56話〜紫の正体
ここはティールの街の宿屋。サアヤ達はブラットをどう救出するかを考えていた。
すると、フェリアは何かがシェイナルズの方角に近づいてくる事に気がつき窓から外をみた。
「……ま、まさか。この気配は、あのお方が……でも、いったい何の為に此方に向かわれているのでしょうか?」
「フェリア、どうしたんだ?急に外など見て。それに、ここに向かっているとは、いったい、誰が?」
フェリアは辺りを見渡し下を向き考えた後、
「それは……そうですね。他の部屋で話をした方がいいとは思いますが……申し訳ないのですが、ヴィオレッタさんはヴィオレさんの看病をお願いしたいのですが?」
「そうですわね。私は構わないのですが、大事な話ですの?」
「ここでは、話せないことなのかな?そんなに、私たちに聞かれちゃ不味い話なのかな?」
サアヤはヴィオレの発言を不思議に思い、
(やはり、ヴィオレの事が気になるな。あの傷といい、やたらと話に入って来ようとしている。これが思い過ごしであればいいが、用心に越した事はないのは確かだ)
「先程も気になったのですが。ヴィオレさんは何かを探っているのでしょうか?それに、あの時は私はまさかと思っていたのですが言いませんでした。ブラットの口をわざと塞ぎましたよね?」
「フェリアさん。いったい何の事を言ってるのかな?何で私がブラットの口をわざと塞いで気絶させなきゃいけないのかな?」
「ヴィオレさん。私は一言も気絶させるとは言ってないのですが?」
「それはどういう事だ⁉︎何でヴィオレが、幼馴染のブラットを狙う必要があるっていうんだ!」
「グレンの言う通り。何で私がブラットを狙う必要があるんですか?」
「ヴィオレ、聞きたいのだがな。その傷は自分で刺したのではないのか?」
「サ、サアヤさんまで、そんな事を言うんですか?何故、私が自分で傷を負わなければならないの?」
「それは簡単ですの。その前に、ヴィオレ。何処かで私と合ってますわよね?何処だったかしら……あ〜、そうそう……」
ヴィオレッタが何か思い出し言おうとした瞬間ヴィオレは、
「ヴィオレッタって言ったよね!貴方こそ何者なのよ!?」
「何者って、私はヴィオレッタ=アッズィロですの。貴方こそ何者ですの?」
「ア、アッズィロって……まさか……何故、こんな所にわがままお嬢様がいるの。って、いつもの恒例の家出かな」
「ヴィオレ・ルージュ。貴方私のお父様を知ってますわよね?私の家出の原因も」
「だから、言ってる事が分からないって言ってるの」
「ヴィオレッタ、お前の事も気になるのだが。何故このタイミングでブラットに接触した?」
「それは決まってますの。お父様とあの女が、ブラットの事を話していましたの」
「ブラットの事を言っていたって……いったい何を?」
サアヤが言い、ヴィオレッタが続きを話そうとしたその時、窓が割られ、そこから黒いローブの男が入ってきた。
「我々の計画は失敗だ!話を聞いてもう知っているだろうが。ブラットは城の敷地内の建物の中にいる。このままでは、あいつはいいように利用されかねないが。お前達はどうする?俺と組みあいつを救出するか。それとも……」
「何故、お前と手を組まねばならない?言っている事がおかしいだろ!」
「ふ〜ん、なるほどですの。黒いローブなど着ているので一瞬誰かと思いましたの。ハング=モルグ、何をしてますの?こんな所で」
「うっ!ヴ、ヴィオレッタ嬢。何故、貴方がここに?あー、これは不味い……」
「やはり、お父様は嫌いですの」
その会話を聞いていたが、ヴィオレはハングの合図を見逃さなかった。
ヴィオレはサアヤ達に、気づかれないように窓に近づいた。
ヴィオレが窓の側まで来た事を確認すると、ハングは持っていた煙玉を投げつけ、
「仕方ない。だが気をつけるんだな。特にあのレオルドと言う男にはな」
「皆、ごめんね。でもね、これだけは本当だよ。店長は殺してはないからね」
そして、ハングは2つ目の煙玉を投げ、ヴィオレを連れて消えた。
サアヤ達は煙をやっと払い、追おうとしたがヴィオレッタに聞くのがいいと思い追うのをやめたのだった…。