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第二章: イベントの提案と準備

投票が終わり、教師が教卓の上で集められた紙を数え始める。教室内は静まり返り、全員の視線がその手元に集まった。
「さて、結果が出たぞ。」教師が一枚一枚、投票用紙をめくりながら名前を読み上げる。教室内の生徒たちは、時折互いに視線を交わし、不安や興味が入り混じった表情を見せていた。
「一海、三票。昂星、二票。宇俊、四票…ノリト、二票…」
名前が次々と読み上げられ、そのたびに教室内に小さなさざ波のようなざわつきが広がる。一海は、少し驚いたように目を見開きながらも、すぐに表情を引き締めた。
「四票か…」宇俊は小さく笑いながら呟いた。「俺なんかが選ばれるとは思わなかったが、意外と見込みがあるのかもな。」
「いや、まだ決まったわけじゃない。」昂星が冷静に言葉を挟んだ。その鋭い目線が一海と宇俊に一瞬向けられたが、すぐに教師の方に戻る。
「続けるぞ。」教師が最後の数枚を読み上げ始める。「誓、二票。規、三票。翔馬、四票…胤命、三票…」
「おい、翔馬も四票だぞ?」規が驚きとともに声を上げた。「これって…どうなるんだ?」
「同票の場合はどうするんですか、先生?」太起がやや興奮気味に尋ねる。その顔には、昼と夜で異なる一面を持つ彼の内面が少しだけ覗いていた。
教師は顎に手を当て、少し考え込んだ。「再投票だな。ただし、同票だった一海、宇俊、翔馬の三人だけを対象にする。」
その言葉に、教室内の空気が再び張り詰める。一海は静かに息を整え、宇俊は腕を組んで落ち着いた様子を見せた。翔馬は微笑みを浮かべながらも、内心では慎重に次の展開を予測しているようだった。
「よし、再投票に入るぞ。」教師が新しい紙を配り始める。「この三人の中から、一人だけ選べ。」
全員がペンを手に取り、再び紙に向き合う。その短い時間の中で、教室内の生徒たちは、それぞれの性格や行動を振り返りながら、誰が最もふさわしいかを考えていた。
一方で、後ろの席に座るノリトが軽く指を鳴らして小声で呟いた。「こうなったら、面白い方に賭けるべきだな。」
それを聞いた隣の和綺は、「お前の賭けはいつも失敗するんだよ」と冷たく言い放ちながらも、どこか楽しそうに微笑んでいた。
数分後、教師が再び票を集め、再度開票を始める。「さて…再投票の結果だが。」
教室内は一層の緊張感に包まれる。その瞬間、一海はふと目を閉じて深呼吸をした。彼の耳には、かすかな鼓動の音だけが響いていた。
「学級委員は…翔馬、五票。一海、三票。宇俊、二票だ。」
教室が一瞬静まり返り、それから少しずつ拍手が起こり始めた。翔馬は立ち上がり、ゆっくりと周囲を見渡した。
「ありがとう。みんなの期待に応えられるよう、頑張るよ。」翔馬の言葉はどこか大げさでありながらも、真摯な響きを持っていた。その背筋の伸びた姿に、誰もが納得したように頷いた。
だが、その場の雰囲気の中で、少しだけ浮かない顔をしている者もいた。一海は自分の席に静かに腰を下ろしながら、内心で自分の考えが正しかったのかどうかを問い直していた。宇俊は特に何も言わず、机に肘をついて遠くを見つめていた。
教師が話を締めくくる。「では、翔馬、これからよろしく頼むぞ。」
翔馬が笑顔で頷く中、教室内の生徒たちの間には、どこか不思議な一体感と、それぞれの内面に芽生えた小さな感情が漂っていた。

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