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初デートと、仲の良かった姉妹・1

 次の日、事件は朝からやってきた。
 実際事件と言うには大げさかも知れないが、本人以外は大騒ぎであった。

 あの茶髪の長髪が自慢のナマリさんが、肩口まで髪をバッサリ切り、髪色も黒に染め直していたのだ。
 その姿に誰もが声をかけあぐねていたが、

「あれナマリ、あの茶髪ってたしかイモぐふッ!」

 空気を読まないメッキくんが声をかけ、脇腹に肘鉄を食らわされていた。
 イモ?

 そしてユーさんと目が合うと、顔を真赤にしてうつむいた。
 以前からユーさん好き好きを公言していたが、ここまで露骨に照れるのは初めてだ。そして態度が、恋する乙女だ!

 そんな彼女に何やらユーさんが耳元で声をかけると顔を上げ、満面の笑みを浮かべた。

「おっ、ナマリおねーちゃん良かったネ!」

 すっかり仕事の相棒として仲良くなったシロガネさんの子供テルルちゃん(五歳・少女に見えるが男)がナマリに声をかけ、彼が両手を上にあげるとその位置に手を合わせて叩く、いわゆる”ハイタッチ”の状態になった。
 テルルちゃんは事情を知ってるということか。ナマリさん本人に聞いても良いんだが……さてどっちに、と思ってると。

「あら、似合ってるわよナマリちゃん。それに、助言どおりにして正解だったみたいね」

 と、工場長。もっと内情に関わってる元凶がそこにいた。
 
            ↓ ← → ↓

 そして放課後、前回メッキくんの時にも行った第二回初でぇと尾行が開始された。
 尾行する相手はナマリさんとユーさん、追いかけるのはボクと工場長、メッキくんとスズちゃん、あとテルルくん。

「仕事のちょっとした合間にね、ユーちゃんに聞いたのよ」

 と、工場長が切り出す。

「どんなタイプの女性が好みか、ってね。ナマリちゃん本人は聞きにくそうだったから」
「それであの髪型ですかっ。好きな相手とはいえ、ずいぶん思い切ったんですね」

 工場長の言葉に、スズちゃんが声をあげる。

「でも、良いんスかねぇ」

 メッキくんがそう言って首をかしげる。

「ナマリが今まであの茶髪だったの、妹さんの影響だったんスよね」

 ナマリさん妹がいたのか、それは初耳だ。

「妹さんに影響されて髪型合わせるって、相当仲が良かったんですね」

 何気なく口を開いたボクだったが、

「うん……まぁ、そうっスね」
「仲が、良かったわよ。昔は」

 メッキくんと工場長が言いよどむ。どうも聞いてはいけない地雷に触れてしまったらしい。
 ボクも気まずくなって尾行相手の方に目を移すと。

「いやいや、うち絶対こんな服似合わねぇべさ!」

 嫌がるナマリさんを、ユーさんが珍しく押している感じだった。

「イヤイヤ言いながらも目が笑ってるわよナマリちゃん」
「乙女心は複雑デス」

 工場長の言葉に、テルルくんが相槌を打つ。キミ、何時の間にそんな言葉覚えたの?

「でも多分似合うと思いますよっ」

 スズちゃんが口をはさむ。

「普段のナマリさんの私服、髪型もですけどあの有名な歌姫さんみたいで、それはそれで似合ってると思いますけどっ」

 有名な歌姫?ああ、トモちゃんこと水木朋(ミズキトモ)か。
 そう言えば、ナマリさんの普段の格好って髪型にしろ服装にしろ彼女を意識してる気がする。
 わざと破けた跡をつけた腕や脚の露出の多い、蜘蛛や髑髏といった毒々しい模様のきらびやかなアクセサリーを多くつけた格好。

「なるほど、姉妹揃ってトモちゃんのファンって事なんだ」

 ボクはそこでようやく納得した。

 国民的に愛された歌姫だった(・・・)、水木朋。
 確かボクが好きな異世界時代劇の主題歌も歌っていた気がする。
 数年前、不慮の事故で彼女は命を落とす事になるのだけど。

「という事は、トモちゃんの死がナマリさん姉妹の仲が悪くなった事に影響してる?」

 という推測をボクなりに立ててみたのだが。

「えーと、それはっスね……」
「んー」

 メッキくんと工場長の反応から察するに、どうも間違っているらしい。
 そしてボクたちが目を離しているうちに、ナマリさんは服を着替えていた。
 それはユーさんが選んだ服で、清楚な白のワンピースであった。

「ほえー、ユーさんこういうのが好みなんですねっ」
「今までのナマリを知ってると違和感しかないっスけどね」
「何言ってるんですかニケくん!素朴なナマリさんによく似合ってるじゃないですかっ!」

 スズちゃんとメッキくんが軽く言い争いを始めた。
 というか、今サラッと流したけど……

「ニケ……くん?」
「あっ!」

 スズちゃん本人も気づいて、耳まで真っ赤になってうつむいた。

「ほー、ニケくんねぇ。メッキちゃんを愛称で呼ぶぐらいには仲が進展してると」

 工場長が嬉しそうにそう言い、さらにスズちゃんは恥ずかしさで小さくなった。

「ちなみに、メッキちゃんは今スズちゃんを何て呼んでるの?」
「え、”スズさん”スけど。一応年上っスから」
「おいヘタレ、今度から”ちゃん”付けで呼びなさい。あるいは、呼び捨て」
「いやいやっ!それはちょっと、自分にはハードル高いっス!」

 工場長の提案を露骨に嫌がるメッキくん。
 初でぇとから二ヶ月が経過したが、こっちの二人の仲の進展はまだ先になりそうだ。

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