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第六章: 練習の日々と葛藤

翌日、放課後の教室はいつもより活気に満ちていた。机があちこちに動かされ、集まったメンバーがそれぞれの役割に取り掛かっている。
一海は、ノートを広げて問題の構想を練っていた。彼の前には、古びた学校をイメージした手書きの図面が広がっている。
「…廊下に古い足跡の跡を残すとか、黒板に消えかけた文字を仕込むとか…。こういうのが雰囲気出るかもな。」
その呟きを聞きつけた宇俊が近づき、腕を組みながら覗き込んだ。
「いいな、そのアイデア。特に黒板の文字は目を引きやすい。暗号っぽくして解読させるのも面白そうだ。」
「そうだな。どうせなら、ただの謎解きじゃなくて、廃校に隠された『秘密』を匂わせるような設定を強くしたい。」一海の目が少し輝きを帯びる。
「秘密か…。その『秘密』をどう作り上げるかだな。」宇俊はそう言いながらも、その問題解決の過程を楽しんでいるようだった。

一方で、体育館裏ではノリトと太起が体を使う仕掛けの準備を進めていた。ノリトは学校の備品室から大きなロープを引っ張り出し、太起は障害物として使えそうな段ボール箱を並べている。
「こんな感じでいいんじゃねえか?暗闇の中で探させるアイテムは、この箱の中に隠してさ。」ノリトが笑いながら言う。
「ただ探すだけじゃ単調だ。途中に罠みたいなのがあれば、もっとスリリングになる。」太起はそう言うと、ロープを手に取って即席のトラップを試作し始めた。
「罠って…大丈夫か?怪我させたら怒られるぞ。」ノリトが眉をひそめると、太起は悪戯っぽく笑う。
「怪我しない程度にな。ちょっと驚かせるくらいがちょうどいいんだよ。」
その光景を遠巻きに見ていた胤命が、歩み寄って冷静に言った。「それなら、驚かせるポイントをしっかり計算しておくべきだな。予想外の反応が出るとトラブルになる。」
「さすが冷静だな、胤命。お前もこっち手伝えよ。」ノリトが笑いながら誘うと、胤命は少し考えてから頷いた。
「いいだろう。ただし、計画的にやるぞ。勢いだけで進めるのは俺の性に合わない。」

教室の一角では、翔馬が誓と一緒に進行計画を練っていた。誓は少し緊張した面持ちで、翔馬の指示を聞いている。
「誓、進行役の補助っていっても、難しいことはない。俺が指示を出すから、それをみんなに伝えてくれればいいんだ。」
「…僕にできるかな…。」誓は視線を机に落としながら、不安そうに呟いた。
翔馬は優しく微笑み、肩を軽く叩いた。「できるさ。誓がいてくれるだけで、俺は安心できるから。」
その言葉に、誓は少しだけ顔を上げた。「…うん、頑張ってみる。」
その様子を見ていた太起が、隣の席から声をかける。「誓、翔馬が言うなら大丈夫だよ。俺たちもちゃんとフォローするからさ。」
誓は太起に向けて小さく笑みを返した。その笑顔には、不安ながらも前に進もうとする決意が込められていた。

そして数日後。準備は着々と進み、いよいよクラスイベントの当日が近づいていた。
翔馬は教室の中央に立ち、集まったメンバーに向けて声を上げた。「みんな、準備ありがとう。明日のイベントは、きっとクラス全員が楽しめるものになる。ここまでやってこれたのは、みんなのおかげだ。」
その言葉に、一海や宇俊、誓、ノリトたちはそれぞれ頷き、微笑みを浮かべた。
「よし、最後の仕上げに入ろう。明日が本番だ!」
翔馬の声に、教室内には一体感が生まれていた。それぞれの思いが交錯しながらも、クラス全員で一つの目標に向かって進む日々が始まろうとしていた。

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