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颯太、初めての魔法

「あーっ! そんなに落ち込まないでください颯太さん!」

 キッパリと才能なしの烙印を押された僕は、体育座りをして地面にのの字を書いて露骨に落ち込む。
 だってね……。
 こんな上げては落とす様なことされたら、誰だって落ち込むよ……。
 折角魔法が使えると思ってたのに……自分の才能のなさが妬ましいよ……。
 
 そんな僕を背中越しに励ますホロウさんが補足して僕に説明する。

「た、確かに颯太さんには属性の適性はありませんでした。けどですね。だからと言って魔法が使えないってわけでもありません。属性の適性はあくまで、その属性系統の魔法威力や魔力消費量に関わるだけですので。属性の適性がなくてもその属性の魔法は扱えるのです」

 ピクリとその言葉を聞いて僕は背中を揺らす。
 そして勢いよく振り返り。

「ほ、本当ですか!? 僕を立ち直らせるための方便だったりすれば、次こそ僕は部屋に引き籠ってニート化しますよ!?」

「本当です! 本当ですので、その、後々私が魔王様に怒られてしまいそうな事態を持ち上げないでください!」

 ホロウさんの言葉に気力を取り戻した僕は立ち上がり。

「なんの適正もない僕も、色んな魔法が扱えるんですよね? つまり、魔力があれば誰でもどんな魔法も使えるってことになるんですよね?」

「そうです。けど、先ほども言った通り、適正のない属性の魔法を扱うと、その分制限がかかり。威力も落ち、魔力の消費量も倍以上なると、燃費が悪くなります」

 あまりピンとこず、僕は首を傾げると。

「わたくしの適性する属性は、土と闇です。そして私の魔力を100として考えます。先駆けて教えますが、魔法にも位がありまして、下級、中級、上級と、基本的にこの三つに分けられます。そして魔力消費量を仮に、下級を15、中級が30、上級が50と置きますと。私がもし、適正属性ではない炎の魔法を使用する場合、適正しない属性ですから、更に倍の消費量が加わり、下級が30、中級が60、上級が100消費してしまいます。上級一発で一気に魔力が枯渇してしまいますね」

「なんだかそれを聞いてますます不安になって来たんですが……。つまり、元々持っている適性属性以外の魔法を扱うのはあまり得策ではないって事ですよね? 僕と真奈ちゃんの魔力は共有だから、僕が無駄に魔法を扱うと、真奈ちゃんに迷惑をかけてしまうんじゃ……」

 僕が思い浮かぶ懸念を吐露すると。

「それなら安心してください。私が言える事ではありませんが。魔王様の魔力量は私達の数十倍あり、例えるなら、私の魔力量がバケツ一杯だとすれば、魔王様の魔力量は浴槽ほどあります。もし仮に颯太さんが上級魔法を扱っても、魔王様の魔力は、浴槽からスポイトで吸い取った程度にしか感じないでしょう」

 どれだけ凄いんだ真奈ちゃんって……。

「それを聞いて安心しました。つまり、僕は、適正が無くても魔力を気にせずに魔法が扱えるって事になるんですよね?」

「そうなりますね。けど、だからと言って魔王様の魔力を過信して、ムダ撃ちなどの油断は禁物です。それに、もう一つクリアしないといけない難点がありますが」

 もう一つの難点? 
 怪訝する僕を見て、パンとホロウさんは手を叩き。
 
「これは教えるよりも、一度体験してもらった方がいいと思います。味わうか味わないかで、今後の颯太さんの鍛錬に身が入るか左右しますからね」

 意味深にそう告げるとホロウさんは僕へと近づき。

「颯太さんには今から一つ魔法をお教えいたします。それもとびっきりに嬉しい、上級魔法です」

 魔法を今から教えてもらうのはいいけど、最初から上級魔法を!?

「いやいやいやホロウさん。僕、まだ魔法の初歩的な事も出来てないのに。いきなり上級魔法とか無理ですよ!」

「それなら大丈夫です。颯太さんの先ほど、一発目で魔力の発動は成功しています。まだ検討の余地はありますが、おそらく颯太さんには少なからず魔法の才能はあると思います」

 適正属性がないのに? というのは野暮だろうか。
 まあ、褒められるのは満更でもないから黙って聞こう。

「今から教える上級魔法は、上級魔法の中でも簡単な魔法で。上級魔法の入門書みたいな魔法です。今から言う詠唱を覚えてください」

 そう言ってホロウさんは口頭で初歩的なのか上級なのか分からない魔法の詠唱を教えてもらった。
 教えてくれた魔法は土魔法らしく。土を岩へと変換して隆起させる魔法らしい。

 土魔法を扱うには、まず頭の中で想像を行い、魔力で土を形作り岩にする。
 そしてその岩を削り、自分の望む形にして隆起させるのだが。

 ホロウさん曰く上級魔法の中では簡単な魔法と豪語するが、魔法初心者の僕には困難なものだ。

 意識を集中させ、魔力を引き出す様に高めて、体内で絞り込む。
 魔力を真奈ちゃんから引き出すのは、なんとも背中がむずむずするが、これが体内に魔力が流動している証なのだろうか。
 僕はホロウさんの教え通りに、魔法のイメージを浮かばせ、手を翳す。
 そして詠唱を唱え、クワッと目を見開き。

「『グランド・クリエイション』!」

 ドガァァン!

 土から地響きを鳴らして隆起した5メートル程度の巨大な岩。
 今の僕には想像通りの岩の形で隆起は出来ないから、土を岩に変換させて隆起させることだけに集中した。
 そして、僕は人生で初めての魔法の使用に成功をした。
 僕はそれを目の当たりにして、心の底から感極まり。

「ヤ……ヤッタァア! どうですかホロウさん! どうですかどうですか!? 出来ましたよ、僕、初めての魔法出来ましたよ!」

「おめでとうございます颯太さん。けど、私の見解通り、颯太さんには魔法の才能があるようです。魔法はより鮮明に魔法のイメージが出来るかにかかっております。おそらく、颯太さんにはそのイメージ力が高いのでしょう」

 よくは分からないけど。
 昔魔法を夢馳せて妄想に耽ていた賜物なのだろうか。
 ホロウさんに称賛を送られ口元を緩ます。

「有限であるけど膨大な真奈ちゃんの魔力のおかげで魔法は使いたい放題。しかも僕には、魔法の習得する才能もあって。これってもしかして漫画やゲームとかである”チート”ってやつかな!? 僕のチート生活が始まるんだ!」

 と、僕は自分が手に入れた能力に胸が高まり、拳を空へと突き出すが。
 クラっと視界が歪む。

「あ……あれ……? な……んで……」

 僕の意識とは関係なく朦朧とする中。
 ふらつく足がたたら歩き。
 体から全ての力を吸い取られたかの様に、脱力して地面へと倒れた。

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