第八章: 成功の余韻
イベントの後、クラス全体に残ったのは満足感と少しの疲労だった。翌日、朝のホームルームでは、どこか達成感に包まれた生徒たちがリラックスした様子で席に着いていた。
「昨日のイベント、思った以上に盛り上がったな。」規が隣の宇俊に話しかけた。
「そうだな。ただの遊びじゃなくて、みんなで協力する感じが良かった。」宇俊は机に肘をつきながら答えた。その目には、冷静ながらもどこか充実感が漂っていた。
一方で、教室の後ろでは、ノリトと太起が机を挟んで盛り上がっていた。
「なあ、俺たちの仕掛け、結構評判良かったよな。」ノリトが笑顔で言うと、太起は得意げに頷いた。
「まあな。けど、あのロープの仕掛けはもう少し難しくしても良かったかも。」
「それ言うなら、次はもっとスリリングなものを用意しようぜ。」ノリトが笑いながら拳を突き出し、太起もそれに応じた。
一海は、自分の席で静かにノートを開きながら、昨日のイベントの内容を振り返っていた。彼の中には、淡い達成感と同時に、一抹の疑問が浮かんでいた。
(このクラスには、まだ何か潜在的な課題がある気がする。それが何なのかは分からないけど…。)
彼の隣に座る誓は、一海の様子をちらりと見ながら、少し躊躇いながら声をかけた。
「あの…昨日の謎解き、すごかったね。一海が考えた仕掛け、本当に面白かった。」
その言葉に、一海は驚いたように顔を上げた。「…ありがとう。誓も、進行役としてすごく頑張ってたよ。」
「そ、そうかな…?」誓は頬を少し赤らめながら、視線を机に落とした。
教室の中央では、翔馬が数人の生徒たちに囲まれていた。彼らは、昨日のイベントについて次々と感想を述べていた。
「翔馬、ああいうのまたやってほしいな!」
「次はもっと大規模にしてもいいかも。」
その声に翔馬は笑顔で応えながら、内心では新たな計画を考え始めていた。
(次のイベントは、もっと全員が主体的に参加できるようなものにしたい。クラス全員で何かを作り上げる経験を重ねていけば、もっと良い雰囲気になるはずだ。)
そんな中で、一人だけ少し浮かない表情をしている生徒がいた。和綺だ。彼は窓際の席で腕を組みながら外を見ていた。
(みんな楽しそうだけど、俺には関係ない…。やっぱり、こういうイベントに本気になるのは面倒くさい。)
その様子に気づいた公博が、近寄りもせずにぽつりと呟いた。「和綺、お前、そんな態度で本当に満足なのか?」
その言葉に、和綺は眉をひそめた。「俺のことなんかほっとけよ。」
公博は特に反応を見せず、そのまま離れていった。しかし、その一言は和綺の中に小さな棘のように刺さっていた。
日々が過ぎる中で、クラスには新たな動きが生まれていく。それぞれの生徒が抱える葛藤や思いは、次第に交錯しながら、新たなストーリーを紡ぎ始めていた。