257章 パワフル朝食
ミサキのテーブルに、朝食が置かれた。
「おにぎり50個、ステーキ10人前、ふかひれ10人前、ツバメの巣10人前です」
人目をくれることもせず、食べることに集中する。生命活動の維持のためには、恥だと思ってはいけない。
おにぎり30個を食べたところで、エマエマは驚嘆の声を発する。
「ミサキさんは、朝からパワフルですね」
「これくらいは食べないと、生命活動を維持するのは難しいです」
これだけの食事をしても、3~5時間後には空腹になる。腹ペコ少女のおなかに、限界の二文字は存在しない。
「ミサキさんは、生きるのも大変ですね」
「そうですね」
「普段の生活はどうしているんですか?」
「仕送りで生活しています。CM収入、写真集収入などがあるので、優雅な生活を送れています」
仕送り100万ペソ+αの収入を得ている。生活するにあたって、十分すぎる金額を得ている。
「ミサキさんに、オークション用のサインをお渡しします。インターネットで出品すれば、500万ペソ以上の値が付くでしょう」
一枚のサインで500万ペソ。エマエマの人気=サインの販売価格に直結している。
ミサキはサインを書こうとする、エマエマを制止する。
「エマエマさん、けっこうです」
「ミサキさん・・・・・・」
「オークションに出すために、サインをもらうわけにはいきません」
エマエマは譲ることはなかった。
「私からの謝罪も含まれています。どうか受け取ってください」
サインをもらう、サインをもらわないで言い争っている猶予はない。ミサキはサインを受け取ることにした。
「エマエマさん、ありがとうございます」
エマエマは優しい手つきで、ミサキの髪の毛を撫でる。
「ミサキさん、本当にごめんなさい」
シノブは大きな欠伸をする。
「ミサキさん、もうちょっと眠ってきます。昨日は興奮して、睡眠をとれませんでした」
「シノブちゃん、ありがとう・・・・・・」
「どういたしまして」
シノブは寝室に戻っていく。サポートなしで歩けることを、とってもうらやましいと思えてしまった。
「ミサキさんの友達は、とっても優しい方ですね」
「はい、いつも支えてくれています」
「ミサキさんを見ていたら、友達を欲しいと思いました」
「エマエマさんは、友達はいないんですか?」
「音楽に忙しいので、友達を作る余裕はありません。唯一の友達、親友といえるのは、音楽だけです」
エマエマのところに、食事が運ばれた。
「エマエマさん、お食事です」
朝食は麦ご飯、納豆、目玉焼き、みそ汁。日本人の定番中の定番というメニューだった。