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第十二話 和睦と新たなる敵

 同年冬。

 汝南、寿春を取り戻して寒さに震えながら政務を行っている時、朝廷からの使者が訪れた。

 朝廷からの使者? つまり朝廷の名を騙る曹操からの使者である。

 その使者は過去の人生で幾度も戦った人物であった。

 歳は三十代前半、頭に黒い頭巾と黑装束、武器は長斧使いで武勇もあり、父関羽の友であった徐晃(じょこう)である。

 どうやら軍師や文官を送らず、将軍級の武官が来たのは降伏を促す事であろう。

 と、思ったのだが。

「関平殿。朝廷よりの(めい)を伝える。敵対している丞相、曹操様と和睦し、荊州の劉表を征伐せよ! なお、そちらは武勇の優れた将軍が少ないと見える故、この徐晃を客将として預ける」

 関平は大いに驚いた。

 まあ、和睦はお互い苦しい立場故わかるが、徐晃ほどの将軍が客将として一時的に家臣として貸し出す余裕……。

 やはり、曹操は最大の敵だと再認識した。

 奴は離反した徐州の劉備を先に攻めるつもりだ。

 その為に、荊州という大国を支配している劉表を利用して間違い無く泥沼の戦いになる事を予測している。

 しかも、劉表には多大な恩がある。

 今は天の時、人の和がまだ足りない。

 ならば、劉表に使者を送り、偽りの戦いをしようと思ったが家臣、蔡瑁は曹操に通じてる可能性があり本気で戦いをしかけるだろう。

 とりあえず徐晃に退席してもらい龐統に相談すると。

「関平様と同じ答えに存じます。中々成長致しましたな。つまり、徐晃は内から蔡瑁は外から呼応して討たせようとしております。しかも、劉表にも我らを討伐せよと伝えているでしょう」

 すると知らせが入り、新野に蔡瑁率いる八万人の軍勢が侵攻して沮授と高順の軍勢、二万人が新野城に籠城して防いでいるらしい。

 先手を打たれてしまった。

「よし、蔡瑁を討とう。俺の直属兵の内、五千人を率いて攻める。徐晃を呼び出せ!」

 
 こうして五日後、雪を踏みしめながら新野城近くに着くと落城寸前であったが、関平の直属兵と徐晃の軍勢二千人は放たれた矢の如く貫くように蔡瑁軍を分断して城に入城した。

 入城すると門を閉め、すぐに徐晃の軍勢と戦った。

 徐晃の目的は城の門を開けて蔡瑁軍を引き入れる事であった。

 多勢に無勢、徐晃の軍勢は討たれるか? 捕縛され、徐晃一人となり、その前に関平が現れ。

 お互い敵と認識して。

「「参る!」」

 二匹の獣が戦うように一騎討ちを始めた。

 だが、包囲され、脱出しようとしていた徐晃は疲労していたのだろう。

 三十合程戦った時、右肩を槍貫かれ負傷して負けた。

 そして覚悟を決めて言い放った。

「儂を討って誉れにするが良い」

「徐晃。今回は見逃してやる。曹操に伝えよ。今回は三年だけ和睦し、劉表攻めを行う」

「関平! 儂を生かした事を後悔させてやる!」

 と、言い残して去って行った。




 蔡瑁率いる軍勢は、劉表から退却命令が来た為、去って行った。

 実は龐統が江南の孫策に知らせて攻めさせ、荊州南部を散々、略奪し、父の仇である黄祖(こうそ)を討ったので危機を感じ退却させたのである。

 こうして、関平は一時的に危機を逃れた。

 心ならずも新たなる敵となった劉表とは?

 そして、野心豊かな孫策との関係は?

 まさに前途多難。

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