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ナンバー2

 今回の臨時役員会は頭取の強い意向で行われたようだ。発令を受けたものは今月末までに引き継ぎを行う。私は新しい検査部長に今の報告を送る気はない。ここ数日早く帰っては報告書をまとめる。今なら転勤前の検査部長に渡せる。同時に退職願いを支店に提出しよう。新しい職場が決まらなかったらそれはその時だ。メールと文章で報告書を送る。どこかすっきりした気分だ。
「ご無沙汰ね」
「報告書き上げてたからね」
「いよいよ辞めるの?私より先に旅立ちね」
「今日もベトナム料理かい?」
「行くまでに大体の料理を作れないとね。それにこのビルの立退きの日も近づいてきて来ている」
 3人連れの常連がカラオケを歌っている。
「それとまたリエがしたいってよ。連絡しようかしら」
「いやもういい。もう昔の二人じゃない。彼女はいいお母さんだよ」
「冷たいね。でもいい判断と思う」
 ぽろんは小瓶を抜いて乾杯する。
「最後の日はすっぽかさないでね。二人の記念を収めていく」
「ナンバー2の男としてな」
 彼女の中には今でも初恋のヘッドが生きている。
「生きている人ではナンバー1よ。ベトナムに行くまでに会えてよかった」
「あの日氷雨が降っていなかったらきっとこの店を見つけることはなかった。人生って不思議だなと思う」
「高校時代は顔を合わすこともなかったのにね」


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