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「そうやって、平気で人を泣かせるお前らは、何をされても文句は言えねーな」
 永戸は走り出し、直ぐに二人に追いついた。
 すると突然、黒也と勢太はパタリと倒れ、ビクともしなくなる。一瞬すぎて分からなかったが、きっと永戸が二人に攻撃をしたのだろう。
 その光景を見て、僕は静かに笑みをこぼした。いい気味だ。そのまま、永遠に停止していろ。

「お前、大丈夫か ?」
 
 永戸が、こちらに向かって歩いて来る。えっと、彼は僕を助けてくれたんだよな ? それなら、お礼を言わなければ。そう思い、口を開くが声が上手く出てこない。
「あっ、あ……あ」
「落ち着けよ。俺はお前の敵じゃない」
 そんな永戸の言葉で、少し緊張がほぐれた。そして、なんとか彼に返事をする。
「あ、はい……あの、ありがとうございます」
「俺さあ、この辺りを通る度、虐められているお前を見てんだよ。だから、お前の存在は前から知ってた」
 救ってもらっといてあれだが、僕は永戸の発言に不満を感じずにはいられなかった。それなら、もっと早く助けてくれても良かったのにと思ってしまうから……。

「お前はどうして、やりたくない事を頑張るんだ ?」
「え、それは……やらないといけない事だから……です」
 永戸の唐突な質問に、僕はそう答えた。
 だが、本当にそれが正しいのかは曖昧だ。
「やらないといけない事って、何だよ……。そんなのは、他人に振り回されず、自分で決めれば良いじゃねーか」
 いや、僕にそんな事を言われても困る。こうして、コクリとあんたに頷くだけだぞ。でも、全く永戸に共感出来ない訳ではない。

「……お前、名前は ?」
「う、上野飛華流です」
 そう僕が名乗ると、いきなり永戸は面倒な事を言い出す。
「飛華流……ちょっと、一緒に来い」
「え、でも……僕は家に帰らないと……」
「……いいから、黙って来い」
 永戸の勢いに負け、僕は彼の誘いを断る事に失敗してしまった。一体、僕はどこへ連れて行かれるの ?

 道路沿いを進んでいく永戸の後を恐る恐るついて行くと、彼は僕の方へ振り返った。
「お前とまともにノロノロ歩いてたら、日が暮れる。だから、俺の背中に乗れ」
「いや、あの……それはちょっと」
「うるせー。早く乗れ !」
「あ、はい……ごめんなさい」
 永戸に何も言い返せず、僕は仕方なく彼におんぶされた。
 
 僕を背負った状態で、永戸は軽々と車の屋根に飛び乗る。連なる自動車を飛び越え、僕らはどんどんと駆け抜けて行く。落ちてしまわないかとハラハラしながら、僕は風になった気分を味わっていた。
 同じ景色でも、角度が変わればこれ程に心地が良いなんて、想像さえもしなかったよ。身体能力が化け物並の永戸には、自転車や自動車なんて、必要ないだろう。




 永戸と共に、僕は再びあの怪しい森に入って行った。……と言う事は、永戸は僕をイナズマ組のアジトへ連れて行こうとしているのか。一度、イナズマ組には酷い目に遭っているから、行きたくないのに。
 
獣道を使わず、木と木を飛び越え、川を渡り、永戸は道無き道を超えていく。もはや、これは人間業ではない。
 
 しばらくして、地面に着地し、そびえ立つ立派な枯れ木の前へ僕は永戸に降ろされた。
「ここが、俺達のアジトだ」
 見上げると、木の上の方に建てられた手作りの小さな小屋が視界に入った。なるほどな。イナズマ組のアジトって、ツリーハウスになっているのか。
 その小屋は所々に隙間があり、斜めに傾いている。中に入って大きくジャンプなんかしたら、崩れ落ちてしまいそうだこれは、かなりもろいだろうな。

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