お城に行く2
あっという間にお城へ行く日がやって来た。
お城から迎えの馬車がやって来て私とシスターは馬車に乗り込む。
孤児院は町の外れにあるので城に向かうには町を通らなければならない。
馬車の中から流れていく町の風景を見る。
見慣れた光景だけど、こうして改めて見るとみんな笑顔を見せている。
この笑顔を私は奪ってしまったんだ、と思うと胸がギュッとなる。
私がしてしまった業の深さに改めて気づかせる。
「リリィ、大丈夫?」
「だ、大丈夫です。」
私の表情が余り優れなかったんだろう、シスターが心配してくれた。
そうこうしている内にお城に到着した。
「ようこそ、『フェルメント城』へ、謁見の間にご案内しましょう。」
私達は兵士に案内されて城の中を歩いていく。
正直、見慣れた光景だ。
何処に何があるのかは熟知している。
そして、謁見の間に到着した。
扉が開き赤い絨毯の上を歩いていく。
そして、王座の近くまで行き膝間付いた。
「良く来てくれたな。儂がこの国の王じゃ。顔をあげてくれ。」
私とシスターは顔をあげた。
やはりと言えば良いのかわからないけど、若い。
「初めまして、リリィと申します。」
「ふむ、ちゃんと挨拶も出来るとは良く出来た子じゃ。シスターの教育が良いのじゃな。」
「お褒め頂いて光栄でございます。」
「今回、お主を呼び出した理由はわかるかな?」
「私が赤髪だから、でしょうか・・・・・・。」
「良くわかっておる。この国では赤髪は特殊な力を持ち国を繁栄させる。その為に赤髪の子供達は手厚く保護をしておる。聞けばお主は養子の話を全て断っているらしいが理由があるのか?」
どうやら貴族の面々が王に泣きついてきたらしい。
王が言うか、王族だったら断らないだろう、と思ったんだろう。
しかし、1度死んだ身である私に恐いものなんて無かった。
「私が養子の話をお断りしたのはただ貴族の生活に興味がないからです。そもそも私は親の顔も知りませんし無学で教養やマナーを知りません。そんな私に貴族の生活に対応出来るとは思いません。」
これは紛れも無い本音だ。
「それから王様は赤髪は国を繁栄させる、と言っていましたがその逆もある事をお忘れでは無いでしょうか? つまり、国を『崩壊』させる力も持っている、という事です。」
そう言うと側近の方々がザワザワしている。
「・・・・・・お主は国を崩壊させるつもりがあるのか?」
「それは皆様の心次第でございます。この国が繁栄させる価値があるかどうか、今の私にはわかりません。ですから、私は今この国について学んでいる最中です。なので今は養子とかは考えてはおりません。」
「学んでおるのであればより良い環境で学ぶべきでは無いのか?」
「それでは貴族の考え方しか出来ません。この国に住む殆どは庶民です。私も含めてです。様々な見方を学ぶのも国を繁栄させる力だと思います。」
そう言うと王様は黙った。
「私は貴族にはなりませんし王族にもなる気は全くありません。私は私の人生を歩くつもりです。そこに貴族や王族はございません。」
しっかりとそう宣言した。
室内はシーンとしている。
「いや、幼い身でありながらそこまで考えているとは素晴らしい!」
そう言って王様は笑った。
どうやら上手くいったみたいだ。
その後は何事もなく謁見は終了した。
シスター共々ホッとした。
それから数日後、孤児院に国から補助金が入った。
しかも王命で私への関与は一切しない様に、と貴族にお達しが出たらしい。
とりあえず私が貴族になる道は無くなった。