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鳥籠(とりかご)の住人。

 無理(むり)にこちらの世界に並行世界(へいこうせかい)(つく)ったから、
 2つの世界が重なって存在(そんざい)する。
 (いびつ)(ゆが)み重なった世界 』

その言葉でふとある事を思い出した。

どこにでもある都市伝説の一説。

それは地下鉄に少女の霊が出るだとか言う、
()り来たりのものだった。

少女を見つめまさかなと嘆息(たんそく)する。

少女には何回も()れているし、
ここは霊界ではなさそうだ。

思わず苦笑(にがわら)いが()れていた。

少女はそんな僕の様子(ようす)怪訝(けげん)に思ったのか、
質問してくる。

『どうしたの?』

僕は苦笑(にがわら)いを()み殺してそれに答えた。

「いやなんでもない。
 一瞬(いっしゅん)君が幽霊じゃないかなとか」

少女はきょとんと僕を見つめ思案(しあん)を始めた。

「いや別にそんな深い意味は無いんだ」

少女はそれを真面目(まじめ)に受け取った(よう)だった。

『それ面白い視点』

少女は何かに気付いた様に呟いた。

『実はこのクロムバイザーで、
 もう1つの世界が見える』

少女は僕が手に持ったバイザーを指差す。

並行世界(へいこうせかい)
 あなたの住む世界よ』

少女は僕の持つバイザーを取って、
耳元に付いたダイヤルを回し始める。

『これで大丈夫!
 もう一度つけてみて』

僕はおずおずとバイザーを受け取ると頭に(かぶ)った。

途端(とたん)先程(さきほど)乗っていた乗客達が、
幽霊の(よう)()けて見えた。

感受性(かんじゅせい)(ゆた)かな人の中には、
 バイザー無しで見える事もあるみたい』

その言葉を聞き流しながら目は、
あの不審(ふしん)なコートの男の姿を()らえていた。

男は首を(かし)げながら、
トイレから出て来るところだった。

僕は近付いて一瞬開いたコートの内側を(のぞ)き見る。

内ポケットに黒光りする拳銃が見えた。

僕は改めて少女を見て質問していた。

「君、いやノワール。
 君は(ねら)われているの?」

少女は首を(かし)げる。

『どういう意味?』

僕は頭を整理(せいり)して説明した。

 

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