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人生の交差点

 支店室に呼ばれた。支店長は上機嫌でコーヒーを喫茶店から運ばせる。
「これはまだ発表されてないので黙っていてくれ。私は本店の検査部長に移る。次長が支店長に代理が次長になる」
「検査部長は?」
「彼は札幌の支店長だ。左遷だな」
「どうだ君を代理に推薦するが?」
 どうも検査部長は派閥に押しつぶされたようだ。もう未練もない。
「いい匂いだな」
 ドアを押すと石田と司法書士が並んで座ってワインを飲んでいる。彼にはワインは似合わないと思いながら定位置に掛ける。
「ベトナム料理の春巻きよ」
とぽろんが皿に盛った春巻きと小瓶を抜く。この前の夜、ぽろんと暴走族のヘッドとの絡みをビデオを見せられて妙に燃え上がった。次は記念に撮ってベトナムに行くと言われている。ぽろんのベットの横にはすでに旅行鞄が出来ていて、部屋は閑散としている。今が人生の交差点と言うものなのか。
「やはり不良仲間は来なかったな」
 同窓会に参加したそういう石田も不良仲間なのだが。
「亮介が今度市会議員で出るそうだ」
 そう言えば司法書士は彼と付き合っていたはずだが、知らん顔をしている。
「ママは同窓会出たことある?」
「一度もない。あそこには何も思い出はないわ」
「同じだな」

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