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第50話

 三日後。すずかは、カトリーナとズィーメウ三人と演習することになった。

 開始前の午前。澄人と晃穂は、羽とカトリーナ、マリーナと共に、地下の演習場へやってきていた。

「昨日も見にきましたけど、やっぱり広いですね」
「ああ。とても地下にあるとは思えない」

 関心の声を出す、カトリーナと羽。

 先月新たに設けられたこの地下演習場は、ほぼ広めの総合体育館並の面積。彼の言う通り、地下にあるとは思えないほどの広さがある。

「最近はぁ、アーティナル・レイス関係の開発、販売をする会社がぁ、どんどん増えてきていますからね~。いくら自社の敷地内といってもぉ、外でばかり演習するのは情報漏洩の可能性があるからぁ、こういうものが必要だと上の人達が思ったらしいんですよ~」
「建設の方は、新たに協力関係になった会社――EDENに頼んだようなんだ。その会社を見定めることも兼ねて」

 晃穂と澄人が説明すると、羽は腕組みをした。

「EDENか……。その会社の代表、何度か第四研究所にきていたって聞いたけど、澄人も会ったのか?」
「それが、ちょっとタイミングが合わなくて、結局会えなかったんだよ」
「そっか……そりゃ残念」
「残念って?」
「会っていたら、いい話を聞けたんじゃないかと思ってな。結構すごい人だから」
「冴原主任はぁ、会ったことがあるんですか~?」
「ああ。いろいろためになる話をしてもらった。今度の披露会に来ると思うから、その時に会っておくといいと思うぞ」
「そうか。じゃあ、その時に話をしてみるよ」

 そこへ、すずかがゼロを連れてやってきた。

「おとーさん」
「待っていたよ、すずか、ゼロ」
『お待たせしました』

 ゼロはお辞儀をするように、機首部分を下げる。

「これがすずかさんの専用武装、シルフォード・ゼロですね」
「わぁー、かっこいい! 飛行形態になってる!」
「こうして実際に間近で見ると、思ったよりも大型の装翼だな。これでよく攻撃に当たらずに動けるものだ……」

 ゼロを目にしたカトリーナとマリーナは、すぐさま近くに寄っていき、羽も興味の目を向けてきた。

『すずか。私は見世物ではないのですが』
「(我慢して。これもおとーさんの考え)」

 すずかは通信でゼロに言った。

『了解しました。しかし、私にそう要求するのであれば、あなたももっと我慢ができるように、成長していただきたいものです。柳原主任に我慢するように言われても、何度も抱きついていますよね』
「(あれは……いいの。親子のスキンシップ)」
『我慢ができていないのは事実。できない者にただやれと言われても、私は納得できませんし、不満も溜まるというものです』
「(……ゼロ、あなた前と比べて、だいぶ性格が変化してきたようだけど)」
『学習して成長したのです。そしてその成長には、すずかという存在が強く影響しています。すなわち、今の私は他ならぬあなたが成長させたのです。もし今の私に不満があるというのであれば、まずは主であるあなたが、もっと成長してください』

 すずかは心の中で、『あぁ……なんでゼロはこんなふうになってしまったの』と嘆く。

 以前はすずかの言うことを素直に聞いていたゼロだったが、二ヶ月ほど前から徐々にこのような感じになってきた。

 信頼関係はできているので、逆らうようなことはないのだが、すずかの言うことに対し、皮肉や苦言を言うことが増え、そのほとんどに彼女は反論できず負けてしまっている。

「ねぇ、マスター。あたしも、すずかさんみたいな、かっこいいブソウがほしいです!」

 頭を悩ませながら、羽におねだりするカトリーナの妹――マリーナに横目を向けながら、澄人のペンダントの中で眠っている人格――妹のそらはのことを考える。

 いずれそらはにも身体が与えられ、目覚める時がくる。そうなったら、すずかも面倒を見ることになるのだろうが、もしそれでゼロのような性格になってしまったら……。

「……最悪」

 思わずつぶやく。

 ゼロのことは嫌いではないが、同じような性格が二人も身近にいるとなると、精神的疲労が凄まじいことになるのは容易に想像がつく。何より可愛げが一切ない。

 そうなることは、何としてでも避けねばならないが、そのためにはゼロの言う通り、まずは自身の成長である。

「(ゼロ……ワタシ、努力する)」
『是非、そうしてください。将来、あなたが苦労しないためにも』

 ゼロにもそう言われ、すずかはより強く決心するのであった。

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