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第10話 人造人間の稼働時間

「そう言えば、カウラ。オメエの稼働時間を年齢とすると……8歳か」 

 何気なく言ったかなめの言葉にカウラの表情がハッとしたものに変わった。

「ロリね……ロリキャラね。誠ちゃんロリは描ける……ってうちの部隊でロリは厳禁ね。なんと言っても『偉大なる中佐殿』であるランちゃんが絶対そんなの許さないもの。さすがの私もランちゃんに逆らう度胸は無いわ。そっち系のゲーム開発はこれからも封印と言うことで」 

 アメリアが非常にいい顔をするので明らかにその様子を眺めていたカウラが渋い表情を浮かべた。

「でも8年で大尉に昇進なんて凄いですね。僕なんて……僕なんて……」 

 誠はとりあえず話題が良い方向に進んでいると思ってそう付け加えた。

「そうだな、どこかの誰かは三週間で少尉候補生から曹長に格下げ食らったからな。幹部候補が一気に曹候補へ転落の一途。まあ、泣き言の一つも言いたくはなるわな」 

 誠は初陣の『近藤事件』で大金星を挙げたもののその、『もんじゃ焼き製造マシン』と呼ばれる体質を嫌った上層部の意向もあって降格処分を受けていた。今でもその理不尽な嵯峨の仕打ちには不満を持っていた。

「西園寺さん勘弁してくださいよ。僕の前でそれは禁句ですよ」 

 誠は自分の降格をネタにされて後ろで窮屈そうに座ることにすでに飽きているかなめを振り返った。

「そう言う誰かも一度降格食らったことが無かったか?なあ、西園寺。ベルルカン大陸の失敗国家の大統領に怒りに任せて銃を向けて危うく射殺するところだったんだよな」 

 カウラの皮肉にかなめは黙り込むことで答えようとしているように口をへの字に結んで外の枝だけが残された木々に視線を移していた。

「あれは挑発したあの大統領が悪いんだ、アタシは甲武を代表する貴族様だと知っててアイツはアタシに喧嘩を売りやがった。銃弾の一つもくれてやるのが当然の礼儀と言う奴だ」

 かなめは甲武一の貴族の位に有るので、その庶民的な態度の割にはプライドは結構高かった。誠もそのかなめのプライドの高さに何度泣きを見たか知らないほどだった。

「西園寺さん。要人警護かなんかでその要人本人を撃っちゃったんですか?」

 誠はかなめならやりかねないと思いながらそう言った。かなめは敵と判断すればだれでも銃を向けて撃つ。それがこの数か月のかなめとの付き合いで誠が分かったことだった。

「まあな。相手は所詮は失敗国家の出来の悪い大統領だったから大事にはならなかったが、こいつはその時降格処分を受けた。だから、貴様がこの部隊に入った時は西園寺は中尉だったんだ」

 確かに『近藤事件』での部隊の大量昇格のどさくさでかなめが大尉に戻る以前はかなめの階級は中尉だった。誠もそのことを思い出しつい苦笑いを浮かべていた。

「そう言うことだったんですか……」

 カウラの説明に、誠は良く解雇にならなかったのか不思議に思っていた。

「神前。笑いやがったな。隊に着いたら射殺してやるから覚悟しとけよ」

 いつも通りかなめは怒りを表す時に発する言葉を誠に向けて放った。

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