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フローラ無双かーらーのー?

 居残り授業もなくなり、別格貴族達からのアプローチも無くなってのびのびと過ごしていたフローラだが、

「フローラちゃん、まずいことになったっす」

「……まずいこと?」

 コテンと首を傾げるフローラだが、中身を知ってるとウェって言わざるを得ない。

(覚えとけ)

「で、まずいことの話っすけど、一部の伯爵家の令息達がフローラちゃんについて悪感情を持ってるらしいっす」

「……何故に?」

「別格貴族の覚えめでたき生意気男爵令嬢ってとこなんすかねー」

「なんて迷惑……っ!」

 フローラは頭を抱えるが、こういう問題が起こらない訳がない。そういうのも込みで目立つの嫌がってたのだろうけどな。

「むぅ……バモン君の事件以降、ようやく男爵家クラスが一つになりかけていたのに」

「っすねぇ。あの決闘じみた事件は、子爵家の方々の目にも留まったらしく、流石武門の出だと高評価だったっすけどねぇ。それも子爵家の方々までの話っす。上位貴族の皆様方には知られてない話っす。あ、例外的に別格貴族の方々は知ってるっすよ」

 当事者の一人だものな。

(グレイスお姉様ーって絶叫はまだ耳に残ってるわ……ベティめ)
「で、でも上位貴族の方々とは夜会でもない限り接触する機会もないのでは……?」

「そうは言っても『直々に』呼び立てられれば、断るのは難しいっすよ?」

「あ゛ー……」

「とにかく気をつけてくださいっす」


 ………
 ……
 …


「てことを言われたのよねぇ……」

 フローラは教室に着くなり、いつものメンバーの所で愚痴る。しかし皆からは反応が無い。

(反応が無い? どゆこと?)
「ねえ皆、どうしたの?」

「あ、あのね……」

「うん?」

「バミーが来てないのよ」

「は?」

「他の子に頼んで、同室の上級生の方へ確認取ってもらったのですわ。そしたら朝は一緒に出たって……」

「つまり教室に来てない……?」

 ビタンッ!

(オカマ王!?)

 フローラが音のした方を見ると、魔王inモモンガが窓にへばりついている! メイリアの視線がそちらを向く前に魔王は逃げ出した!

(……バモン君が居るのね!)

 フローラは察した!

(……今日のあんたの合いの手はいつもよりうるさく感じるわ!)

 すぃーまへん。

 フローラがモモンガを窓の外を滑空するモモンガを追いかけて飛び出すと、いつものメンバーも追いかけてきた。

「フローラ!? 何が起こってるの!?」

「わかんない!」

「フローラ、どこ、行こうとしてるの!?」

「それもわかんない!」

「考えなしですの!?」

「考えはある!」

「理由は!?」

「秘密です!」

(((((えええ……)))))

 言えないのは辛いねぇ。そんなやり取りをしながらモモンガを追いかけるフローラ。モモンガはモモンガでメイリアに見られないように立ち回るものだから見失わないようにするだけで精一杯。フローラも気を使って何を追いかけているかわからないようにしている! デキる喪女だった!

(ほめるかけなすかどっちかに絞りなさいよー!)

 友人に対し秘密ばかり抱えて何一つ打ち明けない友達甲斐のないフローラは、モモンガを追いかけていることを悟られないよう皆を騙しつつ、付かず離れずで疾走する嘘だらけの喪女だった!

(ごめんなさい! 心が折れそうなのはちょっと……)

 注文の多い喪女だなぁ。

(ちくせう……って、うん? ここは……)
「修練場!」

 フローラ達は魔王の導きで修練場までやってきたのだった。

「ハァハァハァハァ……」

「おお? 呼び出す手間が省けたなぁ、と喜ぶべきか? どう思うね? 諸君」

 刃引きの剣を手にした伯爵家の令息らしき男が周りに問いかけると、くすくす嗤う声が聞こえる。複数人居るようだ。そしてその彼の足元には……

「バモン君……っ!」

 バモンが痣だらけになって横たわっていた。

「バミー……!」

「なんてことを……!」

「寄って集って卑怯ですわよ! 貴方達!」

「寄って集って? 人聞きの悪い事言うなよ。ソレとは1対1の試合をしたんだからよ」

「じゃあ何でバモン君が倒れてるの」

「そりゃあ力尽きたってことだろうが?」

「バモン君が貴方達なんかに……」

「1対1ね。なる程? それは間違いないんでしょうね」

「フローラ!?」

「ただ……何回1対1の試合をしたの?」

 フローラの視線は周りの男子達に向けられる。彼らの何人かは顔に青あざを作っていた。

「「「 !! 」」」

「……さぁ、俺の前は何回やってたか分からんなぁ? でも分かってるのはソイツが負け、勝ったのは俺ってこった!」

「「「「………………」」」」

 フローラを除く4人はただ怒りに身を震わせる。

「これでソイツも身の程を知ったんじゃないか? 我々上級貴族の言うことには素直に従っていれば良いと! お前を呼び寄せるくらいのこともできない等とのたまう無能だったから……なぁ? ハァッハッハッハ!」

