256章 食べ物までの道のり
ミサキは目を覚ます。夜はすっかり明けて、空は明るくなっていた。
ミサキは大きな背伸びをする。こうすることによって、一日のやる気を引き出すことができる。
シノブ、マイ、ユタカ、シラセ、フユコは眠りについていた。本当に気持ちよさそうだったので、ちょっとだけ羨ましいと思えた。
ミサキのおなかはギュルルとなった。
「おなかすいた・・・・・・」
シノブにサポートを頼みたいけど、声をかけられる状態ではなかった。マイ、ユタカ、シラセ、フユコも同様である。
食堂に向かう途中で、エマエマから挨拶をされる。朝にもかかわらず、声のトーンは大きめだった。朝イチでテンションを挙げられるのは、とってもうらやましい。
「ミサキさん、おはようございます」
「エマエマさん、おはようございます」
「ミサキさん、元気を取り戻しましたか?」
「はい。すっかり元気です」
エマエマは頭を下げる。
「昨日は無理をいってしまい、申し訳ございませんでした」
「ノミ心臓だっただけです。次回はだいじょうぶだと思います」
バンジージャンプのときもそうだったけど、気の弱い部分がある。少しずつでいいので、克服できるといいな。
「私にとっては、一生の思い出になりました。わがままに付き合っていただいて、本当にありがとうございました」
「エマエマさんの生演奏を聴けて、一生の記念になりました。心より感謝しています」
ミサキの体は右に揺れた。エマエマは危険を察したのか、とっさに手を差し出す。
「エマエマさん、ありがとうございます」
「ミサキさん、どうかしたんですか?」
「空腹で体の力が出せません」
エマエマは右側から、ミサキの体を支えようとする。
「食堂にご一緒させていただきます」
「エマエマさん・・・・・・」
「ミサキさんをサポートしたいです」
「ありがとうございます」
ミサキの後方から、速足の足音が聞こえる。後ろを振り返ると、シノブの姿があった。髪を整えていないため、寝癖はひどかった。
「自力で歩けないなら、助けを呼んでください」
「シノブちゃん・・・・・・」
「私たちは、何のためにいると思っているんですか?」
「それは・・・・・・」
「旅行代を出してもらっているのですから、これくらいはさせてください」
「そうだね・・・・・・」
「ミサキさん、食堂に行きましょう」
「うん、いこう」
シノブは支えようとするも、うまくいかなかった。
「あれ、どうしたのでしょうか?」
エマエマは一人で支えられない女性に、救いの手を差し伸べる。
「私は右から支えます。シノブさんは左から支えてください」
シノブは深々と一礼する。
「エマエマさん、ありがとうございます」
「ミサキさんは空腹で苦しんでいます。食堂に早く運んであげましょう」
「そうですね・・・・・・」
シノブ、エマエマに支えられたことで、ミサキは食堂にたどりつくことができた。二人の女性には、頭の下がらない思いでいっぱいだった。