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旧小峰トンネル(東京・八王子市)

 
挿絵



打越橋を後にした一同は次に向かう最終ロケ地の旧小峰トンネルへと向けて車を走らせていた。三日間にわたる心霊スポットの心霊検証の疲れが段々と拭えなくなっていた侑斗は車の中でいびきをかいて寝ていた。

芦原はぱうちゅと放浪中ちっちと最後のロケ地である旧小峰トンネルで伝わる心霊現象がどんなものかを確認するため、心霊スポットとして噂されている霊障と思われる現象と今回番組として心霊検証をしたい案件について協議をしあっていた。まず芦原が放浪中ちっちに「いよいよ最後ですね。東京の数ある心霊スポットの中でも非常に有名な化けトンじゃないですか。ここは元々は老婆の霊が出てくることでも知られていたそうですよね。それがある事件を境に少女の霊が出てくるといつの間にやら事件があったことがクローズアップされて更に話題になってしまったところですね。」と話し始めると、放浪中ちっちは「そう。でも謎が残るのよね。」と語り始めると、ぱうちゅが「その謎って一体何なんですか?」と聞き始めると、放浪中ちっちが「事件で有名になる前はタクシーの運転手がこのトンネルに差し掛かるカーブを過ぎたあたりでバックミラーを確認すると女性が立っていたという。ドライバーは女性の存在に気付いて車を急停止して後ろを振り返ったところ、人影など何もなかったが再度改めてバックミラーを覗いてみるとそこに女の影が映ったとされる。恐怖のあまりにタクシーの運転手がエンジンを全開して逃げたという。果たしてあの時に見た女性の正体とは、という内容で新聞の記事でも取り上げられたことで知られるようになった。それで知名度を上げた理由の一つになったが、さらに全国的に知られるようになったとされるのが、1988年から1989年にかけて起きた東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の第四の被害者が旧小峰トンネルで殺害され、遺体を遺棄されたことから噂されるようになった。そのため旧小峰トンネルで手首のない幼女の霊が出るという噂があった。だがしかし、噂話の一つでしかなかったということだったらしい。実際の死体遺棄現場は小峰峠の山林で被害者の手足が発見されたのは事実のようだが、旧小峰トンネルと死体遺棄現場とは場所が2kmも離れており、女性の幽霊が出たという話や事件が起きた場所が同じという事もあって、怪談話の一つとして挙げられたのだろう。だがそれを覆すような話というのがあって、内容としては”1989年の春ごろから小峰峠に幽霊が出るという話が出るようになった。幼女が手を振っており、よくよく見たら手首がないというもの。犯人の逮捕後は出なくなったとされている。」と語ると、ぱうちゅが「それってどうなんでしょうね。最初に伝わっていた女性の霊の真偽が事件が起きたことがより大きく報道されてしまったことによって忘れ去られてしまったようにも感じますよね。それに本当の殺害現場ってどこだったんですかね?」と聞き始めると、放浪中ちっちは「そればかりはわからない。調べてみるも、青梅市の旧吹上トンネルだったとか、実際に誘拐した女の子を殺害した現場ばかりは何所なのか公にはされていないので、憶測で言うわけにはいかないので、噂話の真偽を確かめることぐらいしか出来ない。」と語ると、ぱうちゅは「それって難しい事ですよ。事実かもしれないし、デマかもしれない話を実際に行って確かめてきましょうってことですよね。だったら旧吹上トンネルにも行って両トンネルを比較する必要性がありますよ。」と語ると、放浪中ちっちは「そればかりはスケジュールの都合上で旧吹上トンネルには行けない。怪談話にもある旧旧吹上トンネルは老朽化が著しく完全にトンネルそのものが封鎖され、また惨殺事件が起きたとされる居酒屋の跡地は完全に屋外の倉庫のような場所へと変わっているために、果たして殺人事件が起こったのか、その雰囲気すら近くに立ち入ることも完全にゲートで封鎖されているために入ることはできない。なので旧吹上トンネルでの心霊調査を行うしかない。」と話すと、芦原がある可能性について言及をし始めた。

