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第九話 滅亡と旅立ち

 曹操は呂布の配下を離反させて呂布と陳宮を捕らえて処刑した。

 最後まで敵対した張遼と高順(こうじゅん)は異変を察知して直属の兵二百人を連れて脱出し、西の譙に向かい難を逃れて龐統や華雄に知らせると。

 龐統は苦しい意見を述べた。

「すぐにでも曹操は譙に攻め掛かり関平様が居られない今、汝南や寿春も奪われ滅ぼされるでしょう。だが、ただ民草を見捨て、領地が曹操の軍門に下れば関平様の名声が地に落ちまする。再起し、再び旗揚げする為、誰か関平様の為に戦って死んで下さらぬか?」

「この華雄にお任せあれ! 儂は関平様に命を助けられた身。この命燃やし尽くす所存にござる」





 こうして、老いた盲目の将軍である華雄は、今、まさに関平の恩に報いる為に、直属の兵、三千人を率いて、侵攻しして来た曹操本隊十万人に突撃して行った。

「皆の者! 儂達は死して名を残すぞ! 最低一人十殺じゃ!」  

「おおお――!」

 直属の兵は、一人一人が、曹操の兵十人分の武勇を誇り、華雄を父親の様に慕っていた為、獅子奮迅の活躍を見せたが多勢に無勢。

 ある者は槍で串刺しになり、また、刀で斬り裂かれ、弓矢が何本も刺さり討たれていった。

 やがて、華雄一人となり、目の前には、曹操軍の将軍が一人、夏侯淵(かこうえん)と言う四十代前半で虎の様な武勇と並の軍師より知恵の回る男である。

 だが、この時、夏侯淵は負傷し消耗した華雄を討ち取るべく槍を胴体へ突いた。

 見事、華雄の胴体は槍に貫かれ死んだか? に見えたが、華雄は首を取りに来た夏侯淵の首に歯をたて噛みつき、薄れゆく意識の中。

「ぎゃ――」
   
 夏侯淵は断末魔を挙げ苦しみながら。

「去らばです……。関平様……」 

 華雄は満足そうな笑顔で。

 共に血塗れになり絶命した。

 

 その頃、殆どの関平軍の将兵が離反、もしくは逃亡したが、軍師の龐統、将軍の黄忠、張郃、武将の許褚、周倉、廖化と、その直属の兵、女騎馬隊は関平に離反せず行方を隠した。







 その年の冬、小雪の舞い散る中、関平の領地を制圧した曹操の軍勢は南陽の張繍に降伏勧告をし、南陽城に曹操軍は入城。

 張繍は歓迎の宴を開き、その席で捕縛していた関平を縄に引きずって連れて来させた。

 曹操は終始ご満悦で話しかけてきた。

「関平。そなた我の家臣とならぬか? もし断るならば許昌にて処刑せねばならぬ」

「曹操。貴様に仕えるくらいならば俺は処刑された方が良い」

「ならば牢屋で頭を冷やしながら考えよ」








 そして深夜、曹操軍勢が張繍軍勢の夜襲に遭い、しかも流言(りゅうげん)(偽情報)が飛び交っていた。

「夜襲だ! 劉表の援軍までいるぞ!」

「曹操様が討ち死にされただと!」

「関平軍まで押し寄せてるぞ!」

 など、大混乱。 

 実は関平と張繍は密約が出来ており、己自身を餌に曹操を釣り出す罠である。

 無論、考えたのは、張繍の軍師、四十代前半の痩せた身体だが、中華屈指の知恵者、賈詡の策。

「くっくっく。愉快、愉快。強者が弱者に討たれるのを見るのが儂の生き甲斐ぞ」

 賈詡は高みの見物をして、ふと呟いていた。

 だが、結局、曹操には逃げられたが、その代わり、護衛の典韋(てんい)や曹操の嫡男、曹昴(そうこう)等の武将やかなりの兵を討ち取った。

 夜襲後の朝。

 張繍は関平に話しかけ。

「同盟の義理は果たした。去るがよい。もし、貴殿に力を貸す者が居るのは、北の袁紹か? 南の劉表(りゅうひょう)くらいであろう。出来れば、この二つの勢力を味方に付けて、曹操を討ち取ろうぞ」







  
 こうして関平、沮授、呂乱華は釈放され荊州の劉表を説得する為に襄陽(じょうよう)に向かった。

 何故? 袁紹の元に向かわないか? 

 いずれ、曹操と戦い敗れた劉備が向かうからである。

 それに早い段階で劉表と(よしみ)を通じておれば南陽郡の新野(しんや)城か? 江夏(こうか)群の江夏城を実効支配同然に借受けられる。

 




 荊州の襄陽に行く途中、見覚えのある緑の軍旗と鎧を纏った約千五百人程の軍勢が現れ、その中から龐統、張郃、他の武将達も現れた。

 更に驚くべき事に呂布の将軍であった張遼、高順の二人が現れて呂乱華に平伏した。

「姫様申し訳ございませぬ。この張遼の不覚にござる。どうか姫様の手で成敗して下され!」

「この高順も同罪にござる。いかようにもして下され!」

 呂乱華は呆れた様に。

「張遼! 高順! せっかく拾った命無駄にはするな! これからは私と夫、関平様に仕えよ」

「「御意!」」

 こうして、華雄を失ったが、新たに呂布の二人の将軍が家臣となった。






 今の関平の戦力

軍師 龐統 沮授

妻、武将? 呂乱華

将軍 黄忠 張郃 張遼 高順

武将 許褚 周倉 廖化

軍勢 関平軍勢千人 女騎馬隊三百人 呂布残党軍 二百人










 



 

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