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第十三話 競船と同盟

 曹操は徐州から退却して呂布と戦い、蝗害(こうがい)食料難で共に退却した許昌に軍勢を率いて凱旋すると、許昌に軍勢に与える食料が不足していた。

 その頃、関羽の新たなる領地徐州は戦乱による荒廃や蝗害による食糧難に陥っていたので米が豊富にある寿春から送り民に分配し、兵達に建物や田畑の復興、民による海から海産物を取り、何とか五年位の目安で復興の目処が立っていた。

 だが、復興には時が掛かり過ぎる

 曹操、孫策、劉表を始め特に信用の置けない餓狼の様な漢である呂布と領地を接しているからだ。

 そこで農民や漁師、商人からの税収ばかりではなく、他の収入を得て、それを元手に短期間で徐州を復興させようと妻の兄である糜竺に相談した。

「義弟殿。それならば、競船などは如何かな?」

「競船とは?」

「海や河で船を競わせる賭博よ」

「なるほど。その運上金を得て人夫を雇い徐州を復興させるのだな」


 こうして、毎日のように競船を行った。

 客達は一喜一憂しながら。

「まくれ!」

「そこだ!」

 などと大興奮して喜ばれ、莫大な財貨を元締めの関羽にもたらした。

 こうして多くの人夫を雇い、資材を買い付け、五年掛かる復興が二年程になるのであった。




 二年後(195年)の立秋《りっしゅう》(8月7日頃)真夏の太陽照り付け、蝉の声が鳴り響いている時に関羽の本拠地、汝南城に黒衣の三十代前半の使者が来た。

「私は呂布様の軍師に就いている陳宮(ちんきゅう)と申します。今回の要件を呑んで下さるならば、近い将来、呂布様の持っている全てを、家臣や軍勢、国さえも関平様に与えるとの事です」

「要件とは?」

「曹操を討ち取る為、同盟をして頂きたい」

「だが、呂布殿は二度の義父殺し、濮陽乗っ取りも行った。信用は出来ぬ。帰られよ」

「お受け頂けるならば、呂布様の血を唯一引く姫君、呂乱華(りょらんか)様を関羽様の妻として差し出すとの事にございます」

「だが、何故? 俺なのだ? 家臣の有力者に与えればよいでは無いか?」

「呂布様は天下の武人。ならば、己が亡き後、中華一の武人に成られる御方に嫁がせる事にございます。呂布様とて人の子、いずれ老いが来ます。ならば、尚更、呂乱華様の行く末が心配なのでございまょう」

「それでも俺は信用出来ぬ。飢えた牙狼の様な武人故」

「ならば、仕方ありませぬな。私が関羽様に使者として赴いているのは、まず、間違いなく曹操の間者に知られているでしょう。呂布様と同盟するしか? 最初から道は無いのですよ。まあ、悪い様には致しませぬ。同盟の約定。少なくとも呂乱華様をお連れ致しております。余り余裕はございませぬが考えて下され」

 策にしてやられたと、苦虫を潰した顔をしながら、こうなれば毒喰らば皿まで。

「相わかった陳宮殿、先ずは呂乱華殿に会おう」

 陳宮は満面の笑顔を一瞬浮かべ。

「ありがたきしあわせ。呂乱華様起こし下され」

 すると、黒き鎧で武装し、槍まで所持している日焼けして黒き肌、長い銀髪、牛の様な乳の十代半ばの美しき姫君が入って来た。

 まるで糜泉を思わせる様な武人姫、呂乱華。

 だが、ただ美しいだけではなく、鋭い覇気からして、張郃に匹敵する強さであろう。

 正妻の糜泉と同じ武人妻。

 何か関羽は何か不思議な縁を感じた。

 それは呂乱華も同じく思ったのであろう。

 共に戦いに行ける夫婦になれる事を。

「呂布の娘、呂乱華と申します。関羽様に妻の一人として、武将としてお仕え致します。どうか同盟をお願い致します」

「相分かった。天上の神に誓って同盟致そう」

 これは中華に覇を唱える事になるか? 破滅への道か?

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