2
そして― 歯車は最悪の方向に向かいました」
「最初の……私がいた時代?『終わり無き生』が開発されたのって?
そんな科学力あったの?」
「ありましたよ。あなた、あの時のどれだけ生きたか覚えてますか?」
「……百年ぐらいって普通じゃないの?」
記憶を辿り思い返す。
「それからの時代にそれだけ生きた人がいますか?貴女の若さで」
「それは―。自然環境が悪かったりした所為じゃないの?」
当たり前だと思ってた時代。
それは間違っていたの?
「違いますよ。あの時代。死は遠くにあったのです。
かろうじて不老不死ではなく長寿でしたが……」
「星一つの命を奪う必要があったの?」
思い返すあの時代。あの時間。
遥か悠久の彼方にある時はもう霞みの向こう。
「あの時開発されたのはウィルスでした。研究所はそれを星全体にばら撒いた。
仕方なかったのです。ああするしか―」
ふっと、足元に地面の感覚。
「それで?なぜ、自分達で狩らなかったの?」
「私達は異世界の者です。この世界に干渉する事はできないんですよ」
悲しげに彼は微笑む。
「じゃあ、私たちが殺し会わなければならなかったのはなぜ?」
「7つの力は惹かれあう性質を持っています。
それは協力し合う事も出来たはずなのですけどね」
苦笑いを浮かべ彼は言う。
「殺しあう事もあったってこと?」
私の問いに彼は静かにうなずいた。
「お互いの力に怯えたのです。特にあなたの力に」
「私?」
「ええ、あなたの『星』の力に。
彼らを殺す事が出来る事が出来る、貴女だけの力に」
優しい瞳で私を見つめる。
「そう」
私は視線を空に向け星を眺める。
「だったら、私を殺せるのは貴方?」
私の問いを予想していたのか、していなかったのか
彼の顔に驚きの表情は無い。
「そうです。それが貴女の望みだと言うなら、そうして差し上げます」
一瞬、悲しげな顔が視界の端に映った。
私は瞳を閉じ、手を握る。
「私を解き放って―」
頭の中に巡るのは何も無い。
ただ終わる虚無感にホッとしている。
「わかりました」
スッと空気の切る音。
遠く煌めく7つの星。
青に広がる赤い花片。
ただ、それだけが最後の記憶。