 それを皮切りに、周りからも嗤い声が響き渡る。

「……で?」

「ハッハッハ……は?」

「言いたいことはそれだけ?」

「ハッ! それだけな訳無いだろう! 元はと言えばお前が身の程も弁えず……」

「バモン君について言うことはそれだけか!」

 ビリビリビリ……

 フローラの怒声が修練場を揺らす!

「くっ……。そのゴミクズが何だと……」

「バモンクラッシャーを喰らえええ!」

 ズドムンッ!

((((何でそんな名前!?))))

「ハギュオオオッ!?」

 一気に距離を詰めたフローラさんに対応できず、伯爵家令息は崩玉攻撃を喰らった! やったね! 泡吹いて倒れたよ!

「次ぃ! そこのお前ぇ!」

「うひぃ!? くっ、くるなぁ!」

 ロックオンされたのは顔に青あざのある男子だ! またしても急激に距離を詰めるフローラさん。狙われた男子の周りから男子が遠ざかる!

「蹴られると分かっててむざむざ蹴られ……」

 必死に股間をガードする男子だったが、フローラはその襟をそれぞれ左右をむんずと掴み、

「顔面打ー破ー!」

「るびゅあっっ!?」

 全力で引き寄せると同時に膝蹴りを顔面に御見舞する! コレは痛い! 鼻が潰れたか!? 思わず周りの男子達が引き攣った! フローラが襟から手を離すと、その男子はズルリと地面に崩れる。フローラさんはその後ろに回り込むと、

「バモンクラッシャー!」

「きゅえっ!?」

 止めとばかりに追い打ち! コレには仲間もドン引きだ!!

「次ぃ!」

「うわっ……鬼女だっ!」「潰されるっ!?」「ひぃいいぃ!」

 と大混乱になった。

「落ち着け! 相手はたった一人だ! 囲みこんでゆっぎゅりゅっ!?」

 フローラさん、本能的にリーダーっぽく指示を出そうとした男の人中こと鼻と唇の間に肘鉄! そのままの勢いで髪の毛引っ掴んで、地面に

 ドゴンッ!

 叩きつけ……って、え? やり過ぎじゃね? 死んでねえ? あ! ご丁寧にバモンクラッシャーまで追加しやがった!

「次ぃ!!」

「ぎゃあああー! 逃げろー!」「鬼だー! 喰われるー!」

 今度こそ散り散りになるって逃げる男子に、狙いを定めきれなかったか、身構えながらも動かないフローラ。
 だが冷静なのは一人だけではなかったらしく、

 ガシッ!

「ははっ! 捕まえたぞこのやろう!」

 フローラは忍び寄ってきた男子に、後ろから首を絞めあげられる形となる。

「でかした!」「良くもやってくれたな!」「これで……」

「そおおおぃいいやああ!」

「は? ぁぁぁぁああああぎゅぶっ!」

 それはそれは綺麗な一本背負いだったとさ。

(やっててよかった対痴漢講座!)

 ちょ、何このフローラ無双。誰得なの? あ、フローラが思い出したかのように、背負い投げた男子の股間を踏み潰した。

「ぎゅあええぇ……!? ぇぁはあっん……」

 ……え? 最後の何? 流石のフローラもドン引きだった。

(今ので少し冷静になったわ……手当たり次第のしてやったけど、このまま行けるかしら?)

 女性陣は荒事行けそうな気がしないし、マリオも全くの未知数だしな。

(あれー? 実は結構ピンチ?)

 今更か。そしてフローラが冷静に周りを見渡した時、

 ガンッ!

「あっぐ!」

 背中に強い一撃を貰ってしまった。魔法でもまとっていたのか、フローラは全身痺れている!

「やれやれ困ったお嬢さんだ。まさかこんなにも暴れてくれるだなんてねぇ」

(何こいつ……。今の今まで居なかった! 周りの奴らを捨て駒扱いで高みの見物してたの? イケメンの癖に陰険な!)

 フローラを打倒したのは、はっとする程の美形だった。あれかな? 魔王が言ってた奴。

(そうかもね……)

「ま、飛んで火にいる夏の虫、とかなんとか言う奴だね」

「そうですわ、ねぇ? 勿論? 誰、の、ことかは、明白、ですけど、ねぇ?」

 バターン!

 大きな音を立てて修練場の扉が閉まった!

「「「「「 !! 」」」」」

(……ひぃっ!)

 でーたーなーぁ

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