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第4話「金髪碧眼美少女」

「ど、どこだここは……?」

タカシは森のある場所で立ち止まって辺りをキョロキョロと見回していた。実はこの男かれこれ2時間近く森の中をさ迷っていたのだ。

「やべぇぞ……俺この世界に来てからずっと何も食べてない……なので腹が猛烈ペッコリン……意識朦朧オッパッピー……」

ドサッ

タカシは空腹のあまり遂に地面にうつ伏せに倒れてしまった。

「せっかく……異世界に来たのに……何も成し遂げないまま……昇天か……無念…………ん……?スンスン……」

タカシは前方から甘い香りを感じた。そしてうつ伏せの状態からゆっくりと顔を上げて香りのした方向を見てみた。するとそこにはバナナが大量に生えた木があったのだ。

「ッッッ!!!!バナナ!!!!」

タカシはバッと起き上がりバナナの木に向かって迅速旋風ダッシュ。そして木からバナナをブリンッと1房もぎ取った。

「むぅ!?」

バナナを間近で見たタカシはアンニュイな顔を浮かべた。なんとよく見るとバナナは現世では見た事もないギザギザの形をしていたのだ。

「こ、これ……食えるのかな?」

タカシがバナナを凝視していると女神から授かったスキル【鑑定】が発動し、バナナの近くに文字が表示された。

~サンダーバナナ~

・特殊調理食材。そのまま食べると感電する。危険。

「サンダーバナナ……食べると感電だって……!?ええい!!今は猛烈に空腹なんだ!!そんな事気にしてる場合じゃねぇ!!南無三!!」

タカシはサンダーバナナを1本パクッと頬張った。

ビリビリビリビリ!!!!!

「ぎゃばばばばばば!!!!!」

タカシは感電した。

「ブハァ~( ´Д`)!!!ビリっときたぁ!!!でもうまい!!!癖になる味だぁぁぁ!!!ガツガツムシャクシャ!!!ゴクンゴクン!!!」

タカシは1房をあっという間に完食した。そしてその後は木に生えていた他のサンダーバナナも全て食べ尽くした。

「ゲップ……さてと……腹も満たされた事だし……先へと進もうとしますかね……」

チュドオオオオン!!

「!?な、何だ!?」

突然近くから爆発音。気になったタカシは音の聞こえた方へと走っていった。

「!!」

タカシが茂みを抜けて出た先には大きな広場があった。そしてそこの真ん中あたりで冒険者風の格好をして右手に剣を持った金髪ショートヘアの碧眼美少女と体長15mはありそうな巨大な二足立ちのワニの様なモンスターが戦っていた。ちなみにワニは異様にムキムキであった。

(な、何だ!?あのデカイムキムキワニは!?)

タカシがそう思った矢先、金髪少女が右手をワニに向けて「サンダー!!」と唱えた。すると少女の右手からバチバチと雷が出た。

(す、すげぇ!!何だあれは!?魔法か!?)

驚いたタカシ。そして雷はワニの方へと向かっていく。

バチッバチッバチッ

雷はワニに直撃。

「ファ~……」

ワニにはあまり効いていない様子だった。

「くっ……!!弱点属性だっていうのにダメージが通らないなんて私の魔力不足か!!ならば斬る!!はあああああ!!」

少女は剣を構えてワニに突っ込んだ。

「キャオラァッッ!!」

ワニは掛け声と共に少女に飛び蹴りを放った。

ドギャ!!!

「きゃああああああ!!!」

蹴りは少女のボディに直撃し、少女は50m程吹きとび、大木に衝突した。

「がふっ……!!げほっ!!げほっ!!」

少女は吐血していた。非常に苦しそうだった。

(こ、これはヤバいんじゃなかろうか!?)

少女を見ていたタカシは心配になった。そしてその直後にワニは少女に向かってダッシュしていき、ストンピングでトドメを刺そうとした。

「あ、危ない!!」

タカシは咄嗟にダッシュし、ワニにタックルを浴びせた。

「おふ!?」

ワニはタカシのタックルにより100m程吹き飛んだ。その後タカシは少女に駆け寄った。

「き、君!!大丈夫かい!?」

タカシは非常に心配そうな顔をしながら少女に呼び掛けた。

「あ、あなたは……!?」

「俺は……」

タカシが言いかけた直後に横から「ボオオオオオオ!!!」という雄叫びが聞こえた。気になったタカシは雄叫びが聞こえた方に顔を向けて見た。するとそこには先程タカシにタックルされて吹き飛ばされたワニが鼻息を荒げながらタカシの方を鋭い目付きで睨んでいた。

