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 そして― 歯車は最悪の方向に向かいました」



「最初の……私がいた時代?『終わり無き生』が開発されたのって?
 そんな科学力あったの?」
「ありましたよ。あなた、あの時のどれだけ生きたか覚えてますか?」
「……百年ぐらいって普通じゃないの?」
 記憶を辿り思い返す。

「それからの時代にそれだけ生きた人がいますか?貴女の若さで」
「それは―。自然環境が悪かったりした所為じゃないの?」
 当たり前だと思ってた時代。
 それは間違っていたの?

「違いますよ。あの時代。死は遠くにあったのです。
 かろうじて不老不死ではなく長寿でしたが……」

「星一つの命を奪う必要があったの?」
 思い返すあの時代。あの時間。
 遥か悠久の彼方にある時はもう霞みの向こう。

「あの時開発されたのはウィルスでした。研究所はそれを星全体にばら撒いた。
 仕方なかったのです。ああするしか―」


 ふっと、足元に地面の感覚。


「それで?なぜ、自分達で狩らなかったの?」
「私達は異世界の者です。この世界に干渉する事はできないんですよ」
 悲しげに彼は微笑む。

「じゃあ、私たちが殺し会わなければならなかったのはなぜ?」
「7つの力は惹かれあう性質を持っています。
 それは協力し合う事も出来たはずなのですけどね」
 苦笑いを浮かべ彼は言う。

「殺しあう事もあったってこと?」
 私の問いに彼は静かにうなずいた。
「お互いの力に怯えたのです。特にあなたの力に」

「私?」
「ええ、あなたの『星』の力に。
 彼らを殺す事が出来る事が出来る、貴女だけの力に」
 優しい瞳で私を見つめる。

「そう」

 私は視線を空に向け星を眺める。


「だったら、私を殺せるのは貴方?」


 私の問いを予想していたのか、していなかったのか
 彼の顔に驚きの表情は無い。


「そうです。それが貴女の望みだと言うなら、そうして差し上げます」


 一瞬、悲しげな顔が視界の端に映った。
 私は瞳を閉じ、手を握る。

「私を解き放って―」

 頭の中に巡るのは何も無い。
 ただ終わる虚無感にホッとしている。


「わかりました」
 スッと空気の切る音。
 遠く煌めく7つの星。
 青に広がる赤い花片。

 ただ、それだけが最後の記憶。

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