バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

SS23-2 エレナ

 ぐぅ~

 空腹とは非情だと思う。閉じこもってる最中なのに、訴えてくるんだもの。今日の昼食は何かな、昨日は照り焼きだったから野菜炒めかな。……カミラさんまだかなぁ。
 エレナは今、自室のベッドの上でひざを抱えている。左腕のみで。右腕を《《失ってしまい》》、心も病んだ《《ことになっている》》。ギルドマスターからは無理に仕事をしなくても良い、ゆっくり休養し心を癒せ、と言われている。ヴァルデさんも《《怖いくらい》》優しいし、リーネまで水菓子を買ってきてくれる。

「……今更」

 トントン

「エレナ、入るわよ。」
「……。」
「野菜炒めだけど……こっちに来て食べない?」
「カミラさん……今更なんですけど、その、えーっと。」
「分かってるわよ。」
「え?」
「エレナが仕事をサボったは良いけれど、暇で仕様が無いから仕事に戻りたい、とか。」
「うっ……。」
「高価なお菓子を貰った手前、実は何ともなかったんです、なんて口が裂けても言えなくて理由を探してるとか。」
「うぐぐ……。」
「私が持ってきた昼食のことを考えて、お腹が鳴っていたことも知ってるわよ。」
「……。」(ぐぅぅ~)

 完敗である。カミラさんには全部バレてたなんて。上目づかいでカミラさんを見ると、昼食を並べてくれていた。あっ……パンにジャムもある。

「ヴァルデさんに、あとでお礼を言っておくのよ?」
「え? あ、そのジャムって。」
「手作りらしいわよ。あとコレ。」
「薬草? この香りは……香辛料?」
「気分を落ち着ける香料らしいわ。コレクションから出すなんて愛されてるわね?」
「うっ……さらに言い出しづらく。」

 俯《うつむ》いた私に歩み寄り、カミラさんが優しく抱擁してくれた。顏を見られたくなくて背けちゃうけれど。

「誰もあなたを責めたりはしないわ。ゆっくり食べなさい。」
「ふぁぃ。」
「朝食もしっかり食べたみたいだから、大丈夫よね?」
「……。」(顔を少し擦り付ける)

 カミラさんが撫でてくれる。

 大好き、カミラさん。



 話そう、今の気持ちを。私の体に起こっていることを。

 そして……みんなに『ごめんなさい』を言おう。

 でも、その前に……冷めちゃったけど、温め直してもらえるかな?

しおり