「ンガァァ!!!モガァァ!!!ブリッチョ!!!ブリッチョ!!!ムカチャッパ!!!ポキン!!!」

ワニは突然叫びだした。タカシはワニが何を言っているのか全く理解できなかったがとりあえず怒っているというのは直感的に理解できた。

「ブルボン!!!」

ワニは掛け声と共にタカシと少女のいる方向へと猛スピードオネエ走りをしてきた。すると少女はフラフラと起き上がり、タカシの目の前へと立つ。

「に、逃げて……!!ここは私が食い止める……!!」

「傷だらけの少女を見捨てられる訳ないでしょうが!!」

「言ってる場合!?アイツは討伐ランクAの"スーパームキムキワニ"よ!?パンツ一丁の男に何ができるっていうの!?いいからとっとと逃げなさい!!」

「大丈夫!俺は強い!多分……」

「はぁ!?何を言ってるの!?」

「これを見てほしいんだ」

タカシは少女に向けて自身のステータス画面を表示した。

タカシ/Lv70

職業:無職

HP:6500
MP:4000
攻撃力:2500
防御力:3000
魔力:1500
素早さ:1000
知力:5000
器用さ:5000
運:3000

「な、なにこのステータス……!?ありえない……!!無職で魔力1500って……!!」

「ありえないって……弱すぎるって意味?」

「強すぎるって意味だっつの!!」

「ひっ!!」

少女にいきなり怒鳴られたタカシは腰を抜かした。
そして2人がなんやかんやをしている内にスーパームキムキワニはどんどんと2人に近づいてくる。

「おっと!こんな事してる場合じゃないや!ちょっといってきます!」

「あ!ちょ、ちょっと!!」

タカシは起き上がり、少女の制止を無視してスーパームキムキワニに向かってダッシュしていった。

「ドッポオオオオオオ!!!」

スーパームキムキワニは向かってくるタカシに飛び蹴りを放った。

「ほっ!!」

タカシは飛び蹴りをバッと横に回避した。そしてそのまま「オラァ!!!」という掛け声と共にスーパームキムキワニにバギャッと蹴りをお見舞いした。

「ウボァーーー!!!」

蹴りを浴びたスーパームキムキワニは悲鳴をあげながら逆さとなった状態で空高く上昇した。そしてタカシも「ほっ!!」とジャンプをしてスーパームキムキワニの近くへと上昇した。

「ほっ!!」

ガチーンッ

タカシは頭上で逆さに持ち上げたスーパームキムキワニの両腿を手で掴み、スーパームキムキワニの首を自分の肩口で支えるというキン◯バスターの様な態勢になった。

「とりゃあああ!!へのつっぱりはいらんですよ!!48の殺人技の1つ!!タカシバスター!!」

タカシはキン◯バスターの様な態勢のまま地上に向かって高速で落下していく。

ヒュ~

ズガァァァァンッ!!!

タカシはスーパームキムキワニに組み付いたまま尻餅状態で地面に着地した。

「ごばぁ!!!悪魔将軍様~!!!」

タカシバスターを喰らったスーパームキムキワニは首と背骨が骨折&股が裂けて絶命した。

「命は投げ捨てるもの」

タカシは絶命したスーパームキムキワニに向けて決め台詞を言い放った。するとその直後にタカシの目の前に"経験値を500000獲得しました"という文字が表示され、タカシの体の周りからブワーッとスーパーサ◯ヤ人の様な黄色いオーラが発せられた。

「ぬおおおおお……!!この感じ……!!また強くなった気がする……!!」

タカシはステータスをオープンしてみた。

タカシ/Lv110

職業:無職

HP:10500
MP:8000
攻撃力:7000
防御力:8000
魔力:5000
素早さ:6000
知力:12000
器用さ:
運:9000

「んほ~、滅茶苦茶上がってる~」

「う、嘘……!?信じられない……!!Aランクの"スーパームキムキワニ"を素手で倒しちゃうなんて……!!」

ステータスが上昇し、悦に浸っていたタカシを呆然とした表情で見ていた金髪少女。そしてその後すぐにタカシの元へと走り寄っていった。

「ねぇ!」

「ん?」

少女に声を掛けられたタカシは後ろに振り返った。

「ありがとう、あなたは命の恩人よ」

「命の恩人?いやいや言い過ぎだよ」

「ううん、あなたが来てくれなかったら私今頃昇天してた、あ、私シェリー、よろしくね」

少女はタカシに右手を差し出した。

「俺はタカシ、よろしく」

タカシも手を差し出し、2人は握手を交わした。そしてここでタカシはシェリーに尋ねる。

「ねぇシェリー、シェリーはどうしてあのワニと戦ってたの?」

「ギルドの依頼」 

「ギルド……って何?」

「ええ?ギルド知らないの?」

「うん、俺別の世界から来たからこの世界の事は何も分からないんだ……」

「それってつまり……転生ってやつ?」

「うん」

「そっか……なるほどね……よし分かった!助けてくれたお礼に私が色々この世界の事教えてあげるよ!」

「本当に!?ありがとう!助かるよ!」

「ええ、その前にちょっと待って」

少女はタカシにそう言うと近くで死んでいたスーパームキムキワニの元へと歩いていき、スーパームキムキワニの首を剣で切断。そしてそれを手に取り再びタカシの近くへと戻ってきた。

「な、何に使うのそれ?」

「依頼達成の証明に使うの」

「ほえ~……」

「さ!出発しよ!」

「はい」

その後タカシはシェリーの案内の元近くの街へと向かった。

しおり