「小峰峠で殺された女の子の遺体が見つかっているのだから、実際の殺害現場が青梅市の旧吹上トンネルで行われたとするのなら車でわざわざ30分走らせて小峰峠で遺棄するのはあまりにも不自然に思える。誘拐して目的を果たしたのなら、手っ取り早く女の子を解放するか、この場合は恐らくだが嫌がった女の子の口封じのために殺害せざるを得なくなった状況にあったと推測されるから、状況から読み取ってもやはり死体遺棄現場がこの小峰峠であることが事実としてある以上、殺害現場が旧小峰トンネルだったと考えるのが筋じゃないだろうか。だから、公にはされていない情報でも”ここが殺害現場じゃ?”という話にもなっているんじゃないのだろうか。」

芦原がそう語ると、ぱうちゅは「ですよね。殺害した女の子の遺体をいつまでもいつまでも車の中に隠すわけにもいかないので、さっさと死体を遺棄したい心境になると思うし、そう考えれば旧小峰トンネルが殺害現場?と思われてもってことですよね。だとしたら謎が謎を生みますよね。実際はどうだったんでしょうかね。」と語ると、芦原が「知っているかどうかわからないが、試そうか?」と切り出すと、ぱうちゅは芦原に「一体何をされるんですか?」と質問すると、芦原は「笠置観光ホテルでわたしと侑斗君と共に除霊の協力をしてくれた星弥君が現役の警察官。県は違うけど有名な事案なので知っているかもしれない。連絡して知っていることは何かないかと聞き出してみようか?」と話すと、放浪中ちっちが「えっ!?あの最初の廃墟Kホテルにだけ同行していた子が!?でも県が違うとどうなんだろう。知っているのかな。聞いてみてほしい。」と不安になりながらも芦原にお願いすると芦原は「わかりました。ただ賭け100%ですからね。知っているかもしれないし知らないかもしれない。それは重々理解したうえで聞いてくださいね。」と語ると、持っていたスマートフォンから星弥の携帯の電話を鳴らすことにした。

芦原は「コール音する。出ない。ああ、30秒以内にメッセージを残してくださいって留守電になった。」と話すと、留守電のメッセージに「芦原です。電話を下さい。」と素早くメッセージを伝えた後に電話を切った。

ぱうちゅが「それじゃ電話をくださいの理由が分からないですよ。」と笑いながら答えると芦原は「えっ、だってもう30秒以内にメッセージをどうぞって女性の声のアナウンスが流れたら、与えられた30秒以内に伝えたいことを伝えようと思ったら慌てるのが自然じゃない。そりゃあ無理だって、話しているうちに切れちゃうよ。」と語ると、芦原が電話をしてから30分ぐらいが経過したときに星弥からの折り返しの連絡がかかってきた。

芦原が素早く電話に出ると、旧小峰トンネルと旧吹上トンネルの連続幼女殺人事件の関連性について率直に聞き始めた。すると星弥から意外な答えが返ってきた。

「旧吹上トンネルは関係ない。怪談話にある家族で居酒屋を営んでいたがある一人の男によって鉈で惨殺された上に、トンネルへと逃げた女の子が犯人によって頭を鉈で襲われた末に亡くなったというのがあるが、あれは嘘。嘘。以前行ったことがあるけど、今は立ち入りが制限されているけど、TV番組の心霊特集で訪れたときにそのかつての居酒屋だっただろう廃墟を見た事があるんだけど事件性など何一つも無かった。改めてこの地を調べると、トンネル工事に携わった父と息子が完成してもこの地が気に入って住み続けたという話があって、住む人がいなくなって廃墟化したのが後々の怪談話のきっかけになったんじゃなかろうかと思う。普通に考えて、トンネルのしかも車でしか行けんようなところに休憩目的の茶屋や喫茶店を営むのならまだしもアルコールを摂取できない居酒屋を営むのは場所的にどう考えてもあり得ない。」

