第二話『楽しい学園生活』3/3
◆【教室】
木葉「正明」
平然とドアを開けて入ってくるのは学園長。
新人教師「……ッ!」
その場所はあろうことか教室で、タイミングは授業の真っ最中。
そんな奇行を行えば注目の的になるはずが、クラス全員に教師も含め視線を合わせないで下を向く。触らぬ神に祟りなし。
木葉「今週の金曜日、うちに来なさい」
木葉「あんたどうせ毎日暇でしょ」
正明「ぶっ飛ばすぞてめえ」
新人教師「……ッ!!!」
いつもの軽いノリに、教師が本気で首を横に振り続けるやめろやめろやめろという念が届いた。
木葉「ふふん。喜びなさい。このあたしがパーティーに招待してあげるわ」
正明「行かねえよ面倒くせえ」
木葉「は……あんた、あたしの誘い断るの?」
正明「んなことより、オレその日麻雀行くんだけど木葉も行こうぜ」
木葉「……」
ちょっと迷っている。本当にこいつ滅茶苦茶なくせに根っこは案外いいヤツだよな。
新人教師「……」
「君たち! 今はなんの時間だと思っているんだ!」
そう。ここで教師としての職務を真っ当する正しい言動を口にすればすぐに不当解雇になるだけだ。
木葉「あたしの所なら夕飯出るわよ」
正明「ッハ。もう騙されねーよ。どうせ庶民なラーメンとかそういうのだろ」
木葉「和牛もあるわよ。あんた食べたがってたじゃない」
正明「木葉ちゃん……!」
木葉「ちゃん付けやめなさいよ汚い。殺すわよ」
木葉「あんた今暇でしょ。ちょっとついてきなさい」
正明「アホか。今授業中だろ。オレは勉強に必死なんだよ」
新人教師「ふざけるなよ竹原正明! お前みたいな生徒に勉学のなんたるかを語られてたまるものか!!!」
新人教師「あ……」
正明「ほう……」
木葉「あははは、クーズ。あんた良い事言うじゃない。給料倍額にするように伝えておくわ」
新人教師「は、はは……!」
正明「語彙がねえなあ小学生」
木葉「おい。こいつ東京湾に沈めろ」
正明「ここ関西やのにわざわざ東京かいなっ!?」
木葉「じゃあここで話してあげるわ」
木葉「おい。なにしているのよ。早くあたしの席を作りなさい。立ったままにしろっていうの?」
木葉「本当に無能ね。日本人ってこんな事も言われないとわからないの?」
こいつ滅茶苦茶だよな。
木葉「この風雪木葉にこんなみすぼらしい椅子に座れって言うの!? あんた名前と住所と親の職場言いなさいよ!」
女子生徒「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
こいつマジで滅茶苦茶だな。
正明「ほら」
正明「お兄さんの膝の上に座りなよ」
木葉「はあ? なによそのセクハラ。気持ち悪ッ」
正明「ッハ。ほーら見ろ。ビビってんだろ風雪木葉」
木葉「……ッ」
ズカズカズカと歩くと、ドン! と膝の上に跨って座る。しかも対面で。
木葉「座ってあげたわよ」
正明「……」
やべえ、ちょっと煽っただけで0秒で釣れるなんて考えてなかった。っていうか顔近い。
授業中。
いきなり乱入して授業を遮った暴君。
そしてその主は今問題児の膝の上に座り対面で見つめ合う。
どう見ても不健全性的行為にしか見えない局面だが、この二人の表情は苛つきが垣間見える。
もとい、それを見てはなるまいと他の生徒は皆黒板に釘付けになる。
木葉「なによ。ビビってるのはどっちよ」
正明「息くさッ!」
正明「ぎゃああああああ!」
正明「ぐぼわぁ!?」
ノーモーションの頭突きから平手打ちの見事なコンビネーション。椅子から転げ落ちたところをサッカーボールキックの追撃も忘れない。
正明「なにすんのッ!?」
木葉「おい教師! あたしの学園の教師のくせに生徒の教育もできないの!?」
木葉「あんた達解雇。クビよ」
新人教師「ふわッ!?」
正明「てめえみたいなチビに雇われねえよ!」
斬「これは、一体……どうしたの?」
正明「おいジャン! てめえどこ行ってたこの不良生徒!!! 早くオレを助けろ!!!」
木葉「斬! 斬もこのクラスなのね。聞きなさい。今週の金曜日ね……」
斬「まず、迷惑だから場所を変えよう」
正明「授業フケって常識人ぶってんじゃねえよハゲ! 常識の髪の量増やしてから発言しろや!」
木葉「なんでこの風雪木葉が気を遣うのよ。逆よ。こいつらが全員出ていけばいいのよ」
無言で刀を抜かれる。
木葉「そうね。授業中だっていうのにこの底辺ホストがうるさいのよ。本当に迷惑よね」
正明「違うよ斬ちゃん! このチビがいきなりオレの事を頭突きしてビンタして蹴り飛ばして……」
正明「あと! 財布から5万抜いたんだよ! 早く取り返してよ!」
正明「あの! やっぱり7万!」
斬「迷惑だから屋上行くよ」