132章 限界
30分も待ち続けたことで、極限の空腹状態に陥った。
「ミサキさんの生命にかかわりますので、何かを食べられるようにしましょう」
生命は問題ないものの、つらいことに変わりはなかった。一刻も早く、何かを食べたい。
マイも体調を気遣った。
「ミサキちゃんの状態を考えたら、すぐに何かを食べるべきだよ」
ユタカも頷いた。
「ミサキちゃんの苦しいところを、指をくわえてみているわけにはいかないよ」
アオイ、ツカサは納得するそぶりを見せなかった。他人の苦しんでいる姿を見ても、焼き肉を食べたい意思は変わらないようだ。
「焼き肉を食べたいよ」
「そうだよ、焼き肉、焼き肉」
ホノカ、ナナのほうを見る。露骨に主張しないものの、焼き肉を食べたいと目で語っていた。
マイはカバンの中から、財布を取り出す。
「100ペソを渡すので、アオイさん、ツカサさん、ホノカさん、ナナさんの4人で食べてください。私、ミサキさん、マイさん、ユタカさんは別の店で食べてきます」
シノブがカウンターに向かおうとしていると、アスカはこちらにやってきた。
「お待たせしました。席にご案内させていただきます」
ミサキはエネルギーを使い果たしており、席を立つのも難しい状態だった。シノブ、マイは察知すると、肩を貸してくれた。
「ミサキさん、席に向かいましょう」
「シノブちゃん、マイちゃん、ありがとう」
ミサキは遠のく意識の中、ゆっくりと席に向かっていく。たった10メートルほどの距離なのに、10キロの長さに感じられた。