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第7話ー失念ー

ハロワにやって来た。
ハロワは第一階層の中央にあり、どこからもアクセスしやすい場所にあった。
ここの掲示板には、様々な求人募集要項が貼ってあり、なりたい職業を見つけられる。
受付の人になりたい職業を言えば面接の日程を組んでくれるそうだ。

しかし、書類選考が多いな。この世界では何も行なって居ないから白紙だぞ。

あ、翻訳の仕事があった。これなら辞書を閲覧しながらやれるんじゃないか?


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《誰でも簡単♪翻訳の仕事》

求める人材
・古代語、ハイ語、オカウア語が読める人材
昇給・給与
・給与/1ウニケ/回
勤務時間
・自由(締め切り迄には出していただきます)
仕事内容
・論文、書籍の翻訳
採用予定人数
・5〜10名
待遇・福利厚生
・研修1ヶ月(能力により短縮・延長有)終了後、祝い金3ウニケ
アピール情報
・場所を選ばずにいつでもどこでも仕事ができます。
・経験や資格が無くてもできるお仕事が多いです。

選考方法
書類選考、筆記試験、面接
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いや、あのですね。書類選考の時点で簡単では無いんですよ。
筆記試験に行けるかどうかが問題なんですよ。

取り敢えずこれを受けよう。
辞書を見ながら翻訳すればいいだけだ。

受付の人にこの仕事を受けたいと言った。
「身分証はお持ちですか?」

僕は凍りついた。この世界の物は持っていない。あああどうしよう。持っていないって言うか?
いや、言うのは怪しまれるか。今持っていない事にして、この場を切り抜けよう。
「すみません。持ってくるのを忘れてしまったんです。持って来なきゃダメですか?」
あれ、ひょっとして住民票って身分証明書になるか?
不動産屋が「後日持ってきます〜」って言ってたな。
あとで取りに行こう。ここからそう遠くなかったはずだ。
「いえいえ、ではこちらの水晶に手をかざしてください」
怪しい占い師が持ってるような水晶が出てきた。
言われた通りに手をかざす。
すると青色に光り出した。オー、イッツ・ファンタジー。
「大丈夫そうですね。こちらが必要な書類になります、その時に身分証明書をお持ちください」
何が大丈夫なのかわからなかったが、大丈夫なんだろう。
書類を持ちハロワを出て、不動産屋へ急いだ。

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「いらっしゃいませ〜。あ、八代さん。身分証明書とハンコをこちらの書類にお願いします」
爽やか青年にも身分証明書の提出を求められた。
「身分証明書を持っていないんですよねー。どこで手に入りますかね」
青年に聞く。
「えー、なんで持ってないんですか?あれですか。怪しい人ですか。けど王様の友人だと言ってらっしゃったので大丈夫だとは思いますが……。取り敢えず、第8階層の役所エリアに行けば良いと思いますよ」
お礼を言い、すぐさま第8階層役所エリアにやってきた。
身分証明書と言っても色々なものがある。
パスポートを始め、運転免許証、学生書、保険証、マイナンバーカード等だ。
この国にもパスポートはある。あとはマイナンバーカードらしきモノ。
他には各ギルドカード?なんだそれ

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ギルドカード。
ギルドに所属する者が持てるカード。
冒険者ギルドや薬師ギルド、研究者ギルド、盗賊ギルド等が発行している。
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盗賊ギルドとか怖そうなんですけど。

取り敢えずマイナンバーカードを手に入れよう。
このカードは1人1人に与えられた番号が記されたカードであるが、僕に番号が与えられた覚えはない。
その番号によって銀行が使えるようになったりもする。

このカードの申請方法は簡単で、血液をある機械に一滴入れるだけで発行される。
近くの集落の人がよく身分証明書にするためにやるそうだ。
さて申請をしよう。
発行書類を受付で貰い、その場で書き込んだ。
内容は簡単。住所、氏名のみだ。
住所は無しでかこう。まだ書類上では僕の家では無いからな。
住所は空欄。氏名は漢字で八代 樹と書いた。
だってこの世界で普通に漢字が使われてるんだもん。名前はみんなカタカナだけどさ。
書き終わったので、受付にいくが、
「こちらではございません。向かって左側にある61番の看板の下にある機械でお願いします」
出た。役所名物たらい回し。
61番の機械の元へといく。
この世界はファンタジーな筈なのにここにはコンビニのATM用な機械が置いてある。
不釣り合いだな。と思いながらも機械の指示に従う。
「お書きになった書類を画面上の受付口に入れてください」
書類を入れる。
「八代 樹さん。住所不定。ですね。よろしければ画面をタップしてください」
住所不定はこれから変わるがな。画面をタップする。
すると、画面の下に穴が空いた。
「採血します。画面の下に手を入れてください」
ぜってえ痛いやつじゃん。いや、でも説明文を読む限り一滴だ。これは仕方ない。
手を機械に入れる。
電子音が鳴り、「採血が終わりました。手を出して頂いて結構です。カードを発行します」
え?終わったの?いつ打った?全然気がつかなかった。

カードを手に入れた。これが身分証明書になる。
書いてる内容は名前と番号のみで、本当になるのかが不安だが……なんとかなるだろう。

次は判子屋に行こう。
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判子屋にやってきた。
判子と言っても色々な物があるんだな。実印に銀行印、認め印、
訂正印と言うものもある。
肢の部分の素材によって値段は様々だ。彫るフォント?によっても価格が変わる。

1番デフォルトの物は、実印か?それでもオーダーメイドな為か4カハする。
日本円換算で3332円お高いな。

注文したらすぐに完成できるらしい。
こちらは『ヤシロ』とカタカナで彫ってもらう。

判子屋の主人に『今まで29年やってきているが、漢字で彫ったことなんてない』と言われてしまったからカタカナの方が標準的なんだろう。

時間ができた為、近くの服屋に入る。
今着ている制服はヨレヨレのシワシワだから着替えなくてはならないし、ここの服装のトレンドから浮いている。

パッと見た感じ男性はチュニックにゆったりしたズボンを着ている。

無難に白のチュニックに黒のズボンを選び購入し、着替える。
その他にも、下着を数着購入した。

さて、時間を結構使っただろう。判子屋に戻ろう。

判子屋に戻ると主人に「終わったぞ」と言われた。
人の手で彫っているのにすごい早いな。さすが、この筋29年の人だ。

料金を支払い、不動産屋に戻り、書類を書いた。
ついでに、机を追加購入した。

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さて、自宅に帰ってきた。今日は1日中外にいたな。
もう夜だ。
自宅の前にはでっかい箱が置いてある。
これがベッドか。こういう配送方法なのね。

自宅の中に運び入れ、組み立てを始める。
分かりにくい説明書と格闘すること数時間……

玄関に取り付けられた鐘が鳴った。
机が届いたんだろう。
ドアを開けると、机を持った、不動産屋がいた。
どうやら、書類を届けに来てくれたようだ。
これで、もう書類上でも家を手に入れた事に成った!

さて、就職の書類を書こう。


———あ、ペン買うの忘れた。

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