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302章 ミサキの人気

 超一流歌手が登場すると、20くらいの女性は目を見開いていた。

「エマエマさんですか?」

 エマエマは淡々とした声で答える。

「はい、そうですけど・・・・・・」
 20くらいの女性は、瞳をキラキラとさせていた。

「本物を生で見られて、とっても感激しています。大ファンなので、次のCDを楽しみにしています」

「ありがとうございます。特別な曲を販売予定なので、楽しみにしてくださいね」

 一人一人のお客様を大切にする。焼きそば店と通じるところがあるので、とっても参考になった。

 エマエマはサインを書くそぶりはなかった。一般の人に対しては、サインを無料でプレゼントしない方針のようだ。

 エマエマに声をかけた女性は、自分の席に戻っていく。超一流と話せたことに対して、大いに満足しているのが伝わってきた。

 他の客は反応を示さなかった。こちらについては、興味を持っていないように感じられた。全員が食いつくと思っていたので、予想外の行動だった。

 ミサキのすぐ近くに、3人組の女性が近づいてきた。3人は18~22歳くらいだと思われる。

「ミサキちゃん、今日はお仕事なの?」

「いいえ。今日は店員ではなく、客としてやってきました。焼きそばなどを注文するつもりです」

 焼きそばを注文すると知って、観客は大いに盛り上がることとなった。

「ミサキちゃんの大食いを見られるぞ」

 ミサキは食べたばかりで、大食いは厳しい状況。他の人の期待に沿えるような、食べ方は厳しいと思われる。

「すぐの大食いはちょっと厳しいかな・・・・・・」

 3人組の女性の、残念そうな声が店内に流れた。

「大食いはできないのか・・・・・・」

「ミサキちゃんのたくさん食べるところを見たかったよ」

「うん。いっぱい、いっぱい食べてほしい」

 女性たちの言葉を聞いていると、大食いに対する羨望を感じた。彼女たちは体重を維持するために、取捨選択をしている。

「ミサキちゃんといられるだけで、とっても幸せだよ」

「そうかもしれないね」

「ハッピーサプライズに、おおいにときめている」

 3人組の女性は、エマエマに話しかけなかった。ミサキは声をかけてきた女性に質問する。

「エマエマさんは気にならないんですか?」

「とっても気になるけど、声をかけていいのかわからないよ」

「あまりはしゃぎすぎると、いろいろな人に迷惑をかけることになる」

「シノブちゃんは厳しいところもあって、羽目を外しすぎると立ち入り禁止処分を下す。ミサキ
ちゃんと会える権利を守るために、自制しているところもある」

 シノブは安全にために万全を尽くす。お客様を大切にする気持ちを、誰よりも強く持っている。

「エマエマさんと話すよりも、ミサキちゃんといられるほうがずっといい。身近な存在でありながら、ヒーロー的存在でもある。近隣に住んでいる者にとって、永遠の憧れだよ」

「ミサキちゃんと過ごす時間を大切にしたい」

「ミサキちゃんは、私たち、ううん、全国民のヒーローだよ」

 ミサキの知らなかった事実を、20くらいの女性から聴かされた。

「ミサキちゃんのサインを求めて、写真集を100冊くらい買った。スカばっかりだったけど、写真集はとっても大切にしているよ」

 サインを一人で100冊も購入する。サインに対する、執念をはっきりと読み取れた。

「私は30冊かな。ツキに恵まれなくて、あたりは一冊も当てられなかった」

 あたりの確率はかなり低い。強運の持ち主でなければ、ゲットにつなげられない。

「私は一冊だけにしたよ。当然ながら、当たることはなかった」

 ホノカ、ナナは一冊で当たったといっていた。たくさん購入すれば、あたりを当てられるとい
うわけではないようだ。

 エマエマは写真集に興味を示す。

「ミサキさんの写真集はどんな感じですか?」

 3人の女性はそれぞれの感想をいった。

「スクール水着、ビキニ姿のどちらもとってもかわいいです」

「体のバランスが超一流です。同じ女性として、憧れを持っています」

「同じ女性なのに、メロメロになるかわいさです。顔、笑顔、スタイルのどちらも超一流です」

 エマエマは写真集に興味を持ったようだ。

「私も一冊買いたいです」 

「とっても苦しいとき、つらいとき、やりきれない思いになったときに、とっても励まされます」

 シノブが姿を見せる。

「当店をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。何にいたしましょうか?」

 3人組の女性は、それぞれにメニューを注文する。

「焼きそば、ジュースをお願いします」

「私も同じで・・・・・・」

「私も・・・・・・・」

「かしこまりました。しばらくお待ちください」 

 エマエマに積極的だった女性のところに、シノブは足を運んだ。

「当店をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。注文は何にいたしましょうか?」

「オリジナル焼きそばを一つください」

「かしこまりました。しばらくお待ちください」

 ミサキ、エマエマのところに、シノブはやってきた。

「当店をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。注文は何にいたしましょうか?」

 ミサキ、エマエマの順番で注文する。

「焼きそば10人前」

「焼きそばをください」

「かしこまりました。焼きそばができるまでお待ちください」

 シノブは厨房に下がった。

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