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第十三話_手紙

「さて…」
夜になり、雅は自室にてゲンからもらった黄泉の手紙を開いていた。

『雅へ』

『お前はこの世界にきて困惑しているだろう。俺も来たときは困惑した。
この世界での生活は大変だろうが頑張ってくれ。
元の世界に戻る方法を知らないからそれくらいしか言えないんだ。すまない。

ゲンはいいやつだからどんどん頼っていけ。
どうだ?鍛錬を忘れてはいないか?
こちらの世界は強いやつらがたくさんいるだろう。
この世界はお前にとってもいい修行場になるだろう。
だから、しっかりと成長するようにな。

それと、すまなかった。お前たち家族には多大なる迷惑をかけた。俺もまさか転移させられるとはおもわなんだ。
もし帰ることがあったら家族にすまなかったと伝えてくれないか。

少し、昔話をしようか。
俺はこの世界に来た時。見知らぬ裏路地に立っていたんだ。召喚の儀式は召喚された人がどこに召喚されるのかわからないらしい。今もそうなのだろうか。
意味も分からず彷徨っていると空からケースが落ちてきたんだ。お前も持っていると思うが武器だな。これは使用者の愛着度ではなくこの世界に必要だと『神』が判断したものが贈られるんだ。

武器をもらった俺は空腹から逃れるために食料を求めてスラムを彷徨っていたんだ。
いい歳したおっさんが盗みだぞ?見たいみたいだろう、まぁ、自分でも素晴らしく滑稽だったよ。

あぁ、人は殺してないから安心しろ。
そして、空腹で死にそうになっていた時、助けてくれたのがゲンだった。彼は俺のことを心配して家にまで上がらせてもらったんだ。そして俺が異世界の住人だと聞いたとき驚いていろんなことを聞いてきたよ。日本の世界はどんな国だったのかとかね。
とても充実した日々を送らせていただいた。あの家族には感謝の言葉もない。
そんなこんなで研究やらなにやらしているうちに色々なことを発見したんだ。それはある本に記入してあるがこの屋敷内にはない。

そこで、一つ頼みというか命令がある。
この手紙を読んだ1週間後にアスデスの丘の北側にある洞窟に訪れてくれないか。大事な話がある。そこで本も渡そう。あと、ある人物にも合わせてやる。あぁ、一人で来いよ。

追伸、もしその話をゲンが聞いてくれなかったらこの手紙を見せていいぞ』

『大岡 黄泉より』

「……」
「(なんだろう、この世界にきてからようやく目標が持てた気がする)」
そう思い、雅は部屋のドアを開け、長い廊下を歩いていった。




「フィレイ、今大丈夫か?」
フィレイの扉をノックする。
「ええ、大丈夫よ。入って」
「失礼します…」
椅子に座るよう促されたので座らせてもらう。
「どうしたの。急に」
「手紙読んだんだ、それでじいちゃんがフィレイたちに感謝してるって」
「本当?…うれしい。本当に黄泉さんとの生活は楽しかったわ。……こうして思い出そうとすると全く思い浮かばないのね」
雅は手を彼女の目に添わせる。
「うん、多分それは嬉しい、嬉しかった気持ちがあるからじゃないかな」
「うん…ありがとう」
「………」
「…もう大丈夫。それで、あと何か書いてあったの?」
「あとは、この手紙を読んだ一週間後にアスデスの丘の北側にある洞窟に来てって書いてあったね」
「一週間後…って魔術大会がある日じゃない」
「え、そんなに早かったのか?あー、でも俺別に出れないから休んでもいいのかな?」
「ええ、多分。お父さんに明日相談してみましょ」
「そうだな。じゃ、俺はそろそろ寝るわ」
「ええ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」



「ゲンさん」
「何だい?」
「来週の魔術大会の時休んでもいいですか?」
「別に構わないけど…、何かあったの?」
「昨夜手紙を見たんです。そしたらアスデスの丘の北側の洞窟に一人で来いって書いてありました」
「アスデスの丘か…ふむ…」
「あの、何か問題が?」
ゲンさんは食器を置いてこちらを向く。
「アスデスの丘。通称、試練の丘。ここは大体冒険者の腕試しや魔導士、剣士など、戦いの分野における人たちの昇級試験場所でもあるんだ。そしてその丘はワイドワールド、クローズワールドの北に位置しているんだ。そして、北に向かうほど敵が強くなる。なぜなら、アスデスの丘の北側の洞窟、ツェリア洞窟から魔物が出てきているからなんだ」
「え、そんなに危険だったの?」
フィレイが驚いた表情を見せる。
「ああ、フィレイと一緒に行った場所はワイドワールドとアスデスの丘の境目だからね。全然強い魔物なんていないんだよ」
「魔物ってどんだけ強いんですか?」
「そうだね、現在確認されている魔物で一番危険度が高いのは『ローデウス』っていうかつて黄泉さんが戦った魔人だけどさすがにいないだろうから考えられる規模としては、黄泉さんとローデウスが大体30haくらいの土地を抉る位の力の衝突だから大体10haくらいじゃないかな?」

「いやいやいや!!それ俺死にますよね!?10って言ってもヘクタールですよ!ヘクタール!!東京ドーム2個以上じゃないですか!」
「東京ドーム…?まぁ、そんなわけで危険だから並みの人では洞窟までたどり着けないんだよ。普通は丘の中盤位で終わるんだ」
「どうやって行くんですか?俺」
「ふっふふ、任せたまえ。僕にいい考えがある」
「雅、あまり期待しないでね。お父さんのいい考えは大体一か八かになるから」
「ちょっ!ひどいな!」
「あはは」

こうして俺はフィレイに魔法の基礎を教えてもらいながら一週間を過ごした。




「………例の件の実行まで一週間を切ったぞ。準備は整っているのか?」
「大丈夫っすよ~いやぁ、面白くなりそっすね」
「………私語は慎め。行くぞ」
「了解っす~」
2つの影が同じ方向へと飛んでいく時。
「あの、ここってどこですか?」
一人の男が影の後ろに立っていた。

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