なんで貴方がっ!?
国からの補助金が出たお陰で孤児院に変化が起きた。
まず、美味しい食事が毎日出るようになった。
今までは週に1回は食事が無い日があったし、出たとしてもパンと牛乳、たまにスープや固い肉が出るくらいだった。
断っておくけど虐待されている訳じゃなくてただ単にお金の問題だ。
しかし、それが解決出来た事で食事のレベルがアップして私達は大喜びした。
施設の設備も新しくなり私達の部屋は綺麗になったし、ベッドも冷たい使い古した物から暖かいふわふわした物になった。
「急にどうしたんだろうね?」
「さぁ?国の方針が変わったんじゃないかしら。」
少なくとも生活が豊かになり私が孤児院を出ていく理由はこれで無くなった。
前の私が貴族の養子になった理由の一つにこの孤児院が貧乏だった、というのがある。
この苦しい生活から脱出したかった。
だから、養子の話が来た時は天界から降りてきた一筋の糸に見えた。
でも、その先が天国かと言えばそうじゃなかった。
私は自ら地獄に墜ちてしまったので身も蓋も無い話だ。
だから、調子に乗らないようにしよう。
そんなある日、私達孤児全員が食堂に集められた。
「皆さん、集まりましたね。実は皆さんに紹介したい方がいます。入って来て下さい。」
扉が開き一人の青年が入って来た。
「今日からこの孤児院で働く事になった『クリス』と言います。」
その顔を見て私はビックリした。
だってクリスと名乗ったその人物はこの国の王子で私が惚れてしまったせいで人生が狂ってしまった人物だから。