スピーカーを大にして聞いたぱうちゅと放浪中ちっちが聞くと、芦原が「実際に死体が発見された小峰峠なんだけど、殺害現場は旧小峰トンネルになるのかな?」と単刀直入に聞き出すと、星弥は「うーん、わかんない。わからない。」と答えると、芦原は思わず「え!何で知らない!?有名な事件じゃないの!?」とさらに突っ込んだ話をすると、星弥は「遺体を自宅で焼いて食べたとか、猟奇的な一面があったことは知られているんだけど、でも実際に殺した現場まではわからない。家に連れ込んだ末に殺害したとかだろうか。実際の遺棄現場とトンネルは距離もあるし、事件があったことを知った誰かがトンネルの入り口に花束を置いたという事もあって、さらに殺害現場だったのでは?という話が広がってしまったのだと思う。ただ一つ言えることは、犯人は生前によく心霊スポット巡りをするのが好きだったらしくって、それもあってかこういう話が出ても不思議じゃない。現に某有名タレントがDVDの撮影で旧吹上トンネルに訪れた際に”不思議なトンネル”の話をしていて、場所が旧吹上トンネルだと分かっている人は分かるかもしれないが名前が挙げられていないために小峰トンネルと混同視されてしまったきっかけに繋がったのかもしれない。小峰トンネルは自転車や歩行者の通行は可能で金網で封鎖などはされていないし、トンネルで身を潜めていた犯人を警察が山狩りで捕まえたなど、怪談話のエンターテイメントとしては素晴らしいね。作り話をいかに本当にあった出来事のような語り口調で語るんだからね。そりゃあ信じ込んでしまう人もいると思う。でも実際は違う。」と答えた。

その答えを聞いたぱうちゅは「それじゃあ事件があったことは切り捨てて考えたほうが良いってことですよね。」と芦原に訊ねると、その声を聞いた星弥は「切り捨てて考えたほうが良いです。少女の霊が出る可能性は皆無に等しいでしょう。ただ女性の霊が出るという怪談話のほうが信憑性は高いでしょう。」と答えると、安心をしたのかぱうちゅは「お忙しいのに答えて下さってありがとうございます。」と深々とお礼を言うと、星弥は「どういたしまして。」と語り電話を切った。

星弥の答えを聞いた芦原は「よかった。殺人現場がもしここだったら、と思うとちょっとゾッとしたところもあったので、そうじゃないと分かって安心した。」と語るとぱうちゅが芦原に「それはどうしてなんですか?」と聞くと、芦原は「殺害現場のほうが霊のたまり場になりやすい。とりわけこんな、被害者に殺される理由など何もない通り魔的な、理由なき殺人ほど、殺された被害者に同情するようにしてその場にいた浮遊霊さえも引き寄せてしまうぐらいの強い力を持ってしまうパターンが多い。霊が出てくるだろうと思って肝試しをする人も多いのだけど、そういう場所は悪い気に触れることにも繋がりかねないので安易な気持ちで足を運ばないほうが良い。」と話すと、ぱうちゅは「そうなんですね。」と首を振り頷きながら返事をした。

そして一同が乗る車があきる野市内に入ると、旧小峰トンネルへと入る旧道の入り口の付近まで辿り着くと、車を他の交通の邪魔にならぬ場所に停車をさせてから、徒歩で向かい始めた。

旧小峰トンネルに向かうまでに放浪中ちっちから寝ていた侑斗に旧小峰トンネルで心霊検証を行う課題を歩きながら説明を行い、侑斗が理解を示したところでハイキングコースに入るまでにある柵の前まで辿り着いたときにぱうちゅがカメラの前までやって来てVTRの撮影がスタートした。センターにぱうちゅ、左隣に侑斗、右隣に芦原がいるような形で、旧小峰トンネルへと入るための山道をぱうちゅが実況しながらゆっくりとした歩調で歩き始める。

