228章 ホテルに興奮
ミサキたちは、ホテルに向かっていく。目的地までは、10分くらいのところまで来ていた。
フユコは足が吊ったらしく、動きは鈍くなっていた。
「フユコさん、足は問題ないですか?」
「焼きそば店の番長。いけるよ」
フユコはときどき、シノブのことを焼きそば店の番長と呼ぶ。シノブはやめてほしいと伝えているけど、修正する気配は一向になかった。
シノブはアホ毛センサーを確認。フユコの心を読み取るときは、言葉よりもセンサーを見たほうがよい。
「フユコさん、ホテルまでもうちょっとですよ」
ホテルまであと少しと知ったからか、アホ毛センサーはまっすぐに伸びることになった。元気を取り戻したことに対して、おおいに安心する。
ミサキはホテルを発見すると、みんなに伝えた。
「輝いているホテルが、宿泊するところだよ」
シラセはホテルのきらびやかさに、瞳をキラキラさせていた。
「すごい。あんなホテルに宿泊できるの」
「そうだよ。とってもきれいなホテルだよ」
フユコはアホ毛センサーを発動させる。
「すごすぎるのだ。早く泊まりたいのだ」
フユコは痛みを忘れたかのように、ホテルに向けて走っていこうとする。シノブはそれを察知すると、うしろから抱きかかえた。
「フユコさん、心を落ち着けましょう」
フユコのアホ毛センサーは、ホテルの方向に傾いていた。
「ホテルに入りたいのだ。きれいな部屋で過ごしたいのだ」
冷静沈着をモットーとするシラセも、ホテルに興奮していた。
「ホテルに泊まりたいという思いを抑えられない」
マイはハイテンションモードに突入する。
「友達駅でトップクラスの超高級ホテル。早くたどり着きたいよ」
ユタカに頼ろうとするも、心は完全にホテルにのめりこんでいた。
「すごすぎる。宿泊したい。早くいきたい」
ホテルの直前になってからいえばよかった。ミサキは大いに後悔したものの、完全にあとの祭りだった。