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販売合戦のはずが、リアルで戦闘が始まりました(後編)

 ラスボスを前にしたボクらに、工場長が口の動きで何かを伝える。

 それでユーさんは理解したようだが、ボクにもピンときた。
 
 ついに使ってしまうのか、あの伝説の神具といわれる“十二支衆”を。
 ボクも何度かユーさんと工場長の特訓に付き合っているが、その幾つかは他国と戦争が出来る兵器と言っても過言でない威力だ。
 まさか使うことになるとは。
 まあ、今使わずにいつ使うんだという話だが。

 最初に開放するのは十二支衆第一番“()”。
 目に見えない程の細かい無数の銃弾が、目の前の巨体の敵に突き刺さる。
 この神具の凄いのは、攻撃する対象を指定できること。巨体精霊には無数の穴が開いたが、囚われている女性たちは無傷だ。

 しかし巨体精霊は動きを辞めず、姫たちの拘束もそのままだ。
 ちっ、術式の核か印が粉砕されたら機能が止まると思ったんだけど。

 続けてユーさんが開放するのは十二支衆第六番“()”。
長細い物が伸びるまでは、ユーさんが普段使用してる鎖の神具や敵の触手とさほど変わらないが……伸ばしたのは、蛇。
 その先に牙があり噛まれた相手は毒の効果を受ける。
 この毒というものが曲者で……

「あっ、声が出るようになった!」
「よ、良かったですっ!」

 既に毒を受けてる者に対しては、解毒させる効果もあるのだ。
 ユーさんは過去の事件で解毒に苦しみ、意識まで失ったくらいだから欲しかった神具だろう。

 続いて十二支衆第九番“(サル)”。爪のような光の効果とともに姫たちに巻きついた触手が切り裂かれ、解放された。
 当然、人体は無傷。ただし……

「み、見ないでくださいっ!」

 声を上げるスズちゃん。
 流石に衣服まで無傷とはいかなかったらしく、裂かれた部分から下着が露出していた。

「さあユーちゃん。もう憂いはないわ、やっておしまいなさい!」

 工場長の言葉にユーさんは敬礼し、十二支衆最大の破壊力を持つ第五番“(タツ)”を放つ。

 全てを焼き尽くす灼熱の業火。
 巨体の存在は、背後の壁ごとその場から完全に消滅した。
 そして無事事件が解決して、喜ぶ僕らだったが。

「助けてもらってありがとうございます、と言いたいところですが」

 那古野萬台放送( ナゴヤバンダイホウソウ)、通称"ナバホ" の活弁士、時任チタンさんの表情は固い。
 そしてユーさんに歩み寄ると、その頬を平手で叩いた。

「貴方が余計な事をしなければ、そもそも危険な目に合うことも無かったですよね。私も、同僚さんも」

 いや、それは違う……と事情を知っているボクらが口にするより前に。

「失礼します」

 とチタンさんはその場を後にしたのだった。

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