「はい!今回はですね、東京でも非常に有名なもう誰もが知ると言ってもいいぐらいの化けトンにやってきました。旧小峰トンネルですね。ここでは、新聞の記事にも取り上げられました、とあるタクシーの運転手がカーブを曲がり終えた際にバックミラーで後ろを確認すると女性がいることに気付き慌てて急停止を行い女性がいるかを確認したところ女性がいた場所に姿はなく再度バックミラーで確認を行ったところ女性らしき影が映ったことでタクシーのドライバーが恐怖を感じた末にエンジンを全開にしてこの場を後にしたという非常に怖い話があることでも知られています。またこの小峰峠では、1988年から1989年にかけて発生した東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の被害者の女の子の遺体が小峰峠で遺棄されていたという事もあり、益々旧小峰トンネルでは殺された女の子の霊が出てくるのでは?という事でも更に知られるようになりました。実際に犯人が捕まるまでにこのトンネルの付近で手首のない女の子の霊を見たという証言があったぐらいです。当番組が勢力をかけて調べたところ死体遺棄現場はこのトンネルから2kmほど離れた場所にあり、また殺害現場も誘拐した地点からさほど距離がない、人の目がそんなにないところをあえて選んで車を停車させてから誘拐した女の子を殺害したみたいですね。心霊スポット検索サイトで投稿されている情報とは全く異なる内容のものが伝わっているようですので、今回はこの事件についての検証は行わず、タクシー怪談に伝わる女性の幽霊の信憑性について検証をしたいと思います。今回も引き続き饗庭さん、芦原さんに同行をしてもらいます。」

ぱうちゅが予めディレクターが調べてきた情報が記載された台本を読み始めると、芦原が「宜しくお願いします。」と語った後に続いて侑斗も「宜しくお願いします。」とカメラを前に軽く会釈をして、歩いて旧小峰トンネルへと向けて歩き始めた。その間に侑斗と芦原は念のために霊視を行いながら辺りを注意深く警戒しながらぱうちゅの後ろをついていく。

歩きながら侑斗は「山道ならではのカーブがとても多いように感じます。きっと新道が出来るまでは、恐らくですが事故が多発していたようにも見受けられますね。タクシードライバーの前に現れたとされる女性の御霊はひょっとすると、この付近で事故死した女性の可能性が考えられますね。」と切り出すと、ぱうちゅは「旧道での死亡事故が多発していたために新道を造らなければいけない必要性が生じたという事でしょうか?」と聞き出すと、侑斗は「時代の流れと共に交通の量が増えて、旧小峰トンネルのような幅員の狭いトンネルでは対処しきれなくなったということだろう。旧小峰トンネルが開通したのは1916年、大正5年の2月に竣工されたという事も考えたら当時は馬車か荷車が行き交えるほどの幅員を果たせたらそれで十分だったのだろう。しかしながら時代の流れと共に車を使う機会の増加と共に、車同士のすれ違いも困難な上にカーブも多い、その上高さ制限3.3mでは通れる車両が限られてくるために、今の新小峰トンネルが出来るまではかなりの不便を強いられたように思う。バスも通っていたことも考えたら、ここしかない道路を、しかもこんな曲がりくねった道で一歩間違えたら崖から落ちかけない危険と隣り合わせの道路では、今と違って死亡事故も多発していたはずだ。調べると、オートバイの違法競争型暴走族が多く出没していたことも、問題視される理由の一つになったとある。因みに今の新小峰トンネルが竣工されたのは1999年、平成11年の2月に竣工されたとあるから比較的新しいトンネルになるな。」と語り終えると、一同はやっとの思いで旧小峰トンネルの入り口まで辿り着くと改めて独特の雰囲気に押し潰されそうになると、思わずぱうちゅがトンネル内に入ることを躊躇うような仕草を見せ始めた。

