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55話〜クレイデイルの不安

 ここは魔族領土エクスダール国キリア城の中。

 クレイデイルは、デルカが行った後少しベッドで休んでいたが、ある気配に気がつき慌てて起き、着替え玉座へと行き、側近のレヴィ=エンリケを呼んだ。

 レヴィは急ぎ駆けつけ、クレイデイルの前で膝をつき、

「陛下。急に私をお呼びになられるとは、やっと、私の思いが通じたのですね」

 目を輝かせながら言った。

「レヴィ、今は戯れている時ではない。それに前にも言ったが、俺はお前に女として興味を持ってはいない。そうだ、そんな事を言っている場合ではないんだった」

「陛下。それで、どうなされたのですか?」

「ああ、そうだったな。実は先程、デルカがブラットの事で報告に来た。その後再度ブラットの元に向かわせたのだが。その直後、あのお方の気配が、ブラットのいるシェイナルズの方に向かったのを感じたのだ」

「それは……しかし、あの大賢者様は隠居され、この地の最果てで、のんびりと暮らしておられたのではなかったのですか?」

「確かに、その筈なのだが。あのお方は確かに今では隠居されてはいるが、力を失った訳ではない。まだ神々の声を聞ける筈だ。まさかとは思うが……」

「そうなると……やはり、 ブラット様の身に何かが起こっているのでしょうか?それともこれから起ころうとしていて、神々が向かわせたと考えた方がいいのでしょうか」

 クレイデイルは玉座に座っていたが、落ち着かなくなり、ウロウロしながら考え始めた。

「神々は、いったい何をしようとしている。確かにデルカの話では、見たこともない力を使っていたと言っていたが……やはり、デルカとその配下だけを行かせるのは不味かったか。レヴィ、あのお方の行動が気になる。悪いが早急に向かってくれるか。お前はテレポートが出来た筈だからな」

「はい、陛下。では、早急にシェイナルズに向かいます」

 レヴィは一礼すると指を鳴らし、その場から一瞬で消えシェイナルズに向かった。

 クレイデイルはそれを確認すると。

「ブラットの力か。前々の魔族の王と人間の前王が神々と契約をしたガルドのその力を欲しいままにしようとしていたが。やはり、それと関係しているのか?ブラットが、あのガルドの様な道を通っては欲しくはないのだがな。とは言うものの、やはり気になる。ブラットの力がな」

 そして、クレイデイルは、また玉座に座りしばらく考え込んだのだった…。

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