54話〜VIP待遇
何処かの建物の高級な部屋にブラットはいた。
ブラットは拉致された筈だった。いや現に拉致されているのだろうが、拘束されている訳でもなく、牢に入れられるでもなく何故かその部屋に閉じ込められているだけだった。
「ん?何なんだ……この待遇の良さは?確かに部屋からは出れないけど?ただ気になる事は、俺が目覚めた時に何故あのレオルドが……あー、わけが分からない!でも、やっぱここをどうにかして出ないと、不味いよな。ここに居れば凄く楽だけど」
ブラットは部屋をウロウロしていた。
すると扉が開きレオルドが入って来た。
レオルドはブラットの方に来ると話し始めた。
「ブラット……いやブラット様と呼んだ方がいいか?」
「何なんだよ!俺を殺そうとしていたんじゃないのか?それなのに、これってどう言う事なんだ?それに何故お前に様付けで呼ばれなきゃならないんだ?」
「やはり貴方は自分を理解していない。そして自分が何なのかも」
「それはどう言う事なんだ?」
「神々と貴方は契約した。そうですよね?」
「ああそうだけど。それとこれと、どう関係しているんだ?」
レオルドは深く溜息をついき、
「本当に、貴方を見ていると呆れますね。神々と契約したと言う自覚が見えない。その重要性も理解していない。何故貴方が狙われたのかも理解していないとは……」
レオルドは頭を抱えた。
「少しは理解しているつもりだけど。多分……でも、この待遇の意味が理解できない。それにさっき目覚めた時に俺の持っている力がどうとか言っていたけど?」
「あっ、そうでした。ブラット様、その力が自分でも何なのか分からないと言いましたね。それで、先程陛下と相談し許可もおりましたので。その力が何なのかを今から調べたいと思います」
ブラットは何か嫌な予感がした。
「レオルド……まさかと思うけど。あの魔法研究施設に行くのか?」
「ああ、そうでした。ブラット様は1度あそこで……ククククク」
「レオルド!あのな、笑わなくてもいいだろう。でも……本当に今度は、調べるだけなんだよな?」
「ええ、流石に。神と契約した者を、賢者の私が殺す訳にはいかないのですよ」
「賢者って神に逆らえないのか?」
「そう、そんな事をしてしまえば今持っている力も無くなってしまいますからね」
「ふ〜ん、じゃさあ。俺がここを出たいと言ったら出れるのか?」
「はぁ?ブラット様……いや、いい加減イライラして来た!! お前に様付けはやはり似合わん!行くぞ来い‼︎」
「あー、えっと……ちょっと不味かったかなぁ。分かったよ。行けばいいんだろう」
レオルドは呆れながらブラットが逃げ出さないよう数名の護衛を付け、魔法研究施設に連れて行ったのだった…。