その様子を芦原が察してぱうちゅに対し「どうしたの?何かあった?」と聞き始めるとぱうちゅは「やっとトンネルに辿り着いたのですが、何でしょう。何か出てきそうと思うと足がすくんで前に進むことが出来ないんです。空気が、雰囲気が何と言いますか、威圧感が凄いんです。今迄体感してきた化けトンと違うような気がします。」と不安げに語ると、芦原は「怖いのはみんな一緒の事。これを乗り越えたら最後じゃない。だから最後は皆笑顔でこの仕事をさっさと終わらせましょう。長引いたら余計怖いと思うことを体感すると思うよ、だから笑顔笑顔で乗り切ろう。ね。立ち止まっても何も得しないよ。」と励ます目的でぱうちゅに話しかけると、ぱうちゅは芦原に「そうですね。頑張ってレポートします。負けません。」と芦原の言葉に勇気づけられたのか、ぱうちゅは自らを奮い立たせる目的で「頑張れ、頑張れ、わたし。」と呟きながら、トンネルの中へと入っていく。

その後を芦原と侑斗が追うようにして入っていく。

トンネルの中に入っていくとさらにひんやりとした空気に襲われる。

ぱうちゅが「悪寒に近い、ひどい寒気が走ってきました。誰かがいるような気配こそは感じませんが、何かがある。そんな気がしてなりません。」と語りながら怖いのか更に足取りは早歩きになっていくと、侑斗があることに気付き始めた。

先を歩くぱうちゅに対して侑斗は、「トンネルの出口の付近に女の子がいる!」と叫ぶと、ぱうちゅは侑斗のほうを見て振り返り、「えっ!?女の子がいるってどういうことですか?だって死体遺棄現場とこのトンネルは違ったはずですよ!?」と聞き始めると、侑斗は「いや、殺人事件の被害者の女の子ではないのは確実だ。恐らくだがこの付近で事故に遇いこの世を去ってしまった女の子の御霊だろう。その先の出口付近に女の子が佇んでいる。近づきないほうが良い。」と話すと、ぱうちゅは「もうここまで近づいて来ているのなら、心霊検証番組に出演している以上、出来る限り女の子の霊に近づき接触を試みたいと思います。」と吹っ切れたのか強気の口調で語るとさらにトンネルの出口まで勢いよく走り始めると、ぱうちゅの背後にいた女の子がぱうちゅに対してこう聞き始めた。

「ここはどこ?」

聞かれたぱうちゅは、芦原が語り掛けたと思い、後ろにいた芦原に対して「芦原さんここがどこですかって旧小峰トンネルですよ。場所まで忘れちゃったんですか?」と笑いながら聞くと、芦原はぱうちゅに「わたしは喋っていない。ぱうちゅさんの背後にいる女の子がぱうちゅさんに対して聞き始めた。」と返事をすると、思わずぱうちゅが振り返るも霊感を感じないぱうちゅでも後ろに何かがいる気配を感じたのかぱうちゅは芦原に「いや、いまさっき声がしたんですよ。あれは何だったんですか?」とさらに言及をすると、現れた女の子がさらに質問をし始めた。

「おうちにかえりたい。」

その言葉をぱうちゅが間近に聞いたときに声のトーンから察して明らかに芦原ではないことが改めてわかり、恐怖のあまりにトンネルの出口まで猛ダッシュをすると、侑斗がぱうちゅの後を追いかけるように必死になって走り始め、ぱうちゅの側に駆け寄ると侑斗はぱうちゅに「そんなことをしたらかえって女の子が不審に思うだけだ。恐がらずに向き合ってあげてほしい。禍は齎さない。大丈夫だ。女の子は自らの死を理解していないだけに過ぎない。」と解説すると、不思議がった女の子がぱうちゅのすぐ横まで来てこう語りかけた。

