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21.グロールの街

 王都を出発してちょうど一ヶ月が経過した。
 俺たちは相変わらず街を奪い返す旅を続けていた。
 今のところ、九箇所は奪い返すことに成功している。

「次はどこへ行くのじゃ?」

「グロールって街だな」

「そこなら前に行ったことあるぞ。真ん中におっきな噴水があって、建物も綺麗で良い街だったよ」

「ふ~ん……」

「な、何だよ。嘘は言ってないぞ!」

「別に疑ってるんじゃないよ」

 ルリアも随分俺たちに慣れたなと思って見ていただけだ。
 彼女とは王都を出発してすぐに出会って、そこから一緒に旅を続けてきた。
 同行の理由のこともあって、あまり良好な関係とは言えなかったけど、なんやかんやで数日が経過したら普通に話せる仲にはなれた。
 初対面で俺を殺そうとしたとは思えないな。
 強気な態度はとっているけど、根はやさしくて大人しい性格なのかもれない。

「ふっ、やれやれだな」

「何一人で笑ってるんだよ。気持ち悪いな」

「……」

 いや、ただの生意気なだけなのかも……。

 そうして街道を進むこと三時間後、西の空に夕日が沈みかけている時刻に、俺たちはグロールへ到着した。
 外周は王都と同じく塀で囲まれていて、外側からは中の様子が見えないようになっていた。

「プラム、また頼めるか」

「了解じゃ」

 プラムが空を飛び、上空から街の様子を眺めた。
 彼女は何やら不穏な表情を見せ、俺たちのところへ戻ってきた。

「どうだった?」

「うむ……なんというか普通じゃった」

「普通?」

「普通に人間が暮らしておったのじゃ。魔王軍の気配は感じられん」

「えっ、そんなことってあるのか?」

「にわかに信じられんが、ワシが見た限りではそうじゃった。疑うなら、実際に入って見ると良いじゃろう」

「……そうだな。入ってみよう」

 俺は疑問を解消するべく、正門から街へ入った。
 正門には門番が普通に立っていて、旅の者だと名乗ったら、これまた普通に入れてくれた。

「……本当だ」

 街に入ってすぐ、俺は目を疑った。
 プラムの言った通り、人々は穏やかに暮らしていたのだ。
 見た感じだと、魔王軍に攻め込まれた痕跡も感じられない。
 ただの綺麗な普通の街だった。

「ルリア、前に来たときと比べてどうだ?」

「どうって、前もこんな感じだったけど?」

「そっか」

「あ~ でも何か、ちょっと違うような……気のせいかな」

「どうする? 無事じゃというなら用は、もう出発するか?」

「……いや、ちょっと気になるし、一応調べてからにしよう」

「うむ、わかったのじゃ」

 一見穏やかに見える街。
 だけど俺は、少しだけあの場所に似ているような感じがしていた。

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