。冒険者が依頼を受けるんだ。対価が必要なのは分かるよね?」

 あー、うん。それは。
 でも、こんな依頼に、どれくらいの報酬が適当なのかわかんないよ……

「どうも、必要とされているのはシルトのスキルみたいだし、シルトが報酬を決めたらいいよ。ボクらはそれに従うさ」

 ……お姉ちゃん。またそんな意地悪を言うし。

「シルトさん。今の私達にはお渡しできるものはありません。ですがどうか! 私に出来る事なら何でも致します!」

 姫様の縋る様な目つき。これにレン君も篭絡されたのかしら? でもまあ、何でもするって言うのならやって貰おうかな? えへへ……

「それでは! 報酬……というか条件ですね。ぶっちゃけあたし達、お金にはそれ程困っていないので、そういう物は出来る範囲で結構です。でも、お二人にも体は張ってもらいます」

 身体を張る。その一言で、レン君と姫様がゴクリと生唾を飲み込んだ。
 姫様は皇女としての立場を捨てて、レン君と一緒に冒険者になってもらう。それがあたしから提示した条件。
 ある程度の段階までは、あたし達が助けてあげる事はできると思うの。でも、将来的には帝国をどうにかしようって話になってくるはず。当然よね。皇帝を打倒するのも目的のひとつになっちゃってるもの。
 そうなった時に、姫様とレン君、二人にもちゃんとした力が必要になってくる。だから、あたし達について修行してもらう。

「姫様は現時点で、帝国の皇女ではなくなりました! 今からあなたは見習い冒険者の『ヒメ』です!」

 これが飲めるかしら? 立場を捨てて冒険者になる。その覚悟を見定める。
 そしてレン君! オーガ如きに瀕死になってるようじゃまだまだよ、!

「私が冒険者……? あは……ヒメ、ですか……ヒメ……」

 うん? ヒメが仲間になりたそうにこっちを見ている。

「はいっ! ヒメですね!? 私、見習い冒険者のヒメです! 宜しくお願いします!!」
「姫さん……いや、ヒメに異存がないなら俺もそれでいいよ。よろしく頼む」

 二人とも、まさかの全面受け入れですね……

「ふふっ、欲が無いな、シルトは」

 今までの流れを黙って見ていたメッサーさんが、肩を揺らしてくつくつと笑っている。

「はぁ~、それではですね、国境を抜けたら、まずは迷宮街で冒険者登録をしてランクを上げて貰います。三級以上じゃないと迷宮には入れませんから。あ、領主様の所にも行くんですよね? それは迷宮街にアインさんがいるかどうか、確認してからにしましょう! メッサーさんも早くイングヴェイ工房に戻りたいですよね?」
「あ、ああ。そうだな。早く会いたいな」

 もう! そんな頬を桜色にして! 可愛いんだから!

「そういう事なので、こんな山はとっとと越えてしまいましょう! ヒメの足甲は脚力上昇のおまけ付きです! レン君は頑張って遅れないようにして下さいね!」

 結構なペースで進んでいる。レン君虫の息。少し休憩してあげようかな。歩調を緩めて雑談タイム。

「なあ、フォートレスには俺達も入れてくれるのか?」

 そんなレン君の質問に、メッサーさんが苦笑交じりに答えた。

「そうだね。そのつもりだけど、君達は実力はともかく、冒険者としては最下級からのスタートになる。今は特級パーティだが、君たちの加入でおそらくランクは下がるだろうな。頑張って、早く昇級してくれると嬉しいかな」

「あ、それから、レン君はいろいろ覚悟しといた方がいいよ? ほら、ボク達見た目いいでしょ? 傍から見ればレン君ハーレム状態だから。きっと男どものやっかみ凄いよ?」

 そしてお姉ちゃんの警告。

「実際にはパーティーの最下層ですけどねっ★」

 更にはあたしからの追撃。

((またシルトはそういう事を……))

 あれ? お姉ちゃんとメッサーさんの視線が痛いな……

「え? 俺ってそういう扱い!?」

 いつもはいじられるあたしが、いじれる貴重な人材ゲット! たっぷり楽しまないと!
 

しおり