「おうちにかえりたい。ここはどこ。まいごになったの。」

あどけない表情で女の子はぱうちゅに対して語り掛けると、ぱうちゅの身を案じて芦原が代わりに答えてあげた。

「幼いあなたにはわからないかもしれないがあなたを乗せた車でこの道を通りかかった際に事故に遇い、あなたはこの世を去ってしまった。自らの死というのを理解できずに今も彷徨っているあなたには向かうべき場所に向かわせてあげよう。ここで彷徨えば、天国であなたの到着を待っているだろうパパとママに出会えないままになる。それは嫌でしょ、パパとママのいるところに案内をしてあげるから、今からわたしのいうことにそっと耳を傾けて聞いてほしい。」

芦原がそう語るとすぐその場で供養のための御経を唱え始めると、言葉の意味を理解するのが難しいのか聞き始めたときは不思議な表情を見せたのだが、じっくりと読み上げていくにつれ女の子は自分の向かうべき場所に次第に理解を示したのか、芦原を見て「おうちがわかったよ。ありがとう。」と語り淡い光となって消えた。

芦原の除霊を行う一部始終の撮影が終えたところで、改めてぱうちゅが芦原に「ありがとうございます。」と深々と頭を下げると、芦原は「そんなお礼を言うほどの事でもないよ。さあ戻ってきた道に戻ろうか。」と笑いながら語るとぱうちゅは「はい!これで仕事終わりだって思うとはやくお家に帰りたいです~!」と笑いながら答えた瞬間だった。トンネル内を張り詰めた空気に包まれると、芦原が「誰か、いる。しかも睨み付けてきている。長居は危険だ。今すぐこの場を後にしよう。」と切り出すと一同は怪しまれぬように早歩きで旧小峰トンネルを後にして車を停車させた場所にまで何とか戻ってくることが出来た。

そしてその場で御祓いを終えたところで、車を出発させるとあの時に見た正体を芦原が語り始めた。

「どうやらあそこは霊場のようだ。事故で亡くなられたのはあの少女だけではない。そのほかにも心に傷を抱え彷徨う御霊がいた。中には怒りの感情を持っている御霊もいた。わたしは緊急策として少女の除霊を行ったが、その他のあの地で事故に遇って亡くなっただろう女性の御霊の怒りの導火線に火をつけてしまったようで、その女性が我々に対して睨み付けてきた。危険だと判断してトンネルを後にするようにと促した。もしあのときに逃げたと勘づかれたらきっとどこまでも追いついてくるだろう。危険な賭けに出てしまったことを謝りたい。怖い思いをさせて申し訳なかった。」

芦原がぱうちゅに誤ると、ぱうちゅは「芦原さんが謝ることじゃないです。それにあのときの女の子の霊に対して対処すべきことをしたのは霊能者として正しい判断だったと思います。それは決して咎められるような事じゃないはずです。」と強く言い切ると、芦原は「そう言ってくれると嬉しい。ありがとう。」と語った。

一同は羽田空港に到着したと同時に改めて霊能者として同行してくれた侑斗と芦原に御礼を言うと、侑斗は放浪中ちっちに「仕事の依頼があればまた喜んで引き受けますよ!今度は俺一人で行きますからね!」と話すと、それを聞いた芦原は「最後は指摘しただけで終わったじゃない!」と突っ込まれながら関西へと帰るぱうちゅや放浪中ちっちの乗る車を見送ったところで、芦原は青森行きの飛行機へ、侑斗は福岡行きの飛行機へ、それぞれ帰路につくことにした。

やっと小城市内の家に帰った侑斗は帰ったと同時にシャワーを浴び、パジャマにさっと着替えると、晩御飯など何も食べることなく眠りについた。そして朝の7時に起床すると、身支度をさっと終え朝ご飯を食べ、8時20分頃には出勤するために家を後にした。ごく当たり前の日常がまた戻ってきた、侑斗はそう思いながら本業の市民課の職員としての仕事に励む。

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