229章 迷信
6人はホテル前に到着する。
ホテルの外側は金色。本物の金を使っているかのような、圧倒的な輝きを放っている。
シノブはきらびやかな外装に対して、心をときめかせていた。大人の姿を見せてきた女性も、ホテルの豪華さにはかなわなかった。
「超高級ホテルですね。すぐにホテルの中に入りたいです」
ミサキは予約をするときに、ホテルの中に入った。元々の家の豪華さもあって、そこまですごいという印象を受けなかった。最高級の家に住み慣れていると、他人の家に感動しなくなるのかもしれない。感動する機会が減ると、人生で大きな損をすることになる。
フユコのセンサーは、ホテルの内部に向けられていた。彼女の関心はソフトクリームから、ホテルに完全に移行したようだ。気持ちを切り替えられたのだとすれば、とってもいいことだと思った。ソフトクリームを引きずっていると、ホテルの良さを楽しめなくなる。
「ホテルに早く入りたいのだ」
フユコの足の疲れはピークに達しているのか、バランスを大いに崩した。
「フユコさん、足は問題ないですか?」
フユコのアホ毛はまっすぐに伸びた。
「ちょっと痛いだけなのだ。唾をつければ簡単に治るのだ」
フユコは指を口元に近づけようとしていた。指に唾をつけたあと、患部を治療する方針のようだ。
「それはダメですよ」
「どうしてなのだ?」
「唾をつけると、たっぷりの黴菌がつきます。怪我の治療は遅れることになりますよ」
フユコは指なめをストップした。
「わかったのだ。唾は塗らないようにする」
体に唾をつけることによって、病気を治すのは古くからいわれる迷信。唾液にはたっぷりの菌が含まれているので、症状を悪化させることになりかねない。ケガなどを治療したいときは、他の方法を用いるようにしよう。
ユタカは短い言葉で、感動を表現する。
「すごい豪華」
シラセはホテルの豪華さに、度肝を抜かれていた。
「ミサキちゃん、すごいホテルに泊まるんだね」
「みんなにお世話になっているので、恩返しをしようと思っている」
いろいろな人に助けられたからこそ、元気の状態を保っていられた。恩返しをすることによって、感謝の気持ちを伝えたい。